読書会それぞれの出会い(その4)-37年ぶり再会の友人は何とドラッカリアンだった


「ドラッカリアン」という言葉がありますが、知っていますか。「ドラッカーのファン、共感者」を意味する言葉ですが、そういう意味からするとこのWebに来られた方、濃薄は別として皆、ドラッカリアンと言えるのではないでしょうか。

実は私は今年のGWに偶然にも中学時代の同期に卒業以来、37年ぶりに再会したのですが、何とその時に彼がドラッカリアンであることが判りました。

今回はそんな劇的再会を果たした札幌などのドラッカリアンが多く集う飲食店「活食・隠れ酒蔵 かけはし 北2条店(以下、「かけはし」)」で副店長を務める冨永浩靖さんにお話を伺いました。(なお、同店で代表を務められ、「実践するマネジメント読書会®(以下、「読書会」)かけはし読書会」のファシリテーター(以下、「FT」)を務める下川部康雄さんにも別途、お話を伺いましたので、次回、紹介いたします。)

 

○突然の再会

(筆者)冨永君、今日はご多忙の中、お時間を戴きありがとうございます。でも、それにしても今年のGWにお店で冨永君に「もしかして、M中の八谷君じゃない?」と声がけされた時はびっくりしましたね。お店の代表の下川部さんはFTの先輩(かつ私の大学時代の悪友の高校時代の部活仲間)という事もあり、札幌帰省時に何度か美味しい食材とお酒を味わいに伺ったことがあり、その時もGWの札幌帰省時で大学時代の悪友の1人と呑んでいるところでした。冨永君からの声かけに同伴の某君もびっくりしていました。

(冨永)実は下川部代表から八谷君がお店にいらっしゃる前日に「明日は東京からFTの人が来店するから」と言われていました。佐藤等先生主宰の勉強会「ナレッジプラザ」関係のセミナー等が開催される際にはセミナー参加のFTの方がご来店される事もあるのですが、GWのど真ん中の時期なので、FTの誰かが札幌に遊びに来られるのかなと思っていました。そして、あの日、お店の奥から「八谷」という名前が聞こえるので、「これはもしや」と思ってお席に伺いましたが、一発で判りましたよ。だって、八谷君、中学の時と全然変わっていなかった(笑)

(37年ぶりの再会:真ん中が冨永さん、右端が筆者)

(筆者)その時に同伴者がいたのと、他のお客様が沢山いたので、長話はできなかったけど、ちらっと冨永君が「かけはし読書会」に参加されているのと「参加している時に『読んでいないから』と言っていたのが気になっていて、改めてお話を聞こうとずっと思っていました。そのあたりは後で聞くとして、まず、中学卒業してから何やっていたかというか、日本酒や下川部(かけはし)さんとの出会いについて簡単に教えて戴けないでしょうか。

(冨永)はい。私は高校卒業後の大学受験浪人時に飲食店でアルバイトをしていたのですが、そこで飲食業の面白さ・素晴らしさ等に完全にハマってしまいました。そして、30歳目の前の頃、某大型飲食店が開店時に転職しました。そして、転職後、少ししてその会社内で新規事業として和食事業店舗を展開する事となり、異動となりました。その時に日本酒の製造メーカーさんとご縁が出来ました。

 それまで私、飲食店では他のアルコール類の扱いが長かったのですが、日本酒を扱い、学ぶようになってから「日本酒そのものの味わい深さ」、「料理とのマッチングが合った時にはお互いの良さが引き出せる事」の2つに魅了されました。それ以降、約20年、日本酒について勉強していますが、日本酒は本当に奥が深く、まだ半人前だなと思っています。

(筆者)そうなんですね。20年日本酒に真摯に向き合ってきた冨永君でもそうなのですね。でも、物事ってどの分野でも同じなのでしょうね。今日、話題にするドラッカーも著書『プロフェッショナルの条件』で「最高の仕事は直近の仕事」と述べているように「継続学習」の実践例をまずコメント戴いたかなと思います。ところで、今、お仕事をされているかけはしさんとはどういうご縁だったのですか。

(冨永)実は私、このかけはしには新規出店時(5年前)のスタッフ公募で入ったのです。それまで下川部代表の事は全く知りませんでしたが、実際に一緒に仕事をしてみると日本酒や食材に関する造詣の深さがまるで違い、「この人と俺はレベルがまるで違う。もっと色々と勉強しなければ。」と思ったものです。

(下川部さんと日本酒)

○ドラッカーとの出会い~最初は嫌で仕方なかった

(筆者)本当に懐かしくて色々と前段的な話を聞いてしまいましたが、ここから今日のインタビューの本題のドラッカーとの出会いについて少しずつ教えて戴こうかなと思っています。

(冨永)かけはしに入った頃、丁度、下川部代表が読書会FTの資格を取り、飲食店経営者、酒屋さん等を主な対象として読書会を始めたのですが、私もその中のメンバーとして参加する事になりました。当時、自分自身、「成長したい」という思いが強く、様々な種類の学びに手を出していましたが、しっくりと来るものに出会うことがない中で、新たな学びの糧を求めてのドラッカーとの出会いでした。

