<バックナンバー>
「ドラッカーには具体的にどうすれば良いのか書いてない!」
こう仰る方が、最近、私の読書会に参加してくださっています。
こういうストレートな方、結構好きです(笑)
その方いわく、「いいことは沢山書いてるんだけど、どこか哲学的で、結局どうしたら良いか何も書いていないのが不満」なのだそうです。
ちょうどいま載せている動画のあたり、時間管理の章はドラッカーの中では例外的で、かなり具体的な手法に触れていますが、基本的にドラッカーのマネジメント系の本に書かれている内容は、「やり方」ではなく「考え方」や「あり方」が中心となります。
これには理由があって、「やり方」が中心になってしまうと、状況が変わると使えないものになってしまうから。
ドラッカー教授は、そのことを理解した上で、あえて「やり方」ではなく「考え方」や「あり方」を中心に、マネジメントの体系化を行いました。そのお陰で、たとえ事例は古くなったとしても、本編は古くなりません。50年以上経った今でも、われわれはマネジメントの原理を、ドラッカーの本から学ぶことが出来ます。
つまり、この方の仰ることは大正解で、ドラッカーに「具体的なやり方」は、ほとんど書いていないという事です。
では、どうすればマネジメントの能力は身につくのか?
いつも講座や読書会などでは、ドラッカーは「考えるための素材」だとお伝えしています。
人が自らの持つ知識を使い、組織的に働くための「原理」が、マネジメントの正体だからです。ある意味、原液みたいなものだと捉えてもらって構わないと思います。
原液と名のつくものを、そのまま使うことが少ない様に、ドラッカーがマネジメント本に書き残した言葉も、自らの置かれた状況に応じて、濃縮された原液を還元して使うイメージです。
カルピスの原液をそのまま飲んでも美味しくないように、シーンに合わせて自分自身で考え、使いこなすことが重要です。
カルピスなら「原液1に対して、水が〇〇」のように正解が書いてありますが、マネジメントの場合は、正しい用法と用量を自分自身で、仕事における実践の中から、見つけていく必要があります。
カルピスとは違って、仕事における正解は、無数にあるからです。
無数にある正解の中から一つを選び取り、状況に応じてマネジメントの原理を使いこなせる能力。これがマネジャーに期待されるマネジメント能力なのではないでしょうか?
マネジメント能力を身につけるには、本に書かれていることを、実際に仕事の現場で実践し、試行錯誤しながら成果をあげる経験を積み重ねることが重要です。
マネジメントの本質とは、知ることにあるのではなく、行うことにあるのです。
ってな訳で、今日も前置きが長くなってしまいましたが、、、(笑)
そろそろ今日の動画に参りましょう!
目次
<ひとりドラッカー読書会26 『経営者の条件』第2章:汝の時間を知れ(9)>
【本文該当箇所】 73ページ:
成果をあげるには自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。
【一言コメント】
短い時間で出来ることは、すでに知っていることを行う時だけだとドラッカーは言います。知識労働者が取り組むべき仕事は、昨日とは違う明日を創り出すこと。新しいことに取り組むためには、細切れの時間では何もできません。成果をあげるためには、「ひとかたまり」の時間を用意して、為すべきことに集中することが必要になります。
<ひとりドラッカー読書会27 『経営者の条件』第2章:汝の時間を知れ(10)>
【本文該当箇所】75ページ:
ほとんどの人が、二次的な仕事を後回しにすることによって自由な時間をつくろうとする。
【一言コメント】
成果をあげるためには、重要な仕事に集中しなければなりません。ところが私たちは「重要だが緊急度の低い仕事」を後回しにしてしまいがちです。実は、未来の成果の源泉となる仕事のほとんどは、「重要だが緊急度の低い仕事」に分類されます。組織のミッションやビジョンを考えぬくこと、来年の取り組みについて目標を考えること、商品開発や販売のための企画なども、必ずしも今日やる必要のない、緊急度の低い仕事です。しかし、これらの仕事を後回しにし続ければ、組織は必ず成果をあげられなくなります。われわれは「重要な仕事」に「かたまりの時間」を割くべく、タイムマネジメントをしなければなりません。
<ひとりドラッカー読書会28 『経営者の条件』第2章:汝の時間を知れ(まとめ)>
【一言コメント】
「第2章:汝の時間を知れ」のまとめ動画です。ドラッカーの時間管理では、時間を「資源」ととらえます。この貴重な資源を、どこに、どれだけ、投下するかを考えることが、タイムマネジメントの基本です。時間管理においては、基本となる手順があります。①記録する、②整理する、③まとめる、の3ステップの構造を意識してください。われわれは時間を無意識に使ってしまうからこそ、まずは時間を客観的に記録する必要があります。そして個人レベル・組織レベルの2つのレベルから時間の整理を行ってください。最後に、整理によって生み出された時間を「ひとかたまり」にまとめます。重要な仕事に取り組むには、「かたまりの時間」こそが重要なのだとドラッカーは指摘します。
<おわりに>
少し前のことになりますが、このDラボのサイトを主宰する佐藤等先生に教えてもらって、学校の教育指導要領改訂に関する本を読みました。
むかしの学校教育は「正しく記憶しているか?」を中心に授業が組み立てられていましたが、これからの学校教育は「記憶したことを使いこなして、何を行えるか?」に重点が移っていくのだと言います。
これから10年もしないうちに、新しい教育を受けた子どもたちが社会に出てきます。
大人たちが古い考え方のままでは、新しい世代の彼らに、能力を発揮する機会を提供できない社会になってしまいます。
まずは大人から。
実践を通して能力を身につけるという学び方を、われわれ自身が実践したいものだと感じる、今日この頃です。



鹿島晋

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