<第1回>事業とは価値転換プロセスである(前編)―POPの作り方を高めるドラッカー・マネジメントの名言    ◇「商品」「サービス」「ノウハウ」「人(スタッフ)」「地域」の5つの価値を 経済価値に転換したPOP事例を公開します。


 売上アップを図るとすると、店舗や企業は客数を増やそうとします。間違ったことではありませんが、そのためには広告による集客促進のためのコストがかかります。まずはテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアを活用する媒体費が必要です。次に映像や広告紙面などコンテンツ制作費がプラスされます。さらに補完メディアとして、チラシ、DMがあります。

 

 2018年の総広告費(電通調べ)は、今、取り上げたマスメディアと補完メディアのどれもほぼ7年連続前年対比マイナスのデータが公開されています。この現実は、ソーシャルメディアの登場が一番の要因ですが、上記に取り上げたメディアは集客促進の装置であることも共通しています。つまり、集客促進にコストをかける店舗や企業が減少している背景がデータで現れているのです。

 

 ソーシャルメディアによる集客促進がマスメディアにとって代わる時代であることを理解したうえで、総広告費データにはもう一つ重要な事実が公開されています。ソーシャルメディア同様、前年対比プラスの広告メディアがPOP広告(以下、POP)です。集客促進の装置ではないPOPですが、唯一と言われている役割があります。それは購買促進です!購買促進により増加するのは客数ではなく「客単価」です。客単価をあげることができる装置は、接客販売、陳列ディスプレイそしてPOPだけなのです(近年はソーシャルメディアを含みますが、これは広告の概念から考えるとPOPの一部に属するメディアです)

 

 つまり、公開されたデータでは、店舗や企業は集客促進による「客数」アップから、購買促進による「客単価」アップのためにコストを投入していることが理解できます。

 売上の公式は「売上=客数×客単価」です。コストを投入できた時代は客数アップに注力できました。現代は、コストパフォーマンスを考えると客単価アップにフォーカスすることが最善の策なのです。

 まずはこのことを理解したうえで、“売上アップのシナリオ”を店舗や企業は構築するべきです。

 

 ドラッカー教授(以下、ドラッカー)の言葉に『事業の目的は顧客の創造である』に衝撃を受けたことを憶えています。それまでは“売上や利益”を上げることだと思っていました。しかし、間違っていたのです。売上や利益は条件であり、目的は『顧客の創造』だったのです。さらに衝撃が走りました。顧客を増やせば良いのだと思いましたが、そのような単純なことではなかったのです。『顧客価値の創造』と、知ったのです。それでは『顧客価値』とは何なのでしょうか?

 

 さぁ、POPの出番です!

 

 まずは、店舗や企業は何で成り立っているのでしょうか?POP的には下記の5つが当てはまります

 

      (画像1)

 

 

 多くの店舗や企業は商品情報を発信するだけで、その他4点についての情報は入手しづらいほど不足しています。そのうえ、商品情報についても価格が主体で、それ以外の情報を伝える売場はわずかなのが実態です。消費者目線で考えた場合、果たして商品情報だけで満足なのでしょうか?これから商品情報を含めた5つの価値について触れていきます。

 

 

〔1.商品価値〕

 

 画像2は、価格訴求型のPOPです。スーパーなどの量販店や直売所でよく活用されています。価格訴求型のため、「298円」を一番見えるように大きく表現しています。情報のメインが価格のため、消費者の意思決定ポイントは通常より安いだろうか、他店より安いだろうかという安さだけが決め手になります。価格を求めている消費者には魅力のある情報なのかもしれませんが、価格重視の消費者も本当に低価格だけを求めているのでしょうか?良い商品であれば高い安いは関係ないのです。それなのに画像2のPOPを掲示することで店舗や企業は価格競争の市場に巻き込まれてしまう恐れがあります。画像1のとおり“サービス”“ノウハウ”“人”“地域”訴求する点はいくらでもあります。“商品”の訴求ポイントも価格以外にもあります。それが画像3の商品説明型のPOPです。

 

 

      (画像2)

 

 

 商品説明型のPOPはショウカード(show card)と呼ばれています。価格以外の“品質(産地、素材など)”“デザイン(カラー、スタイル、サイズなど)”“用途(使い方、食べ方など)”の特性で消費者を魅了することを目的としているからです。画像3は、品質の中でも耐久性や期限(賞味、消費など)の点で魅了しようとしています。

 