(筆者)そうだったのですね。では、読書会に初めて参加した時の印象等について教えて戴けないでしょうか。

(冨永)実は初参加時から1年半は正直言って「全然判らなかった」し、「参加するのが嫌で仕方なかった」です。私、八谷君も知っているかも知れませんが、父親が中学の国語の教師だった影響があるのかもしれないけど、本を読むこと自体は幼い頃から好きでした。でも、読書会に臨む際の基本ルールである「事前に指定範囲を『読み』、気になったところに線を引く」の『読む』に引っ張られてしまい、事前に指定範囲を読んでも、内容を完全に理解して読書会に臨まなければという気持ちが前のめりとなり、ストレスは溜まるは、読書会当日のFTの下川部代表や他参加者のコメントもほとんど頭に入りませんでした。

○『読む』を捨てて、『道具』としようとする事でドラッカーと近づいた気がする

(筆者)今の冨永君のコメントを聞いて、普通なら読書会に参加しなくなると思うのですが、今も参加し続けていること、GWに再会した際に「俺、本読んでいなくて参加しているから」と言っていた事から想像すると、その後、何か劇的な変化があったのですか。

(冨永)はい。読書会に参加して1年半後、読書会に参加するに当たって、『読むことを捨て』ました。厳密に言うと、全く読まないという訳ではなく、直前に流し読みをし、その中で自分の目に留まった箇所についてコメントするようにしました。また、下川部代表や他参加者のコメントも線を引いた部分とコメントの関係を集中して聞き、引用箇所そのものの内容は半分無視して聞いていました。そうしていると自分自身のコメントはもちろん、下川部代表(FT)や他の方のコメント内容もすっと頭の中に入り、自分自身の実践のヒントが何となく得られるようになり、読書会参加開始時に抱いていた「判らない」、「嫌」という感情がいつの間にかなくなっていました。そんな私の変化に気がついた方がいました。下川部代表と同時期にFTの資格を取られた田畑祐司さん(元札幌市交通局部長、現:(一財)札幌交通振興公社常務理事)でした。ある読書会後の懇親会(「第二の読書会」と言われています)で田畑さんに「いやー、最近の冨永さんの読書会時のコメントいいね!質が格段に上がったと思うんだけど、何かあったの?」と言われ、読むことを捨て、今の参加方法(姿勢)を打ち明けました。すると、田畑さんから「それが佐藤等先生がよく言う、『ドラッカーの言葉を道具として使う』姿勢なんじゃない」と言われました。それ以降、『読まない』で読書会に臨み続けています。

○スタッフに背中を見せる事が「読書会」で得た事の実践

(筆者)GW時に「俺、読書会に読んで参加していないから」という冨永君の真意が良く判りました。さて、読書会はあくまでも「学んだことを実践する」ことに意味があります。冨永君は今、かけはしさんの副店長、つまり、マネージャークラスのお立場だと思うのですが、読書会での学びを具体的にどのように実践し、また、成果が出ているかご紹介戴けないですかね。

(冨永)そうですね。さっき話した通り、読書会に参加して1年半は良いイメージはありませんでしたが、それなりに学ぶ点があったのは事実です。「かけはし」開店当時からお店のイベントは任せられていたので、企画・準備・運営等で活かせるところはどんどん活かしていました。最初に自己紹介で言った通り、飲食業の魅力にのめり込んでいましたが、その反面、若干、自分の想いを押し付けがちなところもありましたが、「このイベントの成果は何か」ということを考えてイベントを開催出来ました。それは今も続く、大事な実践につながる読書会からの学びです。

また、副店長として他のスタッフの統括をする立場ですが、自分自身、社会人として成長してきた自分の経験から自分は「自分の仕事をする上でのやり方の工夫や姿勢を見て、感じて貰う事が若いスタッフへの教育」になると思って、「自分の仕事の仕方の改善=人財育成」という姿勢を貫いています。『経営者の条件』にも「部下、特に仕事のできる野心的な若い部下は力強い上司をまねる」(P.120)という言葉があります。もちろん、ただ自分の仕事を見せればいいというのではなく、若いスタッフが成長する過程で「これは見落としちゃいけない」と思っている点は必要最低限の指導はしますよ。そんな自分を見て何か感じてくれたのか、最近、若いスタッフに対して「こいつは最近いい仕事をするようになってきたかな」と思うことが頻出して来ていて、そんな彼ら・彼女たちを見るのは嬉しいですね。

○将来の夢としての「事業のマネジメント」

(筆者)冨永君の今のお話を聞いていると「自己成長としてのセルフマネジメント」と「マネージャーとしての仕事のマネジメント・人のマネジメント」を今の仕事の中で実践し、成果が少しずつ出ているという印象を強く受けました。さて、ドラッカーのマネジメントには最上位のマネジメントとして「事業のマネジメント」がありますが、飲食業に約30年身を置く冨永君もこの「事業のマネジメント」に関連した話、もっとストレートに聞くと飲食に関する夢があると思うのですが、ズバリ、将来の夢についてお聞かせ下さい。

