絵で見るドラッカーの人生【1940年】
『「経済人」の終わり』の刊行により、ドラッカーは若くして一級の社会評論家としての地位を得た。結果として、『タイム』の創業者ヘンリー・ルースから『フォーチュン』誌10周年記念号の編集コンサルタントとして招聘された。
その仕事を首尾よく終えたにもかかわらず、『タイム』『ライフ』両誌の高給ポストのオファーは辞退した。自らの書き手としての知識独立が損なわれると考えたためだった。
資本主義をも否定
処女作『「経済人」の終わり』は文明の中心にイズムが置かれたときに、どれほど社会が損なわれるかを書いた。そのイズムの担い手とは、資本主義、マルクス主義、そして全体主義をもだった。しかし、マルクス主義、ファシズムはともかく、なぜ資本主義までも否定するのか。
結論から言えば、いささか控えめに言っても、資本主義はよいものとは言い難いからである。資本主義もまた経済至上主義の結果生じたイズムであって、本質においてはマルクス主義と双子の関係にある、ドラッカーはそう看破した。
資本主義は経済至上主義というイズムなしには成立しない。資本主義社会の中心には経済があり、貨幣がある。いかに経済が成長し社会が豊かになっても、金が主人である社会は歪んだ社会である。だから、ドラッカーは資本主義をも否定した。それに、現在資本主義もまた終わっている。
『断然の時代』(1969年)は、この資本主義を超えたところに何がありうるのかを世に先んじて示した。本書が世に出て数年後、世界はオイルショック(1970年代国際的政治情勢による原油価格の高騰とそれに伴う社会混乱)に見舞われ、先進国は成長に強力なブレーキをかけられることになった。物質文明の行き詰まりが頂点に達するのを予示するように『断絶の時代』は発表された。
ドラッカーは脱資本主義化する世界の中心コンセプトとして、知識を挙げた。しかも、これから知識社会がやってくるのではない。実は世界はとっくに知識社会の中にいるのだとした。ただ、人々が気づいていないだけである。『ドラッカー入門 新版』より
※この情報はのp.281~の『ドラッカー年譜』をもとに制作しています。より深い背景の理解には同書をお薦めします。
五月女 圭司
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