<9回目> 質を決めるのは企業ではない(パート1) -POPの作り方を高めるドラッカー・マネジメントの名言    ◇商品・サービスの相違点を分析し、「顧客にとっての価値は何か」をキャッチコピーにする方法を公開します。


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 スーパーマーケットなどで大根1本100円という値札が表示されています。この値札はPOP広告(以下、POP)の範疇で、無意識にこれらを見て消費者は買物しています。

 

 以前も触れたようにメディアの一種で、POPというネーミングからもわかるように欧米からやって来ました。日本には昔から値札はありましたが、POPという大きな概念の中のほんの一部分に値札が存在すると捉えて頂きたいです。

 

 昨今のPOPの考え方というのは、価格を安くすることで販売に結びつけるのではなく、10円、100円高くても、キャッチコピーで価値を伝えることで買物につながることを重視しています。キャッチコピー作成は流通小売業界だけではなく、価値を提供するシーン、ドラッカー教授(以下、ドラッカー)の言葉をお借りすると「顧客にとっての価値は何か」を表現するシーンでは必須のスキルです。

 

 

『生産者や供給者が、製品の最も重要な特色と考えるもの、すなわち製品の質が、時として顧客にとってまったくの意味がないということである。(中略)顧客の関心は「この製品は自分のために何をしてくれるのか」だけである』(創造する経営者 p121・122)

 

 

■キャッチコピーがいかに大切か

 

 あるコロッケ屋さんは「手作りコロッケ1個100円」という値札を置いていただけでしたが、POPを変えて、販売個数がアップしました。そのコロッケのPOPが画像1です。

 

 凄いキャッチコピーに思えないかもしれませんね。「当店のコロッケは11時と16時頃が揚げたてです」というただ正直に書いただけです。今までの「手作りコロッケ1個100円」というどこにでもある値札をこのキャッチコピーのPOPに変えただけです。

 

 このキャッチコピーが出来上がった背景をお伝えします。そこにはドラッカーの言葉が関わっています。

 

「顧客に聞け」

 

 正確にはこの話は「顧客から聞いた」です(笑)一人の年配の女性客から店のスタッフへクレームがありました。

 

「コロッケに手作りや揚げたてと表示があるけど、私が買う時っていつも冷めているのよね…」

 

 これを聞いたスタッフは店主にクレーム内容を報告し、改善策をいろいろ考えました。その中の一つが揚げている時間をそのお客さまへお伝えすることでした。

 

 ここまでの話はどこにでもあるようなクレーム対応ですが、繁盛する店はクレームをチャンスと捉え、それを目に見えるカタチに表現します。その結果が画像1です。

 

 統計学には次のような格言があります。

 

 

 「1人のクレーム(質問、疑問)は10人のクレームと思え」

 

 

 これは、1人のお客さまからのクレームや質問、疑問の背景には同様のクレームや質問、疑問を抱いているお客さまが最低10人存在することなのです。10倍です!

 

 しかし、クレームを言ってくれるお客さまは勇気のある1人で、その他10人はクレームを言わずにその店から離れてしまうことを示しています。

 

 繁盛する店はクレームの背景に10倍の市場があると捉えるということです。クレームをチャンスに変えるために重要なことは、1人のお客さまだけに対応するのではなく、背景に存在する10倍の市場に向けて目に見えるカタチにキャッチコピー化することです。

 

 この惣菜店にはPOPに表示したキャッチコピーの揚げたて時間に合わせて、1日に2回来店するお客さまが増えました。キャッチコピーたった一つでお客様の行動、地域の生活者の行動を変えてしまったということです。

 

      (画像1)

 

 

 コロッケのような安価で小さい商品ですが、キャッチコピーひとつで家一軒も売れてしまうくらいの力をもっています。

 

 例えば、モデルハウスの子ども部屋にキャッチコピーを手描きで幼さを表現すると、これを見たお母さんやお父さんは、我が子が遊ぶ姿を想像しやすくなります。さらに、収納力は今とても重視するお母さんが増えていますので、その点も短い文で「収納力がぐ~んとアップ」などのキャッチコピーを貼っておくだけでイメージがしやすくなります。

 

 皆さんもモデルハウスに行かれたことがあるかと思います。従来はモデルハウスの営業マンの説明を聞きながら、子ども部屋の話、キッチンの話……と順次進めていましたが、営業マンの説明というのは耳で聞くわけです。つまり聴覚で情報をとらえます。そこに同じ内容であってもキャッチコピーを目に見えるカタチで表示しておくと、お客さまは営業マンの説明を聴覚でとらえたうえに、キャッチコピーによって視覚でもとらえますから、聴覚と視覚両方の感覚器官を刺激できるわけです。モデルハウスのような現場ではいくつの感覚器官を刺激するかによって契約に至る確率が大きく変わるので、接客応対と組み合わせることで成果につながります。

 

 「顧客にとっての価値は何か」を伝える手段(方法)、表現そして顧客の感覚器官に至る刺激までプランを持つことで顧客の連想は膨らみます。この連想が顧客のライフスタイルに必要不可欠な価値であることを伝えるのが次世代型の視点のキャッチコピーです。

