<15回目> 質を決めるのは企業ではない(パート7) -POPの作り方を高めるドラッカー・マネジメントの名言    ◇商品・サービスの相違点を分析し、「顧客にとっての価値は何か」をキャッチコピーにする方法を公開します。


 キャッチコピーの素材として“数字”が重要であることはわかって頂けたことでしょう。これまで数字の優劣をあらわす“インパクト数列”の強弱順で触れてきました。

 

 いよいよ最後の一つとなります。それは“0ゼロ”です。

 

 キャッチコピーは大企業や有名な商品のための宣伝文句ではありません。POPやSNSという誰もが身近にメディア環境があり、活用できる時代です。コピーライターなどの専門家や才能のあるビジネスパーソンだけが必要とされるスキルではありません。

 

 もしキャッチコピーが無い状態で事業展開しているのであれば、これまで支障はなかったでしょうが、上記のような理由により活用しないリスクが増大している時代へと変化しています。

 

 まったくキャッチコピーをイメージできない場合は“0ゼロ”のパワーを活用することをおすすめします。下記のキャッチコピー文法:0ゼロ版にあてはめるだけです。

 

 

 「〇〇から◇◇を0ゼロにする!」

 

 

 “インパクト数列”からわかるように“0ゼロ”はキャッチコピーの反応を高める最強の数字です。

 

☑ アルコール0

☑ プリン体0

☑ 脂肪分0

 

  “0ゼロ”を目指すことは企業や商品の質につながることは間違いありません。“アルコール0”“プリン体0”“脂肪分0”は質を極めた状態の一つです。

 

 「質を決めるのは企業ではない」とあるように顧客(受け手)の捉え方は異なりますが、キャッチコピーの素材として活用できますし、これらはそのままでキャッチコピーになります。

 

 この“0ゼロ”は言葉に変換することもできる特殊な数字です。

 

☑ アルコール0 → ノンアルコール

☑ グルテン0 → グルテンフリー

☑ 現金払い0 → キャッシュレス

 

 “ノン”や“フリー”“レス”などは“0ゼロ”の代わりに使われているケースが多いです。この言葉は業界問わず使用されています。

 

 企業の存在価値の一つは“ノン”や“フリー”“レス”つまり“0ゼロ”に向かうことです。企業が創造する商品やサービスなどは、これまで中心であった商品やサービスを陳腐化することです。他社にシェアを奪われたり、企業自らの商品やサービスをリニューアルしたりすることもあてはまります。

 

 すべての企業はこの数字と関わっています。

 

 私見ですが“0ゼロ”はドラッカー理論と相性が良い数字です。“廃棄”はまさに“0ゼロ”に限りなく近づけることです。

 

 自社はどのような事業や商品、習慣を“廃棄”するかは“0ゼロ”と同義語だとすると一歩一歩カウントダウンが始まり、目標に前進する行動につながります。

 

 各企業のリサーチから次のような事例が誕生していますので、ほんの一部を開示します。

 

 

◎売場から北海道産以外の食材を0にする。

◎居酒屋からお通しを0にする。

◎工場から異物混入を0にする。

◎銀行からATMを0にする。

◎街から段差を0にする。

◎ビジネス環境から固定の事務所を0にする。

◎世の中から現金を0にする。

◎日本から犬猫の殺処分を0にする。

◎地下鉄ホームから不慮の事故を0にする。

◎教育現場からいじめを0にする。

◎洋上から船舶事故を0にする。

◎トレーニングジムからシャワーとプールを0にする。

◎傘から柄を0にする。「空飛ぶドローン傘」

◎車から二酸化炭素排出を0にする。

◎車からエンジンを0にする。

◎ホテル受付からスタッフを0にする。

◎家事(主婦)から掃除を0にする。

◎アイフォンからホームボタンを0にする。

◎会話から言葉の壁を0にする。

◎教員の仕事から教材づくりを0にする。

◎紙原料から水と木を0にする。

◎コンビニから店員を0にする。

◎飲料から色を0にする。

◎子どもに食べさせる野菜から化学肥料を0にする。

◎封筒から分別を0にする。

◎日本の夏から熱中症を0にする。

◎街から歩きスマホを0にする。

◎世界からプラスチック製ストローを0にする。

◎大学から就職希望者の未就職を0にする。

◎商店街からゴミを0にする。

◎業務から報告漏れを0にする。

◎通信業界から通話料を0にする。

◎机の上から書類の山を0にする。

 

 

 上記は、0部会(※)参加の企業やそれ以外の取り組みで収集した事例です。参加企業には前述したキャッチコピー文法:0ゼロ版から発想してもらいました。

 

※0部会とは?

