「主体的に考えて、行動して欲しい!」
経営者なら誰でも一度は、そんな風に考えたことがあるのではないでしょうか?
読書会参加者インタビューの1回目は、岡山で『実践するマネジメント読書会🄬』に参加中の山内 祐未(やまうち ゆみ)さんにご登場いただきます。
山内さんの経験談から、「自ら考え、行動する」社員が育つ組織づくりのヒントを探ってみましょう!
◇ 営業に向いていない!? ◇
筆者:
まずは読書会に参加するまでの経緯を教えてもらってもいいですか?
山内:
ドラッカーに出会ったのは2年前の春くらいだったと思います。3・4年前から「私はいったい、何ができるんだろう?」ってずっと悩んでいて、一時はセミナージプシーのようになっていました(笑)
大手教育サービスの会社で営業の仕事をしていましたが、自分が大事にしていることと、求められることのギャップに少しづつ悩みが増えていく日々でした。
会社はちょうど事業を拡大するタイミングで、「お客さんを見つけてくるのが営業の仕事だ!」って雰囲気だったのですが、私はそれにどうも馴染めなくて…。
「それってお客さまの方を向いてるの?」
「それ、子どもたちのためになってるの?」
「お客さまのためって言いながら、競合対策の枝葉の話になってない?」
って、どんどん疑問が膨らんでいきました。
とくに支店にいた頃は「この仕事って、なんのため?」が分からないまま、とにかくしなければいけない事も多く、ますます悩みが深くなるばかりで。
本部に異動してからは、「なんのため?」が分からない仕事はだいぶ減りましたが、こんどは優秀な営業マンばかりの部署に配属されることになって、「ここで私は何を求められているんだろう?」って悩みはじめちゃって。
私なりに考えて、「ここで私に求められていることは、みんなのサポートをすることだ!」って頑張ってみたんですが、いま思えば、それは私の強みじゃなかったんですよね…(苦笑)
周りのサポートをすればするほど、自分の仕事はどんどん後回しになるというジレンマにおちいって、進捗会議のたびに自分だけが取り残されているような状態になってしまって…。
「こんなに頑張ってるのに、できない、できない、できない…」
って、いつの間にか思い詰めるようになっていました(笑)
筆者:
めちゃめちゃマジメだったんですね(笑)
山内:
産業医の先生にも、同じことを言われました。
「この会社は、まじめな人が多すぎるのよ~」って(笑)
私、ずっと「営業に向いてない!」って思い込んでいて、周りの人や上司にもそう言っていたんですが、ドラッカーを学ぶようになったいまの自分から当時を振り返ってみると、「目的が分からない」ことや、「自分の強みが活かせない」「自分が大事にしたい価値観が実現できない」ことを、全部ひとまとめにして「営業に向いてない!」って表現していたみたいです。
そういう意味で、ドラッカーを学んでよかったことのひとつは、「自分の見方が変わったことだな~」って思います。
「これは価値観のギャップだな~」とか、「これは目的が分からなくて嫌なんだ」とか、「これは仕事の設計に納得がいかないんだな~」とか、「これは自分の強みじゃない分野だから嫌なのか」とか。
あ、嫌なことばっかり挙げちゃってますけど…(笑)
昔は「なんとなく嫌!」としか表現できなくて、分けて考えることができなかったので、最後はいつも自己嫌悪になってばかりだったんですけど、ドラッカーのおかげで課題を分解できるようになってからは、自分自身の見え方がすごく変わりました。
筆者:
私も20代の頃は、同じように「なんとなく嫌!」としか表現できなかったので、よく分かります。分けて考える習慣が身につくだけでも、本当にメンタル面の負担が大きく減りますよね~。
山内:
「なんとなく嫌!」を分けることが出来なかったころは、いつも自分のことを相対評価していました。自分を見ているつもりで、本当は自分のことを見ていなかったんだと思います。周りと比較ばかりしていましたから。
分けて考えられるようになってからは、「自分にいいも悪いもないんだから、自分の強みを使おう」って思えるようになりました。
◇ 子どもたちが大人になるのが楽しみな社会をつくりたい ◇
筆者:
そんな時代を経て『実践するマネジメント読書会🄬』と出会ったわけですが、最初に参加した広島の読書会は、どんな印象でしたか?
