『経営者の条件』本に書いてある通りのことを実践し、ベンチャー企業と家業の2社を経営。ドラッカーの学びを広げたい
(株)エルフィン 代表取締役
川島眞一さん
1956年、函館市生まれ。
函館工業高等専門学校卒、
家業の北海道合金鋳造所を継ぎ、
2000年、(株)エルフィン創業。
家業の経営に加えてベンチャー創業
—仕事をおしえてください
電気を流すと光るシート、エレクトロ・ルミネッセンス通称ELと呼ばれる薄いシートの製造・販売をする(株)エルフィンの代表取締役をやっております。
会社は分類でいうと「その他の電子部品の製造」ということになっています。
創業は2000年。仲間と一緒につくったベンチャー企業です。
製品は光源の一種なので、バックライトとしてクルマのメーターや電車の車両スピードメーターに使われたりしています。
—それ以前はなにを?
もともと、私の家は祖父の時代から鋳造という金属を溶かして部品をつくる仕事をしていました。
北海道合金鋳造所といい、社員15人くらいの小さな町工場です。
ブロンズとアルミを扱い、船のプロペラやシャフトなどになる部品をつくっています。
造船所などが主な顧客ですね。自分で4代目。今もそれはそれでやっています。
私は15歳の時に父を亡くしました。
函館の高専を卒業後、祖父の指令で神戸の会社に修業に行きました。
2年半おせわになりました。
その後、祖父の病気などもあり、24歳で家業の会社を継ぐことになったんです。
—転機は?
しばらく家業の鋳造をやっていましたが、「自分はいったい何をやりたいのだろうか」と思い悩む時期がありました。
40歳くらいの時です。
このころ、地元函館で異業種交流が盛んになっていました。
ある時、今の会社の基礎技術を有する会社を見学する機会がありました。
「これはおもしろい!」と、一気にのめり込んだのです。
仲間に声をかけて5年間、この技術の未来の可能性について基礎研究をしてきました。
メンバーにも恵まれ、技術開発の基盤ができたものですから実際に工場を建ててビジネスとしていけるのではないか、と会社を設立したのです。
—その後は?
創業当時、会社をつくった経験がなかったのでいろんな人に相談をしていました。
その中に、ある人の紹介で佐藤等さんに出会いました。
ビジネスプランの指導や、資金調達に関するアドバイスをもらっていました。
当時、佐藤さんは小樽商大の社会人大学院に通っていたころ。
2人で酒を飲むたびに大学院の話しを楽しそうにしていました。
「来てみない?」と。
入学には、ちょっといろいろあったんですが、2003年に私もその大学院の門をたたきました。
マーケティングを専攻しました。火曜日と土曜日に函館から2年間通いましたね。
—ドラッカーとの出会いは?
佐藤さんからある日、ドラッカーの『経営者の条件』本をいただきました。
「これ、読んだ方がいいですよ」と。
私の会社は各種公的機関の補助金を使っていた関係で、当時、その実績を講演してほしいという依頼がたくさんありました。
そんな時、「川島さん、最近ちょっと時間の使い方がおかしくないですか」と。
「この本の中に『汝の時間を知れ』という部分があるから読んでみた方がいいですよ」ということでした。
本業に専念せよ、ということを佐藤さんは諭してくれました。
それ以降、講演の仕事は廃棄。函館市の公的な仕事も5〜6やっていたのですが全部辞めることにしました。
『経営者の条件』本で成果をあげる
—成果は出ましたか?
廃棄によって時間が生まれました。そこで生まれた時間を何に集中するか。
自分の会社の経営課題や、5年後の将来像・ビジョンをつくることができました。
やること、やらないこと。意思決定をしていきました。
決めたら、計画を立てていきました。
ドラッカーの言っているとおりのことをしていきました。
ベンチャー企業って、2〜3年目に“死の谷”がくると言われているんです。
けれど、おかげさまで、今は安定的に売上が上がるようになりました。
ドラッカーの導きだと思っています。
—函館で読書会も?
2004年から佐藤さんが札幌で読書会をスタートさせました。
その時から、私も札幌の読書会に参加をしていました。
読書会はとても役に立ちました。
「この学びを函館にももっていきたい!」と思い、読書会を函館でやるべく準備しました。
佐藤さんに毎月、函館に来てもらって開催。
なので、ドラッカーの本はほとんど読書会で読んでいます。
—好きな本は何ですか?
私的にはセルフマネジメンとの入口でもある『経営者の条件』がなんといっても好きです。
印象に残っている部分は「知力や創造力はあくまでも基礎的な資質である。
それら資質を成果に結びつけるためには、成果をあげる能力が必要である」というところ。
本をいくら読んでも成果にはつながらない。
それらをうまく活かす能力が必要なんだ、というところですね。
「成果をあげる能力は身につけなければならない」と言っているところは非常に大切な部分で、大好きな言葉です。
実は本というものが好きではなかったんです。
一切、読んでこなかった(笑)。
そのぼくが読みはじめたんですよ。ドラッカーは読めたのです。
すんなり入ってきました。
なんか自分の中で、いろんな疑問があったんでしょうね。
それに答えることが、全部ドラッカー本に書いてあったんですね。
人として生きていく要素、経営者としてなすべき原則がすべて入っていたからだと思います。
以来、ドラッカーにのめりこんでいます。
自分でも読書会を開催したりしています。
上田惇生先生ともお会いすることができ、ドラッカー学会にも入会し、大会には、春と秋、ほとんど参加しています。
—今後の活動は?
今後は、ドラッカー思想を自分のことばで伝えたいと思っています。
「わたしは」という主語をもって、学んだことを発信していければと。
家業を継ぎ、ベンチャー企業をつくったり、その中でいろんな人との出会いがあり、失敗があり成功がある。
今、こうして楽しく暮らしていけるのはこうしたバックグラウンドがあるからです。
この中心にあるのはドラッカーにまちがいありません。
函館読書会は「ブックカフェ イロドリ」で開催しています。
この読書会を継続して、学びの輪を広げていきたいと思っています。


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