さあ、いよいよ今週からはジンドラの内容に触れながらドラッカーのセルフマネジメントの具体的内容について書いていきます。
まず最初の今日は、ドラッカーのセルフマネジメントについて考える際にとても重要なキーワードである「知識労働者」という言葉を解説していきます。
解説にあたっては、ジンドラの主人公三人のうちのひとりである青柳夏子さんに登場していただきます。
夏子は、研修会社ポテンシャルの総務課OL。
尊敬する北原社長の指示のままに完璧な仕事をすることを良しとし、毎日仕事をがんばってきました。
ところがある日、こんなやりとりが・・・。
研修会場が取れていなかったというミスをした夏子とそれを叱責する北原社長の会話です。
以下引用です。
目次
- 夏子、社長からガツンと叱られる
- 誰もが「知識労働者」である
- 【成果をあげることがエグゼクティブの仕事である。成果をあげるということは、物事をなすということである。(中略)エグゼクティブは常に、なすべきことをなすことを期待される。すなわち成果をあげることを期待される。 (『経営者の条件』p18)】
- 【知識労働者は、それ自体が独立して成果となるようなものを生み出さない。溝、靴、部品などの物的な生産物は生み出さない。知識労働者が生み出すのは、知識、アイデア、情報である。(『経営者の条件』p21)】
- 【知識労働者は自らをマネジメントしなければならない。自らの仕事を業績や貢献に結びつけるべく、すなわち成果をあげるべく自らをマネジメントしなければならない。(『経営者の条件』p21)】
- 【普通のマネジメントの本は、人をマネジメントする方法について書いている。しかし本書は、成果をあげるために自らをマネジメントする方法について書いた。ほかの人間をマネジメントできるなどということは証明されていない。しかし、自らをマネジメントすることは常に可能である。 (『経営者の条件』まえがき】
夏子、社長からガツンと叱られる
「あれ、夏子。来月の会場取れてないぞ」
二週間後に迫った研修の会場が確保されていないことが発覚したのだ。
「えっ。先方の自社ビルでやるのかと思っていました。特にご指示がなかったので」
いつもは明るく温和な社長、北原進一の目が険しくなった。
「ご指示がなかった? お前なあ……(中略)
いったい何年、この仕事やってるんだ? 言われなきゃできないなんて、新入社員じゃあるまいし。頼むから、少しは自分のアタマで考えて行動してくれよ」
引用終わります。
このやりとりによって、夏子は深く落ち込み、そして悩みます。
言われた通りに仕事することは美学ですらあったのです。
自分で考えて行動しろ、だなんて・・・。
思い悩みながらぼんやりバスに乗っていた夏子に後ろの席の叔父と甥らしき男性ふたりの会話が聞こえてきます。
ワンマン社長のふるまいに悩む甥に叔父は「自分なら変えられる。ドラッカーの『経営者の条件』には「自らをマネジメントすることは常に可能である」と書いてある。読んだらいい」とアドバイスをしている。
なんとなく聞こえてきたこの台詞に夏子は必然的なものを感じて書店で『経営者の条件』を手にするのです。
そして市内で実施されているドラッカーの読書会に、大学の先輩の杉並柊介と参加することになるのです。
その読書会で、夏子は自分の悩みの答えになるような言葉「知識労働者」と出合います。
夏子にガツーンとショックを与えた「知識労働者」という言葉!
いったいどういう意味なのでしょうか!?
またまた東堂先生に解説役をお願いしましょう!
誰もが「知識労働者」である
夏子が「知識労働者」という言葉に出合うのは、ドラッカー読書会の第二回、『経営者の条件』の第一章『成果をあげる能力は修得できる』を読む回です。
ここで夏子が線を引いてきたところ、そのあとの東堂先生の解説…の流れから夏子の体に電流が走ることになります。
以下、引用です。
「ではさっそく、発表してもらいましょう。どなたから始めますか」
青柳夏子の手がおずおずと挙がった。
「青柳です。よろしくお願いします。線を引いたところを読み上げますね」
【成果をあげることがエグゼクティブの仕事である。成果をあげるということは、物事をなすということである。(中略)エグゼクティブは常に、なすべきことをなすことを期待される。すなわち成果をあげることを期待される。 (『経営者の条件』p18)】
(中略)
「ありがとうございます。『なすべきことをなす』、これはとても重要なメッセージですので、みなさんも意識しておいてください。ただ自分のやりたいようにやるのとは大きく違います―。
現代社会に生きる私たちは、いろいろな形で『組織』に属しています。その組織の成果から考えて、それに貢献する仕事をすることが『なすべきこと』なのです。そこにこそ、組織に属する個々人の社会的役割があるのです」
(筆者注:このあと続いて堀川徹が線を引いたところを発表すると、「知識労働者」という言葉が出てきます)
引き続き引用です。
「じゃあ」と堀川徹が手を挙げた。
【知識労働者は、それ自体が独立して成果となるようなものを生み出さない。溝、靴、部品などの物的な生産物は生み出さない。知識労働者が生み出すのは、知識、アイデア、情報である。(『経営者の条件』p21)】
「さて、『知識労働者』はドラッカーを読むうえでカギとなる言葉なので、少し解説しましょう。英語で言えばナレッジワーカー。その反対の概念として、『肉体労働者』があります。英語だとマニュアルワーカー、つまり指示、命令に沿って働く人々のことです」
知識労働者(ナレッジワーカー):自ら、考え、行動し、成果に貢献する
肉体労働者(マニュアルワーカー):指示、命令に沿ってマニュアル通り働く
「それでは知識労働者とは何でしょう」
【知識労働者は自らをマネジメントしなければならない。自らの仕事を業績や貢献に結びつけるべく、すなわち成果をあげるべく自らをマネジメントしなければならない。(『経営者の条件』p21)】
「ここを読めば、あなたも私も、誰もが知識労働者だということを認識できるのではないでしょうか。自らが知識労働者であると認識し、自分をマネジメントする必要があることを意識することから、成果をあげる人物になるための道が始まります」
夏子は東堂の言葉を噛みしめていた。
(誰もが知識労働者―私も、知識労働者なんだ)
北原社長に言われたことが、改めて夏子の胸に迫った。
引用を終わります。
自らをマネジメントするのが、知識労働者。
自ら考え、行動し、成果に貢献するのが、知識労働者。
『経営者の条件』のまえがきにはこんな言葉があります。
【普通のマネジメントの本は、人をマネジメントする方法について書いている。しかし本書は、成果をあげるために自らをマネジメントする方法について書いた。ほかの人間をマネジメントできるなどということは証明されていない。しかし、自らをマネジメントすることは常に可能である。 (『経営者の条件』まえがき】
他者ではなく自分のことを変えようと思うとき、
セルフマネジメントをしようと決心したとき、
自らのことを「知識労働者である」と定義するところから、はじまるのです。
次回もお楽しみに!




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