<バックナンバー>
学生時代の影響かもしれませんが、私たちは「正しく記憶していること」を「能力がある」ととらえてしまいがちです。しかし、大人になって必要とされる能力、つまり仕事や人生をとおして何かを為すための能力は、それでは「正しく記憶していること」ではありません。
例えば、、、
「車の乗り方」を、誰よりも記憶している人がいるとします。彼はエンジンのかけ方、アクセルやブレーキの機能、さらには車内のさまざまな設備から車両整備の方法まで、完璧に記憶をしています。
しかし、彼は車には一度も車の運転をしたことがありません。
さて、彼は車を運転する能力を持っていると言えるでしょうか?
アホみたいな例え話を書いてしまいましたが、このケースなら、誰でも「彼は知ってるだけで、車を運転する能力はない」と言うと思います。
情報を記憶しているだけでは、能力とは言えないことを、われわれは肌感覚として理解しているからです。
しかし、何故かビジネスの世界になると、記憶しているだけで、もてはやされる事があります。
さまざまなマネジメントに関する知識(情報)を記憶しているだけで、なぜか凄い人のように思われるケースが存在します。会社によっては、資格さえ取得すれば手当てのつく会社もあるでしょう。
われわれはいまだに、「憶えていること=能力が高い」という思い込みを、捨てきれていないのです。
大事なのは、記憶そのものではありません。能力の方です。情報や知識を使いこなせて、はじめて社会に貢献し、成果をあげることが出来ます。
手にした情報を、自分自身の仕事に当てはめて、実際に使ってみなければ、何の能力も身につきません。経験こそ知識なのです。成功だけではなく、失敗も含めたさまざまな経験を積み重ねて、はじめて能力は身につくのです。
できればリアルな読書会に来てくださることが望ましいですが、私の動画でも良いので、読んでいて、聴いていて、気になった「一言」を見つけてみてください。
そして、その「一言」を、明日の仕事で実践してみてください。できれば、繰り返し1か月ほど実践し続けてもらいたいと思います。
その経験の中から、はじめて「一言」の奥にある、真の意味が見えてきます。一つづつ、言葉が自分自身の能力として身についていくのを感じられると思います。
ぜひドラッカーの言葉を、実践してみてください!
さて、、、
またもや前置きが長くなりましたが、そろそろ動画に参ります。
目次
<ひとりドラッカー読書会22 『経営者の条件』第2章:汝の時間を知れ(5)>
【本文該当箇所】 57ページ:
知識労働者が成果をあげるための第一歩は、実際の時間の使い方を記録することである。
【一言コメント】
ドラッカーは時間を「資源」だと言います。しかしわれわれは、この貴重な資源を意識することなく浪費してしまいがちです。時間という資源をマネジメントするためには、まず「無意識を意識する」ことから始めなければなりません。タイムマネジメントの第一歩は、無意識に使ってしまっている時間という資源を意識上にあげること、すなわち時間を記録することなのです。
<ひとりドラッカー読書会23 『経営者の条件』第2章:汝の時間を知れ(6)>
【本文該当箇所】 58ページ:
したがって、次にくる一歩は体系的な時間の管理である。
【一言コメント】
タイムマネジメントの2つ目のステップは「時間の整理」です。時間の整理には、個人レベルで行えることと、組織だって行うレベルのことの、2方面から考える必要があります。まず、個人レベルでは「やめる」「減らす」「人に任せる」の3つの側面から考え、行動に移します。その上で、自分自身の仕事の仕方が、周りの時間の浪費になっていないかをチェックしてください。自分自身の強みが、他者の制約になっているケースも存在するのです。
<ひとりドラッカー読書会24 『経営者の条件』第2章:汝の時間を知れ(7)>
【本文該当箇所】 64ページ:
これらの時間の浪費以外に、マネジメントと組織構造の間違いに起因する時間の浪費がある。
【一言コメント】
個人レベルでの時間の整理が終わったら、次は組織構造に起因する時間浪費についてもチェックしてください。仕事がきちんと設計されていない、人員過剰、組織構造の問題、必要な情報が不足している、などの原因で、無駄な時間を過ごしてはいないでしょうか? 毎月、毎年起こるような、トラブル・キャンペーンなどは、実は仕事のマネジメントの不備かもしれません。仕事をマネジメントするためのシステム自体に不備がないか、チェックしてみましょう。
<ひとりドラッカー読書会25 『経営者の条件』第2章:汝の時間を知れ(8)>
【本文該当箇所】 68ページ:
第三に、組織構造の欠陥からくる時間の浪費がある。その兆候が、会議の過剰である。
【一言コメント】
ドラッカーは会議という手段の使い方について、目的をもってマネジメントしなければならないと、さまざまな書籍で繰り返し述べています。私たちは「仕事をするか、会議をするか」の2択の中で、日々の仕事を過ごしています。会議自体はなんら成果物を生みません。あくまで方針についての意思決定を行うだけです。実際の成果を生むのは「仕事」をする時間なのです。会議については、常にその生産性を意識しなければなりません。
<おわりに>
読書会の参加者に、ネイリストをやっている女性がいます。
彼女にストレングス・ファインダーという強み診断のツールをやってもらったところ、上位資質に「共感性」という強みを持っていることが分かりました。
読書会で「その強みを接客のときに使ってみて!」とアドバイスしたところ、、、
翌月、こんな実践の報告をくれました。
「今まで客数や売上ばかりを気にしていましたが、意識することを変えたら、客層も変わって仕事が楽しくなりました!」
彼女は、自分自身の強みの使い方という「能力」を、ひとつ身につけたのだと思います。
ネイリストとしては、もちろん技術力なども求めらますが、技術以外の部分でも、自分自身の「強み」を使って、お客さまに「貢献」できることがある事に気付いたのです。
個人事業主でもある彼女は、当然のことながら売上や客数という直接の成果にも向き合わなければなりません。しかし、自分自身がお客さまに提供している価値に気付いたことで、仕事の楽しさも変わってきたと言います。
強みとは能力であり、能力なくしては人としての成長はないとドラッカーは言います。
その能力を身につけるための機会は、実践の中にしか存在しないのです。



鹿島晋

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