ドラッカーの読書会を通じて、指示・命令がゼロの会社を目指し、スタッフが生き生きと働く会社へ〜(株)BALANCE. 代表取締役 才野裕識さん


(株)BALANCE. 代表取締役 才野裕識さん

(株)BALANCE. 代表取締役
才野裕識(さいの・ひろのり)さん

1977年、岡山県倉敷市生まれ。
岡山県理容美容専門学校卒、
ヘアサロン勤務を経て2006年、独立。

ドラッカーに出会って美容室経営が変わった

―どのようなお店ですか?
才野 倉敷市と岡山市で美容室を経営しています。今、5店舗になりました。「来た人が笑顔になって、元気になる」がコンセプトの美容室です。メイン客層としては、仕事や家事に忙しい女性。こういった人たちが、非日常体験、プチセレブ体験、オアシス体験が楽しめるという一風変わったヘアーサロンです。ブランドとしては2系統あります。「andFINE(アンドファイン)」店は託児室があり、保育士さんがいます。おしゃれをあきらめている子育て中のお母さんでも安心して来店できる店です。一方、「BALANCE.(バランス)」店は、新しい自分に出会う。あなたの魅力をもっと引き出すトータルビューティーサロンです。

―ご自身は経営者ですか?
才野 わたしはオーナーという役割です。現場には月に1〜2回しか出ていません。マネジメント全般、スタッフの育成とか将来ビジョンを考えたりしています。当社は創業15年目。わたし自身は43歳です。自分としては50歳すぎから事業継承をして、55歳で次の人に渡したいと思っています。そのためには次の社長を育てることが重要だと思って。今、その練習をしているところです。

―同業者の仲間と勉強会を?
才野 サロンを経営している仲間や関連業者さん20人くらいと、「経営者の会」をつくって主催しています。2年前からです。会ではお互いの店の実績をすべて共有しています。売上や決算書も公開して。求人はどうしているのか、集客はどうやっているのかとか。全部、オープンに公開しています。そうすると、お互いの店の強みや弱みがわかります。この経営者向け勉強会にドラッカーの読書会を導入しています。

―なぜ、そこまでやるのですか?
才野 自分自身もまわりの人から教えてもらって成長してきました。なので人の成功に手をかせるようになりたいからです。ドラッカー読書会のファシリテーターも、ドラッカーに出会って自分の美容室経営が変わったからやっています。美容室オーナーは髪を切るといった技術的なことは勉強しても、経営に関する勉強はほとんどしていません。知らずに経営に迷っている状態の人が多いのです。こういった人の助けになれれば、という思いからです。一度、自社でドラッカー講座をやってみて、ある程度うまくいったので、それを他社でやっている、という感じです。

―ドラッカーを知ったきっかけは?
才野 2006年に独立しました。5年経って、スタッフ全員が辞めてしまうという大ショックを受けました。これをきっかけに、2013年にドラッカーセミナーを知り受講しました。経営・マネジメントについて学びました。以来、顧客は誰か、事業は何のためにあるのか。月1回の社内勉強会を開催してきました。行動指数を定め、それを測定してきました。2015年に2号店を出店。「きまあ指標」といって、「き」=きれい/気持ちいい。「ま」=また来るね。「あ」=ありがとう。これらのことばをお客さまから何回言われたかをカウントしています。今も、ずっと継続しています。だんだんと社内文化になってきています。けれど飽きてきた時があり、一度、止めてみました。そして振り返ってみたのです。指標を測っていた時はチームワークが良かったです。測定を止めるとそれが薄れた感じがしました。今は、再び、やりかたを少し変えて再開しています。

―読書会はどのように実施?
才野 ドラッカーの読書会は各店舗ごとに実施しています。新人から全員です。本は『経営者の条件』を使っています。当社は「自分たちで考えて、自分たちで決定して、自分たちで行動して、自分たちで評価する組織」になりたいと思っています。なかなかできていないのですが「指示、命令がゼロの会社」を目指しています。どうしてかというと、そのほうが楽しいからです。でも、そのための考える基準というものがないとだめです。その道具として、ドラッカー読書会があります。読書会をやると、ベクトルやことばがそろってきます。

―具体的にはどうやっているのですか?
才野 読書会は店の営業後に希望者のみ、としています。けれど全員参加していますね。60分とちょっと短いバージョンです。わたしは、ファシリテーター役に徹しています。「ドラッカーは、こう言っている」という風に話しますね。これがいいみたいです(笑)。

