<11回目> 質を決めるのは企業ではない(パート3) -POPの作り方を高めるドラッカー・マネジメントの名言    ◇商品・サービスの相違点を分析し、「顧客にとっての価値は何か」をキャッチコピーにする方法を開示します。


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 ソーシャルメディアの時代が到来したことで、現代人一人ひとりがコピーライティングを身につけなくてはならないのです。特殊な能力や感性は必要ありません。重要なことは〝方程式とルール〟であり、「顧客にとっての価値は何か」を、発信するツールとしてPOP制作のスキルと、価値をどのようなキャッチコピーで表現すると成果につながるのかを、〔手順1〕から〔手順3〕まで公開しました。

 

 引き続き「実践するドラッカー事業編×POP」でDサポート清水さんとコラボセミナーを全国5箇所で開催したときの受講された皆さんのPOP制作の際に活用した8マスシート(画像1)と、表現されたキャッチコピー(画像2)を例に進めていきます。

 

 

         (画像1)

 

 

 

 

 

 

      (画像2)

 

 

 〔手順4〕

 

 上段の左マス(視点2)に「設定商品を連想できる語りかけや問いかけの表現は何か?」

 

 このマスでの語りかけや問いかけとは、文末に「?」つまりクエスチョンマークを使うことです。人はついつい語りかけや問いかけられると反応してしまいます。無視する勇気は意外と持ち合わせていないのです(笑)

 

 街頭インタビューで「少しお時間よろしいですか?」や、道を尋ねてくる人が「○○にはどのように行けばよいですか?」など文末にクエスチョンマークがあるような表現に対しては、無視することに抵抗があるのです。その答えを知っている場合は特にそうです。

 

 「少しお時間ください」より「少しお時間よろしいですか?」のほうが、答えを教えてあげようとか、知らない場合でも答えに辿り着こうと考えをめぐらせます。

 

 例えば、下記のような語りかけや問いかけの事例が参考になります。

 

☑ あなたは最近疲れている → あなたは最近疲れていませんか?

☑ そろそろ始めましょう → そろそろ始めませんか?

☑ AIを使ってください → AIを使ってみませんか?

 

 

 クエスチョンマークがない表現の場合は、強制される感覚があり、拒否反応を起こします。クエスチョンマークがある表現の場合は、選択肢があり、自分(消費者)が意思決定をした優越感に浸ることができます。さらに自分事としてメッセージを受け取ります。

 

 例えば、下記のような「?」の代表事例が参考になります。

 

 ☑ ご存じですか?

 ☑ 心当たりはありませんか?

 ☑ お客さまもいかがですか?

 

 

 上記は、「?」のその先を読み進めたくなりませんか?

 なになに、どうしたら良いの?と能動的な行動を起こします。

 

 少し現代風な表現の事例も参考になります。

 

 ☑ なぜ早起き生活にしないの?

 ☑ こんな商品って今まであった?

 ☑ 私の皮下脂肪やばくない?

 

 

 キャッチコピーはメディアやメディアを活用した広告・広報で力を発揮します。多くの消費者に注目されるわけで、原則としてはある程度の丁寧な表現が求められます。

 

 しかし、現代は表現をゆるくする。上記のような友達同士のコミュニケーションに使い感覚が受け入れられます。

 

 ここで下記のドラッカー教授(以下、ドラッカー)の言葉から〔手順4〕の連想できる語りかけや問いかけの表現を振り返ってみましょう。

 

 

『生産者や供給者が、製品の最も重要な特色と考えるもの、すなわち製品の質が、時として顧客にとってまったくの意味がないということである。(中略)顧客の関心は「この製品は自分のために何をしてくれるのか」だけである』(創造する経営者 p121・122)

 

 

 例に挙げた「あなたは最近疲れている」は企業側(供給側)が一方的に答えを提示しているようなものです。

『生産者や供給者が、製品の最も重要な特色と考えるもの、すなわち製品の質』を提示しています。

 

 ドラッカーの言葉を引用すると、一方的な提示は『時として顧客にとってまったくの意味がないということである』と一つの見方ができます。

 

 ドラッカーの名言に『重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、危険とはいえないまでも役に立たないものはない』(現代の経営<下>p226)に通じる点があるように感じます。

 

 キャッチコピーは広告・広報に欠かせないコンテンツであり、消費者がキャッチコピーをキッカケにして購入した価値によって笑顔につながることが目的です。キャッチコピーの表現の上手さより、上位概念であるわけです。

 

 ドラッカーは、キャッチコピーのコンテンツに限定した上記名言ではないにせよ、価値によって顧客が笑顔になるための名言としては共通点があるように思います。

 

 この視点でキャッチコピーを表現していく一つの素材として〔手順4〕の語りかけや問いかけは有効です。

 

 「あなたは最近疲れている」より「あなたは最近疲れていませんか?」は、ドラッカー的視点のキャッチコピーのための素材になり得ます。

 

 『顧客の関心は「この製品は自分のために何をしてくれるのか」だけであるを念頭におきながらのキャッチコピーの素材選びは大切です。

 

 まだ〔手順4〕であり、素材集めをしている段階ですが、参加企業のキャッチコピー(画像2)の語りかけや問いかけ部分(素材)を見てみましょう。

 

 1) 節水型トイレはいかがですか?

