キャッチコピーの素材で活用できる数字の中で最強なのが“0ゼロ”であることと、マネジメントのツールとして活用できることの続きです。
前回、0部会で蓄積しているケースの一つとしてお掃除ロボット「ルンバ」アイロボット社を取り上げました。下記のキャッチコピー文法:0ゼロ版にあてはめて仮説を開示しました。
文法 「〇〇から◇◇を0ゼロにする!」
↓
ルンバ 「家事から掃除を0ゼロにする!」
ここでキャッチコピーについての意味を再度確認しましょう。訳すと「注意をひくコピー文句」のことで、つまり「宣伝文句」のことです。
キャッチコピーの有無を企業に問うと、中小企業の約60%が設定しているようです。このデータの信ぴょう性はまだリサーチ中のため、雑談程度で解釈してください。ちなみに大企業300社ではほぼ100%がキャッチコピーを設定しています。無い大企業を探す方が大変なくらいです。
2年前からですが何となく中小企業のデータを収集したいと考えリサーチを開始しました。今のところ155社をリサーチした途中経過が約60%なのです。2020年は大企業もあわせて1000社の情報収集を目標にしています。
ひょっとすると、読者の皆さんにもすでにリサーチにご協力頂いた方もいるかもしれませんね。まだの方にもおいおいお願いの連絡をすると思いますのでご協力のほどよろしくお願い致します。
リサーチを進めて発見があったことは、次のようなレスポンスです。
☑ キャッチコピーって何ですか?
☑ そう言われると自社にキャッチコピーがないことに気がついた…
☑ 先代の時から何十年も変えていない。
☑ 社長に確認してみます。(社員に浸透していない)
☑ これってキャッチコピー?(と言いながら、理念や社是、経営方針を提示)
一般的にキャッチコピーというとロッテ〝お口の恋人〟ニトリ〝お、ねだん以上〟など企業イメージや、〝そうだ、京都行こう〟〝一目で義理とわかるチョコ〟など商品イメージを伝えるコピーに代表されます。
顧客へのアプローチは、マスメディアだけではなくYouTubeやブログなどのSNSなど手段がいろいろと増えている時代です。それによって、発信するキャッチコピーもフォーカスする属性や使用する手段によって使い分けることで優位になります。
シンプルにキャッチコピーを分類すると下記のとおりです。
(1) イメージコピー
(2) セリング(セールス)コピー
(3) ティーザーコピー
(4) クロージングコピー
(5) フィードバックコピー
おそらく読書の皆さんがキャッチコピーと聞くと連想するのが(1)イメージコピーです。前述した〝お口の恋人〟や〝そうだ、京都行こう〟その他2点も含めこれにあたります。
(2)セリングコピーは売ることを目的としています。売場やネット通販には欠かせない文句です。(3)ティーザーコピーは“じらし”という広告手法を活用し、消費者を次の購買心理過程へ導きます。DMややはりネット通販で多く見られます。(4)クロージングコピーは締めの言葉。このコピーによって消費者の購買行動を喚起させます。
インターネットが登場するまではマスメディア主体のキャッチコピーが主流でしたが、SNS主体になり(5)フィードバックコピーの重要性が高まっています。ひと言でいうと“レビュー”のことで、顧客の反応です。再三聞くことがあると思いますが、マスメディアの〝一方向性〟からソーシャルメディアの〝双方向性(インタラクティブ)〟により、お客さまの声が収集しやすくなりました。この声に反応する消費者が多いことでキャッチコピーとして活用価値があるとの認識が高まっています。
例えば、〝一目で義理とわかるチョコ〟は(1)でありながら、もらった男性のつぶやき(反応)がそのままコピーになったような感覚があります。ますます(5)のタイプのキャッチコピーは増えていくと考えられます。下記のドラッカー教授の言葉は、キャッチコピーを考えるときにも意識したいことです。
『生産者や供給者が、製品の最も重要な特色と考えるもの、すなわち製品の質が、時として顧客にとってまったく意味がないということである。』(創造する経営者p121)
〝一目で義理とわかるチョコ〟は、ブラックサンダー(有楽製菓)という商品のキャッチコピーです。★以前★もインパクト数列の「1」の回でも触れた商品ですが、数字の「1」の存在はこの回では兎も角としてこの商品はチョコです。チョコですからカロリー、カカオの含有量など量的な差異をアピールする商品がほとんどです。
佐藤先生の「実践するドラッカー:事業編p57・58」を引用させて頂くと ↓↓↓
『顧客価値は、質的な差異が認められない場合、価格や個数、重さといった量の問題として私たちの元に返ってきます。(中略)量による差別化は、真似されやすいのが難点でしかも利益を圧迫します。
一方、質的な差異は真似されにくく、差別化の本命と言えます。ただし、商品本来の目的を達成するぐらいの品質では足りません。
(中略)顧客が質的差異を認めてくれるかどうかは、これら機能品質、使用品質、感性品質の優先順位、ときにはその組み合わせで決まります。
顧客価値には量と質による差異化があり、顧客価値の質にも違いがあり、そしてその違いは顧客が決めるということです。』
ブラックサンダーは使用品質の中の用途にフォーカスしたことで、顧客へユーモアのある提案をキャッチコピー展開することが成功し販売個数を伸ばしています。
私がブラックサンダーの存在をしったのは10年ほど前、コンビニで新商品のチョコがあると学生から聞いたことでした。今もパッケージに表記されていますが、「おいしさイナズマ級!」がその当時のキャッチコピーでした。
『「顧客にとっての価値は何か」という問いにゴールはありません。』
ブラックサンダーの上記の質問の答えの一つが〝一目で義理とわかるチョコ〟であると言えるかもしれません。
キャッチコピーを考える場合、必ずこうでなければならいというルールはありません。
以前述べたように、専門であるコピーライターやセンスのある経営者やスタッフのみに許されたスキルでもありません。まして巧拙でもありません。
大事なことは目的と目標です。何のためにという目的は前述した(1)~(5)であり、目標は販売個数などどのような成果を設定するかということです。
ただし(1)については成果を測定する難しさがあります。マスメディア時代に求められることと、SNS時代とでは異なります。マスメディア時代は“感性に訴えること”であり、SNS時代は“シェアされること”になります。前者は抽象的であり、後者は具体的な表現とも置き換えられます。
具体的に表現できる素材が“数字”であると、以前から触れているとおりです。その中でも“0ゼロ”は目標設定として企業の内外問わずにわかりやすく、パワーのある“数字”です。
前回も提示しました下記の事例はキャッチコピーとしての効果も感じるのではないでしょうか。
- 世の中から現金を0にする。
- 車から二酸化炭素排出を0にする。
- 世界からプラスチック製ストローを0にする。
- 病院から待ち時間を0にする。
- 会話から言葉の壁を0にする。
次回は★ルンバ★同様、“0の事例”を開示します。身の回りにある商品、特にヒット商品はキャッチコピー文法:0ゼロ編にあてはめることができるという仮説を検証します。
これまでの連載
<第1回>事業とは価値転換プロセスである(前編)
<第2回>事業とは価値転換プロセスである(後編)
<3回目> 顧客はドリルではなく穴を欲している
<4回目> 顧客は常に合理的である(前編)
<5回目> 顧客は常に合理的である(後編)
<6回目> 顧客とは決定権をもつ者、拒否権をもつ者である(1)われわれの顧客は誰か
<7回目> 顧客は満足を買っている(2)顧客にとっての価値は何か(パート1)
<8回目>顧客は満足を買っている(2)顧客にとっての価値は何か(パート2)

沼澤拓也

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