続・絵で見るドラッカーの人生(魂よ永遠に)【2019年】
序文 故・上田惇生氏(元ドラッカー学会代表)
米ゼネラル・エレクトリック(GE)の元会長、ジャック・ウェルチ氏といえば、「1位2位戦略」で知られます。
世界で1位か2位になれない事業からは撤退するー。その方針が、ドラッカーさんの助言に基づくものであったことも、多くの方がご存知でしょう。
ただ、ドラッカーさんが、実際にウェルチ氏にかけた言葉には、一般に考えられているのと違うニュアンスがあったそうです。
「あなたの会社でやっている仕事は、ワクワクドキドキするものばかりか?」
「ワクワクドキドキしてやっている事業以外は、すべてやめたらどうだろう」
この事実を、私は晩年のドラッカーさんを密着取材した、エリザベス・イーダスハイムさんから教わりました。
経営の究極的な判断基準は、理屈や数字ではない。ワクワクドキドキしながら熱意を持ってやれるかどうかだ、ということです。マネジメントは、理屈や数字だけで割り切れるものではないし、割り切ろうとすれば、間違った方向に突き進んでしまう。そんな真意があったと、私は考えます。
ドラッカーさんは、マネジメントの原理原則を提示しました。いわば骨格です。現実の経営では、この骨格に生身の人間が肉づけし、一つの物語を紡ぎ出します。
このような有機的な存在である経営が、時として組織の中にいる人だけなく、外部から観察する人の心を激しく揺さぶることがあります。
いわば叙事詩です。
この連載(※)を執筆、監修する佐藤等さんは、日本各地で、ドラッカーさんの言葉に触発された経営者と社員たちが紡いできた叙事詩を、丹念に集めてきました。その一つひとつの美しさに、私は心打たれます。
誤解を恐れずに言うならば、世の中にはやはり「美しい会社」と「醜い会社」があると思うのです。どのような会社が美しいと感じるかは人それぞれで、多様性が認められるべきです。しかし、どれほどの規模に成長し、どれほどの利益を上げている企業であっても、読書であるあなたが「美しい」と感じない会社の話から、何が得られるでしょうか。逆に、どんなに小さな会社の物語でも、「美しい」と感じるなら大いに学べる。
ドラッカーさんは、進歩主義者と保守主義者、両方の顔を持っていましたが、どちらかといえば保守主義の色が強かった。しかし、「コンサバティブ(conservative )」という英語を、単純に「保守主義者」と訳してしまうと語弊があって、厳密に言うとドラッカーさんは「保存主義者」だったと、私は考えます。「コンサーブ(conserve)」とは「保存する」ことを意味します。
いいものを保存する。美しい物語を保存する。その蓄積の上に、次世代の幸せがある。そう信じて、私はこの連載を心から応援します。
※本書は月刊経営誌「日経トップリーダー」の2017年4月号〜2018年7月号の連載「実録・ドラッカーに学ぶ経営」などを編集したものです。上田氏の序文は連載開始時に寄稿いただきました。
(『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』序文より)
◯『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』佐藤等 著・清水祥行 編集協力
◯『虹の魔法のものがたり』吉田麻子著
五月女 圭司
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