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キャッチコピーの作り方を〔手順5〕まで進めてきました。数字は抽象的なことを具体的な情報に変える素材になることをお伝えしました。
今回も引き続き数字に焦点をあてていきます。
〔手順5〕
上段の中央マス(視点3)に「設定商品を連想できる数字は何か?」
連想できる数字を設定してみましたか?正解の数字を求めているわけではないことは前回のとおりです。数字を意識する思考と数字で伝える習慣が「顧客にとっての価値は何か」の役に立ちます。
■SNSで話題
少し余談ですが、カロリーについて面白い解釈を披露したお笑い芸人の#サンドウィッチマン(以下、サンド)の「カロリーゼロ理論」がテレビやSNS上で話題です。
1)カロリーは熱に弱いから揚げ物はカロリーゼロ
2)カステラは潰したらカロリーゼロ
3)ドーナツは真ん中が空いているからカロリーゼロ
1)の解釈はこうです。「例えばコロッケ。衣で包む具材(野菜)はもともとカロリーが低いうえに、油に入れると熱に弱いカロリーはあっという間にゼロ(笑)」となるそうです。2)の理論の解釈はこうです。「カステラは空気の割合が多いです。潰せば空気と一緒にカロリーは出ていくカロリーゼロ」となるそうです。3)の理論の解釈はこうです。「甘い物のカロリーは真ん中に集まってきます。つまり、その真ん中をくり抜いたドーナツは外側だけ残るのでカロリーはゼロ(笑)」となるそうです。
面白い解釈ですね!コピーそのままを笑いながら妙な説得力を感じてしまいます。
しかし、面白いだけで終わる話ではありません。キャッチコピーの視点でとらえると、話題になる素材「数字」が組み込まれています。
どの数字にも優劣はありませんが、POPの範疇(はんちゅう)では優劣が存在します。この場合の優劣とは“インパクトの強弱”です。
例を挙げると、「195円」より「198円」の表示にインパクトがあります。つまり、末尾1桁は「5」より「8」のインパクトが強いことは周知の事実です。このケース、欧米になるとインパクトのある数字が「9」となります。
対象相手である顧客の属性によって、それぞれの数字のインパクトが変わります。属性だけではなく、例に挙げた価格の場合の「8」や「9」のインパクトの強さが、価格以外の表記になった場合に弱くなるケースもあります。
また、数字を単独(1桁)で表示する場合と複数(2桁以上)では「8」と「9」の力関係は逆転するケースがあります。例えば、単独(1桁)のインパクトを表すと「8>9」と、数学(Math)ではあり得ないことになります(笑)キャッチコピーによる「顧客にとっての価値は何か」を表現する際にのみ通用する面白さです。これが複数(2桁以上)になるとインパクトは「800<900」となります。取り上げた例は、あくまでもバイアスがかからない純粋な数字だけのインパクトの話です。
■数字のインパクト数列
下記はキャッチコピーにインパクトを与える数字の強弱を順番に並べたものです。前述したように、複数(2桁以上)になると力関係は変化します。単独(1桁)での“インパクトの強弱”です。
0>1>3>8>5=7>9>6>2>4 ※5と7は同等
効果の測定は、広告で使われている頻度と購買点数の変化に加えて、これまでの先人の経験則(常識や事象、事実、謂れ諺)も含めた数列です。
インパクトの弱い方から触れると「4」と「2」は、TPOによって「4>2」と逆になる場合があります。例えば、負のイメージを高めたいキャッチコピーでは「4」の効果が高まります。
次いで「6」や「9」と伝える素材としての強さが増してきます。「9」は「4」と同じく負のイメージがありますが、「3」というインパクトの強い数字との関わりにより「4」より強い印象を与えます。後述します。
