『経営者の条件』購入から3ヶ月後、2014年6月24日、函館の読書会へ参加しようと決めたのは読書会に参加することで一人で読むだけではたどり着けない「この本の本当の面白さ」にたどり着けると思ったからです。ドラッカーの書籍を用いるナレッジプラザの読書会は全国へ着々と広がっていましたが、当時まだ東北地方では行われておらず、青森から一番近い開催地が函館でした。
「まえがき」の冒頭3行が決め手となり購入した『経営者の条件』でしたが、ひとりで読んでいると、ところどころ心に引っかかる部分はあっても内容の理解を得られるほど読み込むことはできませんでした。異国の言葉で綴られている書物をつらつらと目でたどっているような状態。文字を目で追い、ページをめくっては戻りめくってはまた戻りを繰り返し、なかなか先へと進まないのです。寝る前にベッドの上で開いていると、ずっしり重みのある本が、寝ぼけた顔に落下します。あの衝撃に何度驚いたことでしょう。書かれてある内容を理解できず自分事に置き換えられないので読んでいるとすぐ眠くなっていたのです。
でも不思議と本を開くことは「イヤ」になりませんでした。何か役に立ちそうなことが書かれてあることだけは感覚でわかります。書かれてあることの本当の意味を知り、日々の暮らしに役立てられるようになれた日の自分を想像してワクワクしてくるのです。
そういえば。
顔にずしんと落ちてくるその衝撃は、しばらく忘れていた子ども時代の記憶を呼び覚ましました。
・・・あれ? この感覚どこかで味わったことあるよな?
私は物心ついたときから国語辞典や漢和辞典、四字熟語辞典、ことわざ辞典、英和辞典、和英辞典、論語などのたぐいを枕元に並べては寝る前に読むのが好きな子どもでした。読むというより目で追っていたというほうが近いかもしれません。いつの間にか当たり前になっていたあの習慣は、やりたくてやっていたことに違いないのですがなぜそんなことをしたかったかの理由については考えたこともありませんでした。
語彙力の乏しい子ども時代のことです。知らない言葉や意味のわからない文字の連続に、ページを開いては戻り、開いてはまた戻りを繰り返し、納得するまで読み込めてなどいなかったはずです。
でも不思議と辞書を開くことは「イヤ」になりませんでした。何か役に立ちそうなことが書かれてあることだけは感覚でわかります。書かれてあることの本当の意味を知り、日々の暮らしに役立てられるようになれた日の自分を想像してワクワクしてくるのです。
(そうだ! あの頃と同じだ!)
あの頃もこうして寝ぼけた顔にしょっちゅう辞書が落ちてきたっけ!
成長するにしたがい読む本は小説やエッセイの類いなどソフトな文体が増えていたためこういう感覚を忘れていたのです。それらの本は面白さに引き込まれ気がつけば朝になっていることはあっても眠気が誘われることは滅多にありません。「あぁ面白かった」と思っても内容はすぐに忘れたりして。
逆に「あ」の行から順に読んで心のフィルターに引っ掛かっていた辞書から得た言葉の数々は私の中に着実に蓄積していると感じます。子どもの頃は意味のわからなかった言葉がおとなになってから「なるほど、そういうことか」と時間をかけて腑に落ちることもあります。辞書から得てきた情報は私自身の成長のなかで必要に応じて使われ、使うことにより知識として蓄えられ、経験を重ねることでさらに磨かれてきたのです。仕事、人との関わり、学び、家庭など様々な面で人生を支えてくれているのがこれら基礎的な言葉でできた礎なのだとすれば、あの頃重たい辞書によって(知らず知らずに)本来持っている資質や気質が強みに結び付くように、私のなかで何かが鍛えられていたのかもしれません。
そういう意味でドラッカーさんの本は私にとって内容がギュギュギュッと詰まった辞書の類いです。
厳選された寿命の長い言葉がずらりと並んでいる。読書会に参加することによって書かれてある言葉の意味を知り、理解を得る。私はそれらを心の中の道具箱に納め、仕事、人との関わり、学び、家庭などそれぞれの場面において必要に応じて取り出し日々の暮らしに役立てる。
初めて参加したこの日の読書会で私の心に響いた言葉は
「強みを生かすということは行動することである」
という言葉です。ドキュンとしました。
とたんに「この学びを青森に持ち帰りたい」という衝動がわきあがりました。元々私には「地方にいながらにして都心の学びを受けられる場をつくりたい」という漠然とした思いがありまして、それと読書会というスタイルが合致した瞬間です。私は宣言しました。「青森を東北第一号の読書会開催地にします!」
強みを生かすということは行動することである。人すなわち自らと他人を敬うということである。それは、行動の価値体系である。強みを生かすことは、実行によって修得すべきことであり、実践によって自己開発すべきものである。そしてエグゼクティブたる者は、強みを生かすことによって個人の目的と組織のニーズを結びつけ、個人の能力と組織の業績を結びつけ、個人の自己実現と組織の機会を結びつける。
『経営者の条件』P220

瀬川 智美子

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