山内:
実はそれまで、いろんなセミナーに参加してきて「企業に属している人たちが参加する場じゃないんだな~」って感じることも多かったのですが、広島の読書会は、経営者も有名な企業の方もいて、「バリバリ仕事をしている人」が多かったので、ここにいてもいいんだな~って思いました(笑)
筆者:
その頃すでに、独立・起業を考えはじめていたと思うのですが、最終的に起業を決断するにあたって、読書会って何か影響ありましたか?
山内:
一言で言うと、「やめることが、怖くなくなった」という感じかもしれません。実際に起業された方が目の前にいるというのが、一番大きかったと思います。
「あ、これでも生きていけるんだな」って(笑)
知名度のある大きな会社にいたので、正直「〇〇社の人じゃなくなること」への恐怖心みたいなものを感じていたのですが、そういうものは徐々に和らいでいきました。
それと、ドラッカーを学ぶようになって、「私がやりたいことって何だろう?」って、ものすごく考えるようになりました。
「私の強みって何?」
「大切にしたい価値観って何?」
こういうことを考えるようになったのも、読書会に参加してからです。
それまでは、誰かの期待に応えることが仕事だと思っていましたし、自分の欠けた部分をうめてしっかりやらなきゃダメなんだ…、って思い込んでいたんですが、この考え方が180°変わりました。
「私がやりたいと思ったことを、やってもいいんだ!」
って思えるようになったのは、本当に大きかったです。
実は私、就職活動をしていた頃からずっと、
「子どもたちが大人になるのが楽しみな社会をつくりたいです!」
って言ってたんですが、組織特有の同調圧力みたいなものに影響を受けて、いつの間にか「結果も出せていない自分が、そんなこと言っちゃいけない」って、自分の価値観を抑えるようになっていたんです。
とても良い会社だってことは分かっていたので、「できることが増えるうちは、この会社でがんばろう」って決めてたんですが、できるようになっても、ちっとも楽しくならないことに気づいてしまって…。
私を「社会人」にしてくれた前の会社にはとても感謝していますが、最終的に私がはじめに描いていた理想、「子どもたちが大人になるのが楽しみな社会をつくる」道に進もうと決めました。
筆者:
あの頃、裏でこんなドラマが進行していたとは、知りませんでした(笑)
山内:
あの頃、読書会に出ながらいつも「ドラッカーの言葉を受け入れてしまったら、人生が変わってしまう~」って恐怖心を感じていました。
怖いって思っているはずなのに、読み進めたくなるし、読書会には参加したくなるし、つくづく私って、ドМだな~と(笑)
<実践するマネジメント読書会@岡山・広島 参加者インタビュー 山内祐未さん(後編)へつづく>
◆ 編集後記 ◆
山内さんへのインタビュー前編、いかがでしたでしょうか?
ドラッカーは、著書『断絶の時代』の中で、
「無数の選択肢を前にした若者が答えるべき問題は、正確には、何をしたらよいかではなく、自分を使って何をしたいかである。
社会は、一人ひとりの人間に対し、自分は何か、何をしたらよいか、何を投じて何を得たいかを問うことを求める。この問いは、役所に入るか、企業に入るか、大学に残るかという俗な問題に見えながら、実は自らの実存に関わる問題である」
と記しています。
山内さんの物語からも分かるとおり、主体性とはあくまで「個」に属するものであり、個の価値観と密接に絡みます。マネジメントの立場にある者にできるのは、「個」が発揮する主体性を、生かすか、殺すか、の2択に過ぎません。
主体的に働く従業員が育たないことを悩む組織はとても多いですが、そういう企業ほど「会社にとって都合よく主体性を発揮して欲しい」という、原理に反した期待をしてしまっているのではないでしょうか?
主体性は「個」が発揮するものであり、「組織」に属するものではないということを、肝に銘じなければなりません。
山内さんへのインタビューは、後編へと続きます。
お楽しみに!

鹿島晋

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