 ほとんどの商品は、消費者の「悩みを解決するため」「目的を達成するため」に存在しています。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、この視点はPOPに生かさなくてはなりません。例えば、電源がないところでスマホの充電が切れてしまい、近くに電源がなく困ったことはないでしょうか?代わりのバッテリーに助けられた経験者であれば、POP(画像3)のようなメッセージに魅了されるはずです。

 

 

   (画像3)

 

 

 

ドラッカー曰く『事業とは、市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセスである』

                           (創造する経営者p114)

 

図解すると下記のとおりです。

 

知識 → プロセス → 経済価値(顧客価値)

 

 POP的には、数多くある商品知識を1枚の紙に目に見えるカタチに表現するスキルを生かすというプロセスを経て、経済価値(顧客価値)に転換することであり仕組みやビジネスモデルとまでは言えませんが、有効なツールであることは事実です。

 

 画像3の例で考えると、消費者は提示された価格と「10時間も続く!」という価値が「価格≦価値」であれば経済価値(顧客価値)に転換され購入に至る確率は高まります。

 

 商品価値を起点とする顧客価値とは何かと考えると、下記のとおりです。

 

 ◎顧客は低価格を求めているわけではない。価格に見合った価値に魅力を感じるのです。価格と価値のバランスに信頼感を抱くのです。

 

 

〔2.サービス価値〕

 

 商品は目に見える対象です。しかし、サービスは目に見えないことがほとんどです。

 画像4は、お店のサービス訴求型のPOPです。スーパーなどの量販店で近頃は活用され始めています。特に高齢消費者からの支持が増えているPOPで、価格の高い安い、商品の特性の良し悪しよりもこのような消費者目線のサービス価値が店舗選択や客単価アップの決め手となります。

 

 このPOP誕生のエピソードは、ある高齢消費者のひと言でした。「カボチャやキャベツも買いたいのだけど、重たくてレジまで持って行けないの…」このことを知った店員さんはレジまで運んであげたのです。このようなことは多くのお店で行っている何の変哲もないことです。しかし、繁盛するお店はここからが違います。もっと多くの高齢消費者が同様の悩みを抱えていることに気がつきます。そこで、POPでメッセージを発信しました。案の定、多くの支持を得へ満足度が高まり、高齢消費者にやさしいお店と口コミに至っています。

 

 

   (画像4)

 

 

 知識とは異なることかもしれませんが、お客さま(の悩み)を知ることで経済価値(顧客価値)に転換したPOPです。

 

プロセスを図解すると下記のとおりです。

 

<知識>高齢消費者(お客さま)から聞き出した悩み

  ↓

<プロセス>優先順位の高い悩みのPOP掲示

  ↓

<経済価値(顧客価値)>高齢消費者の支持を獲得

 

 上記の例は、高齢消費者の場合です。その他の消費者ももちろん多くの悩みを抱えています。悩みにフォーカスすると“顕在的”と“潜在的”のパターンが存在します。“顕在的”は、いつも意識していることであり、“潜在的”は、意識していない(意識できない)悩みです。消費者に「私って、こんな悩みがあったのだ…」と気づかせてあげることで、店舗(企業)や店員さんの存在感は上昇し、商品価値以上のサービス価値を提供できます。

 

サービス価値を起点とする顧客価値とは何かと考えると、下記のとおりです。

 

◎顧客は顕在的に満足を求めています。商品への満足より、目に見えないサービスを受けたときの満足は、潜在的な満足を呼び覚まします!

 

 

<第2回>事業とは、価値転換プロセスである(後編)へ続く!

 

 

 

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沼澤拓也
「POPによる客単価アップのスペシャリスト」 ◎公的機関・商店街・大手企業のコンサルティング。大学講師やPOP楽会主宰、POP甲子園®コンテスト審査委員長も務める。最近はチームPOPジャパン®をプロデュース。年間150回を超えるセミナー活動は口コミで拡大中!海外からの依頼で講演を開催し、ファン層はアジア規模である!「実践するドラッカー事業編×POP」コラボセミナーは東京、松本、岡山、神戸、郡山、茅ケ崎で開催。「もしドラ」読書感想文コンテストでダイヤモンド社から特別賞受賞。「POPスター」の愛称で、新聞・雑誌等メディアへの執筆活動やテレビ出演(バラエティ番組、報道番組)など。 <著書>繁盛店が必ずやっているPOP最強のルール(ナツメ社)はすでに第10刷。近著は、たった1行で繁盛店に変える!つい買いたくなるPOPの極意(実業之日本社) <POPチャンネル>http://poporigin.com/

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