 “0ゼロ”にしたら良くなることを一緒に考える研究会です。ブランディング手法の一つとして仮説を立て取り組んでいます。

 仮説とは「常識である○○を0ゼロにするとブランド価値が上昇する」

 2年前からスタートし、HKイノベーションプラザさんのご支援を頂きながらこれまでに4回開催しています。

前述したキャッチコピー文法:0ゼロ版にあてはめて、上記の例のようにそれぞれの参加企業に考えて頂くだけです。

 キャッチコピーを設定していない企業からは「ヒントになった」「設定し直します」「そのまま活用します」などの反応があります。

 また「自社の価値にあらためて気づいた」「マネジメントの方向づけに活かせる」など、〝言葉は道具〟というように〝0ゼロを道具〟として活用できる発見があります。

 すでに実践されている企業のプレゼンも行っています。まずは300事例が当面の目標で、現在183事例となりました。中からいくつか紹介します。

 

 

 

 

☆ケース1 『家事から掃除を0ゼロにする!』 ルンバ:アイロボット社

 

 ルンバの開発者はロボットの研究をしていました。周辺の人々から一番多く言われたことが「ロボットが掃除をしてくれる日はいつくるの?」だったそうです。ロボットにできることはいろいろありそうですが、生活者からすると掃除は無くしたい課題の上位に位置することに、市場の大きさを感じたようです。2002年の発売と同時に完売。その後のルンバ人気は周知のことですね。

 

<考察>企業が劇的な成長を遂げたり、商品やサービスがヒットする事象はキャッチコピー文法:0ゼロ版で表現できるケースが多いことを発見しました。「ロボットが掃除をしてくれる日はいつくるの?」という生活者が気付かせてくれたキッカケの表現とは異なりますが、文法にあてはめて表現すると『家事から掃除を0ゼロにする!』に変換できます。

 

<余談>しかし、ルンバは順風満帆ではなかったことを知る人は意外と少ないでしょう。実は発売と同時に完売したことで大量に生産することになりました。結果、在庫を抱え込むことになり破産しかけたのです。この状況を救ったのがテレビCMです。なんだ、そんなことか… と、思うかもしれませんがこのCM、他社のCMだったのです。某飲料メーカーの映像に得体のしれない物体(これがルンバなのです)が映っていたことをキッカケに話題となり、ルンバ人気に火がついたのでした。アイロボット社はこれまでのことを反省し、マーケティングと宣伝広告を強化していきます。〝予期せぬ成功〟が次々と生まれていきます。まずはルンバに名前をつける愛好者が出現します。これまで家電に名前をつけるなど考えられないことです(中にはいたかもしれませんが…笑)これが連鎖しまた話題となっていきます。極めつけはSNS上に掲載された掃除をしているルンバに乗る猫の動画です。その後、いろいろな動物が乗る映像がシェアされることでルンバなどお掃除ロボットの市場が拡大したのです。

 

 

 キャッチコピーの素材として最強の数字ということだけではなく、“0ゼロ”をマネジメントのツールとして活かしている企業が社会に貢献しているように感じます。ただ、その企業自身が“0ゼロ”を活かしているということに気づいているのはわずかかもしれません。

 

 

 

これまでの連載

<第1回>事業とは価値転換プロセスである(前編)
<第2回>事業とは価値転換プロセスである(後編)
<3回目> 顧客はドリルではなく穴を欲している
<4回目> 顧客は常に合理的である(前編)
<5回目> 顧客は常に合理的である(後編)
<6回目> 顧客とは決定権をもつ者、拒否権をもつ者である(1)われわれの顧客は誰か
<7回目> 顧客は満足を買っている(2)顧客にとっての価値は何か(パート1)

<8回目>顧客は満足を買っている(2)顧客にとっての価値は何か(パート2)

<9回目> 質を決めるのは企業ではない(パート1)

<10回目>質を決めるのは企業ではない(パート2)

<11回目>質を決めるのは企業ではない(パート3)

<12回目>質を決めるのは企業ではない(パート4)

<13回目>質を決めるのは企業ではない(パート5)

<14回目>質を決めるのは企業ではない(パート6)

 

 

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沼澤拓也
「POPによる客単価アップのスペシャリスト」 ◎公的機関・商店街・大手企業のコンサルティング。大学講師やPOP楽会主宰、POP甲子園®コンテスト審査委員長も務める。最近はチームPOPジャパン®をプロデュース。年間150回を超えるセミナー活動は口コミで拡大中!海外からの依頼で講演を開催し、ファン層はアジア規模である!「実践するドラッカー事業編×POP」コラボセミナーは東京、松本、岡山、神戸、郡山、茅ケ崎で開催。「もしドラ」読書感想文コンテストでダイヤモンド社から特別賞受賞。「POPスター」の愛称で、新聞・雑誌等メディアへの執筆活動やテレビ出演(バラエティ番組、報道番組)など。 <著書>繁盛店が必ずやっているPOP最強のルール(ナツメ社)はすでに第10刷。近著は、たった1行で繁盛店に変える!つい買いたくなるPOPの極意(実業之日本社) <POPチャンネル>http://poporigin.com/
沼澤拓也

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