社長の社内読書会体験記その3【和光良一】共通の経験が知恵に変わる読書会@埼玉桶川


ドラッカーの文章は抽象度が高いので、読み込むには咀嚼する力が少し必要です。

咀嚼する、というのは、書いてある文章を具体的な現実と照らし合わせてイメージを膨らませるということです。

しかし、一人の人が抱えている現実というのは限られていますから、一冊の本を読んでも、自分で膨らませることができる文章は、そうたくさんは見つかりません。

読書会では、そうやって一人一人が見つけた文章に線を引きます。

人によって見つける文章は違いますし、同じ文章であっても抱えている現実が異なれば、膨らませ方も変わってきます。読書会では、それを他の参加者に紹介することで、みんなで文章に対する理解を深めていきます。

一般の読書会では参加者の年齢も役職も会社も業種もバラバラな人たちが集まりますので、紹介される話も多岐に渡ります。

ところが、これが社内読書会の場合、どうしてもお互いに知っている話が多くなります。

長い期間、一緒に仕事をしているのですから、当然です。一つの文章を読んで

「過去にこういう失敗がありましたね」という共通の経験が思い出されるのです。

これが読書会の場ではなく飲み会の場であれば、ただの思い出話か愚痴の言い合いで終わってしまいます。

ところが、読書会では、そのケースを思い出させてくれたドラッカーの言葉があります。

つまり、共通の失敗談などから、シャープな教訓を引き出すことができるのです。

例えば、『経営者の条件』6章には、

「だれがその意思決定を知らなければならないか」

という問いが忘れられたために大量の不良在庫を抱えたメーカの事例が出てきます。それを読んだ製造業の会社の社員としては、”あの製品のあの在庫”が、みんなで思い浮かぶわけです。みんな知ってるあの在庫です。

普段であれば、ただ痛い気持ちを思い出して終わるところですが、読書会ではドラッカーの言葉が、”経験”を”知恵”に変える触媒になってくれます。

ファシリテータが「意思決定」について解説します。

意思決定では「必要条件」を明確にする必要があります。ここで言っている「必要条件」は正確には「境界条件」のことで、問題の前提となる条件の事です。

意思決定というのは、問題そのものを変えてしまうような決定の事なのです。大量に在庫を購入してしまった担当者には、その意思決定が伝わっていなかったために、通常通りのオペレーションをしてしまった、という事例が『経営者の条件』には紹介されています。

過剰在庫という目立つ問題がそこにあると、金額の過多などからそのインパクトに心を奪われてしまいますが、本質はそこではないのです。

状況の変化などから、場当たり的な決定をしていったために、いつの間にか問題をそのものが変わってしまっていたりすることがあります。それが見えないから、対処を変えるべきタイミングにも気が付けません。

そういう事態を避けるためにできることは、意思決定の際には「必要条件」を明確にしておくことです。

そして、常にフィードバックを行って、前提となっていた「必要条件」が変わっていないことを確認することです。そして、フィードバックの方法は、自ら足を運んでみる他ないのです。(『経営者の条件』6章参照)

卑近な現実からも、ドラッカーの文章と照らし合わせることで、次につながる知恵を身に着けることができます。

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和光 良一

和光 良一

1972年(昭和47年)東京生まれ。1991年暁星学園高校卒。1997年図書館情報大学大学院卒、NTT入社、NTTコムウェア配属。2004年に前社長の急逝により(株)日興電機製作所 代表取締役社長に就任。2008年に佐藤等氏のドラッカー読書会に参加し、ドラッカーの言葉と出会う。以来、ドラッカーを学ぶことを通して、仕事の悩みを取り組むべき課題に変えてきた。 ナレッジプラザ公認「実践するマネジメント読書会」ファシリテータ。 2010年ドラッカー学会エッセイコンテスト優秀賞。

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