―拒否反応はないのですか?
才野 みな、あの赤本(ダイヤモンド社のエターナル版)を見た時に、「うっ」とのけぞります。読むのも自由、参加しないのも自由です。けれど、社内アンケートには「自分を成長させてくれる」と書いてくれます。最近の若い人ほど、成長欲はすごいものを持っています。当社が必要としている人は「成長したい人」。成長をキーワードにいい人が集まってきている印象があります。
 
―うまくやるコツなどはありますか?
才野 「何のためにやるのか」。これがすごく大事だと思います。目的をきちんと伝えることです。もうひとつは「上手にやろうとしない」ことですね。教育においては以前、外部講師とかにお願いして年間200〜300万円を使っていました。上手に研修してほしいと。でもちがったんです。親が子どもを育てるのと同じです。親子の場合、一緒に成長していくじゃないですか。本気でかかわっていく。外部で習ってきたことは、1ミリでも2ミリでも方向がちがってくると、自社では役に立たなくなるんです。

 

インタビューに応じる才野さん

目的を明確にし、仲間と成長する組織へ

―経営において大切なことはどんなことですか?
才野 「自分がどうなりたいか」をまずは明確にすることです。経営者の役割は明確化だと思っています。「この指とまれ」と、はっきりと打ち出すことです。良い悪いは別にして。自分はどんな会社をつくりたいのか、どんな社員に来てほしいのか、どんなお客さまに囲まれたいのかとか。わたし自身は以前、社員が全員辞めた時、どん底に落ちた時に、3つのことを決意しました。スタッフがうれしそうにいきいきと働く会社にする。喜ばれて感謝される組織にする。そして、誰が辞めても困らない組織にしようと。誰が辞めてもというのは、わたし自身にも当てはまります。社長であるわたしが辞めても困らない会社という意味です。経営理念や会社の方向性は、すぐに出てこないようなむずかしいことばだとダメなんですね。シンプルでいいのです。自分は何をしたいのか。ここを明確にすればいいと思っています。それに賛同する人が集まってきます。お客さまもそうです。

―好きな本は何ですか?
才野 一番好きな本は『非営利組織の経営』です。本質的な意味において、やりがい、いきがいみたいなものを感じるのです。非営利組織ってお金で仕事をしていないじゃないですか。でも、いきいきとして働いている。それはなんなのかなあと。この本を読んで、これまでの考え方が変わりました。

―そもそも美容師を目指すきっかけは?
才野 中学生の時のこと。バイクを盗んだりしてお巡りさんにつかまったことがあったんです。そのお巡りさんに「おまえ、その手を出してみよ」と。「この手はな、ものを盗んだり、人をなぐったりすることにも使える。でもな、人を助けたり、喜ばしたりすることにも使える。どっちに使いたいかは自分で選べ」と。で、これからは喜ばすことに使いたいな、と。手を使う仕事、手を使ってひとに喜んでもらう仕事。イコール美容師だなと。単純にそう思ってのことです。

―新入社員も増えていますね
才野 スタッフは今、43人です。新卒も6人採用できました。来年は10人の採用を予定しています。志望する学生の質もあがりました。採用にはさほど苦労しなくなりました。成果があがってきたのは最近のことです。加速度的にあがってきている実感があります。自分ひとりでドラッカーを学び始めた時よりも、今は、仲間のベクトルがそろい、こうなっている感じがしています。美容室の場合、人の成長が売上に直結します。一人ひとりのスタッフがお客さまを満足させられれば、売上は必然と伸びます。今年は昨年対比157%の売上を達成しました。

―今後の目標はどんなことですか
才野 数量的には、2023年には4億円の売上を目指しています。当社の売上の定義は、「ありがとうの数」です。なので、4億回ありがとうをいただく、というもの。5年後はスタッフ数100人が目標です。日本一スタッフが笑顔で元気に輝いているサロン。うれしそうに、楽しそうに働いている会社を目指してやっています。

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花岡 俊吾
取材記者/エディター   1965(昭和40)年、北海道恵庭市生まれ。高崎経済大学卒業、(株)ピーアールセンターにて広告・マーケティング業務に従事。2007年独立、人口減少の道内経済に貢献すべく、地域の新しい情報の発信をライフワークにする。一眼レフを片手に、年間100日以上をアウトドアフィールドや道の駅・キャンプ場を取材。新聞記事連載やWEBコンテンツ制作がメインの仕事。P.F.ドラッカーの読書会、札幌ビジネス塾に10年以上通い、上田惇生先生のサイン入り『経営者の条件』は家宝。著書に『アウトドア&感動体験ガイド北海道』『北海道キャンプ場&コテージガイド』『北海道道の駅ガイド』(共に北海道新聞社)。休日はマラソンと登山に勤しむ。

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