 2) 指先美人になりませんか?

 3) 血液検査しませんか?あなたの血液サラサラ?

 

 

 成果につながるキャッチコピーとは、これまでのマスメディア時代には「AIDMAの法則」が主体でした。

 

 「AIDMA」とはAttention(注目)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)という消費者が広告による態度変容の過程を表し原則化したものです。

 

 ソーシャルメディアのことを考慮する現代でも、この法則をふまえてみていく必要があります。

 

 3つのキャッチコピーに優劣をつけるわけではないことをご理解いただきながらまず、Attention(以下、注目)の段階においては、2)「指先美人」という語句の注目度が高いです。

 

 消費者は「おやっ!何だろう?」と脳内でこの言葉を発している段階が注目しているときなのです。他の2つの「節水型トイレ」「血液検査」よりも“意外性”を感じるからです。

 

 美人といえば、顔や容姿など目に留まりやすい部分の印象がありますが、“指先×美人”という言葉との掛け合わせの“意外性”が効いています。

 

 次にInterest(以下、興味)の段階においては、1)「節水型トイレ」への興味は高くなります。消費者の関心事の一つに“コストカット(経費削減)”というキーワードが存在するからです。

 

 次のDesire(以下、欲求)についてです。ここは複雑な段階で、欲求を2つに分解して考えます。“期待”と“疑問”です。「欲しい!」という期待と、「いや待てよ…疑わしい」という疑問が頭の中をめぐる段階であり、疑問を打ちのめす期待がなければ次のMemory(以下、記憶)に進めないのです。このような観点から、キャッチコピーだけの限界がこの段階に潜んでいるのです。ヘッドコピーやボディコピー、ブリッジ、リードなど聞いたことはありませんか?キャッチコピーを補足するメッセージ要素が必要になります。これらの要素については触れませんが、存在だけは押さえておいてください。この要素を省いてキャッチコピーだけで判断すると期待値は「節水型トイレ」と「指先美人」になります。

 

 期待値の高いキャッチコピーを消費者は(次の段階である)記憶します。この記憶の段階にも“意外性”が作用します。「指先美人」の意外性はここでも効いてきます。

 

 もう一つ考慮したいのは記憶のし易さです。前回の〔手順3〕で公開した「繰り返し言葉の法則」が効いている「血液サラサラ」の記憶のし易さです。

 

 今回事例として取り上げた3つのキャッチコピーそれぞれには「AIDMAの法則」にそって必要な素材によって加工されています。

 

 消費者は記憶した情報の範囲内で行動します。次のAction(以下、行動)という「AIDMAの法則」の最終段階へ登り詰めるのです。この法則の行動とは“購買行動”のことです。キャッチコピーに限定したとしても購買行動に至るまでの道のり(態度変容の過程)は険しいことがわかります。少しでも目の前に立ちふさがる障壁を取り除くためにどのような素材が必要かを理解することで目的地に辿り着く確率が高まります。

 

 前述したように、特殊な能力や感性は必要ありません。重要なことはキャッチコピーに必要な素材を収集するための〝方程式とルール〟の活用です。

 

 

〔手順5〕以降は、次回へ続く!

 

 

 

これまでの連載

<第1回>事業とは価値転換プロセスである(前編)
<第2回>事業とは価値転換プロセスである(後編)
<3回目> 顧客はドリルではなく穴を欲している
<4回目> 顧客は常に合理的である(前編)
<5回目> 顧客は常に合理的である(後編)
<6回目> 顧客とは決定権をもつ者、拒否権をもつ者である(1)われわれの顧客は誰か
<7回目> 顧客は満足を買っている(2)顧客にとっての価値は何か(パート1)

<8回目>顧客は満足を買っている(2)顧客にとっての価値は何か(パート2)

<9回目> 質を決めるのは企業ではない(パート1)

<10回目>質を決めるのは企業ではない(パート2)

 

 

 

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沼澤拓也
「POPによる客単価アップのスペシャリスト」 ◎公的機関・商店街・大手企業のコンサルティング。大学講師やPOP楽会主宰、POP甲子園®コンテスト審査委員長も務める。最近はチームPOPジャパン®をプロデュース。年間150回を超えるセミナー活動は口コミで拡大中!海外からの依頼で講演を開催し、ファン層はアジア規模である!「実践するドラッカー事業編×POP」コラボセミナーは東京、松本、岡山、神戸、郡山、茅ケ崎で開催。「もしドラ」読書感想文コンテストでダイヤモンド社から特別賞受賞。「POPスター」の愛称で、新聞・雑誌等メディアへの執筆活動やテレビ出演(バラエティ番組、報道番組)など。 <著書>繁盛店が必ずやっているPOP最強のルール(ナツメ社)はすでに第10刷。近著は、たった1行で繁盛店に変える!つい買いたくなるPOPの極意(実業之日本社) <POPチャンネル>http://poporigin.com/
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