 

 

■キャッチコピーの3つの視点

 

 鳥の目・虫の目・魚の目という3つの視点がキャッチコピーにも欠かせません(画像2)マスメディア全盛の時代は鳥の目視点のキャッチコピーが主体でした。空高くから見るように全体をとらえたキャッチコピーで良かったのです。

 

 しかし、メディアの勢力図が変化するとともに消費者が反応するキャッチコピーの視点としては、虫の目・魚の目が重要になり始めました。鳥の目も決して重要でないわけではありませんが、全体をあまりにも抽象的に表現してしまいがちのため、消費者一人ひとりが「生産者や供給者が、製品の最も重要な特色と考えるもの、すなわち製品の質が、時として顧客にとってまったくの意味がないということである」という他人事と感じるキャッチコピーとなってしまいます。

 

 結果、キャッチコピーの説得力が弱まってしまいます。より具体的に虫の目や魚の目が重要な時代です。

 

        (画像2)

 

 

 鳥の目はマスメディア全盛の時代に主体であった視点であり、センスの良いキャッチコピーにあこがれを抱きました。新聞、雑誌、ラジオそして特に中心であるテレビの訴求力を活用できる大企業が発信するキャッチコピーに代表されます。

 

 メリットは、テレビの視聴率や新聞など紙媒体の購読率に比例してキャッチコピーの想起率がアップすることです。例えば下記のキャッチコピーは消費者の6割以上が認知しています。

 

◇あなたと、コンビに(ファミリーマート)

◇お、ねだん以上(ニトリ)

◇お口の恋人(ロッテ)

 

 デメリットは、発信者(大企業)から受信者(消費者)に対しての一方通行的な情報の流れとなってしまいます。消費者側からの情報の流れはほぼ発生しない時代の視点です。

 

 昨今、鳥の目視点のキャッチコピーが通用しない背景は、若い世代のテレビ、新聞、ラジオ、雑誌離れが起こっているからです。CMを流したとしても、若い世代には届いていない時代だということです。

 

 若い世代になるとソーシャルメディアが情報入手の第一の手段としてマスメディアを脅かしています。

 

 そのため、キャッチコピーも視点を変えないと情報が届かない時代が来ているのです。このすう勢は避けられないため、大企業も情報発信の手段をソーシャルメディアに移行しています。

 

 ソーシャルメディアのメリットのひとつは、コストパフォーマンスです。費用がマスメディアと比較すると大きなアドバンテージがあります。

 

 例えばテレビCMの場合は、①テレビ局への媒体費②映像の制作費③CMタレントとの契約料など、莫大な費用がかかります。

 

 これに対してソーシャルメディアの場合は、①毎月契約しているプロバダイダーの利用料(プロバイダーによっては無料)②映像は簡単にスマホで制作可能なため無料です。このように費用がほとんどかかりません。

 

 消費者により身近に感じてもらえるようなキャッチコピーの視点が求められています。

 

 “全体をつかむ”ことではなく、より具体的に“細部をつかむ”“流れをつかむ”ことで消費者に「この製品は自分のために何をしてくれるのか」というリアリティを感じさせます。

 

 これからのキャッチコピーは“専門家や個人のセンス”から、細部や流れ(動き)をとらえ伝えるために必要な“方程式やルールの活用”です。

 

 前述したように、かっこいいキャッチコピーにあこがれることではなく、ソーシャルメディアを活用するために誰もがコピーライティングを必要とする時代です。

 

☆パート2へ続く。

 

 

これまでの連載

<第1回>事業とは価値転換プロセスである(前編)
<第2回>事業とは価値転換プロセスである(後編)
<3回目> 顧客はドリルではなく穴を欲している
<4回目> 顧客は常に合理的である(前編)
<5回目> 顧客は常に合理的である(後編)
<6回目> 顧客とは決定権をもつ者、拒否権をもつ者である(1)われわれの顧客は誰か
<7回目> 顧客は満足を買っている(2)顧客にとっての価値は何か(パート1)

<8回目>顧客は満足を買っている(2)顧客にとっての価値は何か(パート2)

 

 

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沼澤拓也
「POPによる客単価アップのスペシャリスト」 ◎公的機関・商店街・大手企業のコンサルティング。大学講師やPOP楽会主宰、POP甲子園®コンテスト審査委員長も務める。最近はチームPOPジャパン®をプロデュース。年間150回を超えるセミナー活動は口コミで拡大中!海外からの依頼で講演を開催し、ファン層はアジア規模である!「実践するドラッカー事業編×POP」コラボセミナーは東京、松本、岡山、神戸、郡山、茅ケ崎で開催。「もしドラ」読書感想文コンテストでダイヤモンド社から特別賞受賞。「POPスター」の愛称で、新聞・雑誌等メディアへの執筆活動やテレビ出演(バラエティ番組、報道番組)など。 <著書>繁盛店が必ずやっているPOP最強のルール(ナツメ社)はすでに第10刷。近著は、たった1行で繁盛店に変える!つい買いたくなるPOPの極意(実業之日本社) <POPチャンネル>http://poporigin.com/
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