ここから先はこれまで触れた数字とは別次元のインパクトがあり、キャッチコピーに活用される頻度は激増します。「5」と「7」に抱く「Go!Go!」や「ラッキー7」などイメージの良さがかなり作用しています。どちらの数字にも優劣がないため「5=7」と表しています。イメージの良さ以外にインパクトの要素として大きいのが“奇数”だということです。伝えることを生業にしているビジネスパーソンは“偶数”より“奇数”のほうが伝わることを理解しています。このような大前提があり、偶数の「2」と「4」はインパクトに欠けるのです。
しかし、「8」は特別な数字です。外国では〝悪魔の数字〟とイメージするところもありますが、日本人には〝末広がり〟や〝ハッピー〟など、イメージの良さが作用することと、単純に数が大きいことを「9」ではなく八百万(やおよろず)に代表されるように「8」で表す日本文化のため、〝質〟と〝量〟ともにインパクトがあります。
※ツールとして活用しているキャッチコピーの8マスシートにも使われています(笑)
さらに別次元へ突入します。「3」についてです。住んでいる空間が3次元(3D)であることから縦・横・高さなど3つで構成されている事柄を受け入れやすい思考があります。
<「3」で構成されている事柄の代表例>
☑金・銀・同
☑高・中・低
☑7・5・3
☑5・7・5
☑三権分立
☑三審制
☑3度目の正直
☑石の上にも三年
☑三日坊主
特に、メディアや広告、デザイン、クリエイターなど伝えることを生業にしているビジネスパーソンは「3」の思考を大切にします。
ツールのレイアウトについては「3分割、3等分」して決めていきます。その他、下記のとおりです。
☑文章 … 三段論法(大前提・小前提・結論)(序論・本論・結論)、5・7・5
☑色彩 … 3原色、3属性
☑画像(写真)・動画 … 時間軸(過去・現在・未来)、被写体(大・中・小)
POPの場合は「3Bの法則」「3行、3色」「第三者の声」など基準を設定します。
3つの視点「鳥の目・虫の目・魚の目」や3つの過程「守・破・離」など、伝達することと「3」という数字は切り離せない関係であり、素材としてとても優秀なのです。
<「3」を活用した有名なキャッチコピー>
☑日本の風にはルル3錠
☑3時のおやつは文明堂
☑第三のビール
「3」のすごいところは、倍数にも及ぶところです。「6」や「9」が「2」や「4」よりインパクトがあるのはそのためです。
「6」「9」だけではなく、12、33、48など複数(2桁以上)になると、この理論はさらに生かされます。除夜の鐘の「十二支」「十五夜」「十八番」「108」など大切な事柄の数字は〝3の倍数〟で構成されています。
<「3の倍数」を活用した有名なキャッチコピー>
☑青春18キップ
☑24時間戦えますか?
☑30分以内にお届け
また余談ですが、イチローの背番号は「51」でした。〝3の倍数〟のインパクトがイチローの背番号にはあります。イチローが背番号を変えた時期があったことを憶えていますか?それはヤンキースの入団時です。出場の機会に恵まれず、あまり印象に残っていない人が多いと思います。なぜなら、背番号が「31」だったからです。〝3の倍数〟ではなかったためインパクトに欠けており、低迷していたと考えられるかもしれませんね。(笑)
インパクトのある数字に焦点をあて、「顧客にとっての価値は何か」をキャッチコピーとして表現するそのときに、今回公開した顧客が受け入れやすい“数字のインパクト数例”を活用してください。
★3分では読めませんでしたね(笑)★
次回はいよいよ「1」と「0」の“インパクトの強さ”を開示します。
これまでの連載
<第1回>事業とは価値転換プロセスである(前編)
<第2回>事業とは価値転換プロセスである(後編)
<3回目> 顧客はドリルではなく穴を欲している
<4回目> 顧客は常に合理的である(前編)
<5回目> 顧客は常に合理的である(後編)
<6回目> 顧客とは決定権をもつ者、拒否権をもつ者である(1)われわれの顧客は誰か
<7回目> 顧客は満足を買っている(2)顧客にとっての価値は何か(パート1)
<8回目>顧客は満足を買っている(2)顧客にとっての価値は何か(パート2)

沼澤拓也

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