(冨永)そうですね。夢というか目標というか判りませんが2つあります。1つは短期的なものです。それは、将来、かけはしが多店舗展開した際には自分が今の下川部代表の様にしっかりとこのお店を守っていきたいです。下川部代表そして、このかけはしには入社以来、本当に数多くのことを学ばせて戴いているので、恩返しの意味もあり、このかけはしを守り、更に多くの皆様に愛されるお店にしたいです。

もう1つは夢ですが、最終的には自分が飲食業や人生(含む、読書会)で学んだことを全て注ぎ込んだお店をやりたいです。八谷君、その暁には旭川ご出身の奥様と是非、一緒に来て下さいね。その前にまず、かけはしに(笑)。

○ともかく読んでみよう

(筆者)楽しかったインタビューもいよいよ終わりに近づいて来ました。このDラボWebにはFT、読書会に既に参加している方以外にも「ドラッカーって難しそう」、「読書会って何」、「読書会って参加ハードルが高いな」と思って読んでいる方々もいらっしゃいます。そんな方々に対して冨永さん、最後にメッセージを戴けますか。

(冨永)2つお伝えしたい事があります。1つは読書会こそ「勉強嫌い・本嫌い」の方に参加して欲しいという事です。読書会は一般の人がイメージする「本そのものを勉強する場」ではなく、「ドラッカーの言葉を『道具』として使うことを知る場」なので、誰でも参加でき、本人のやる気さえあれば、人による形や差はあれども成果につながります。もう1つお伝えしたいのは関連したことになりますが『経営者の条件』の「あとがき」の翻訳者の上田惇夫先生の以下の言葉です。「ともかく何ページとかでもよい。読んでいただきたい。面白いはずである。即日役に立つだけでなく、思い当たることばかりである。そして何よりも興奮させられるはずである」(P.230)

 「あとがき」ではありますが、読書会に苦手、敷居が高いと感じられる方は是非、最初に読んでいただきたい言葉です。

(筆者)冨永君、今日はいろいろとお話ありがとうございました。GWに再会した際に冨永君、中学時代の同期と今はほとんど親交がないというし、うちの中学、同窓会もやっていないようなので、私も今、付き合いのある範囲は限られていますが、このかけはしで是非、ミニ同窓会やりましょう。代表の下川部さんもその暁には冨永君をオフにしてくれると言っていましたよ(笑)

(冨永)八谷君、こちらこそありがとうございます。今後とも、これを機会に宜しくお願いします。そしてもちろん、札幌ご帰省の際にはこのかけはしを御贔屓に!

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八谷 俊雄

八谷 俊雄

1966(昭和41)年、札幌市生まれ。北海道大学卒業後、現在も勤務している某エネルギー会社に入社。地方機関(札幌・青森・名古屋)、本社(東京)各部署、出向で様々な業務を経験。2008(平成20)年春から開催されている東京での「実践するマネジメント読書会」に参加。仕事・学び(ドラッカー等)・プロボノ(東北社会起業家支援)・同窓会(高校・大学・大学院)活動の「四刀流」の傍ら、趣味である旅行(国内はプライベート・出張等で国内は47都道府県全て、海外は約30か国を訪問)を旭川市出身の妻と楽しむ。

“読書会それぞれの出会い(その4)-37年ぶり再会の友人は何とドラッカリアンだった”への2件のフィードバック

  1. 瀬川 智美子 より:

    行くたびに居心地のよいかけはしさん。細かいところまで心が届かなくても仕方ないほどにいつもたくさんのお客さまで賑わっているのに、冨永さんをはじめスタッフの皆さまの満面の笑顔とおもてなしには少しのほつれもなくて素晴らしいお店だな、また来たいなと毎回思います。今回の八谷さんの記事を読み、かけはしさんがなぜあれほどまでに居心地のよいお店なのか、繁盛真っ只中でありながらもスタッフさんたちは混乱することなくイキイキとお客さま第一でいられるのかの秘訣がわかったような気がします。かけはしさんはよくマネジメントされた組織だからなのですね。ガッテン!! 冨永さんの己に向き合い自己開発に励む姿勢と若いスタッフさんをおもいやる心意気に胸を打たれました。素晴らしいインタビュー記事、ありがとうございます。

    • 八谷 俊雄 八谷 俊雄 より:

      瀬川さん コメントありがとうございます。
      私は多分、瀬川さんほどはかけはしさんに伺っていないし、今の冨永君についてはむしろ瀬川さんの方が詳しいと思うのですが、37年ぶりに出会って、かえって白紙の状態で彼の話を聞いたからこそ、かけはしさんの素晴らしさを感じたままに書けたのかなと思います。(稚拙な表現だらけですが)今回の記事にもちらっと書きましたが、次回は代表の下川部さん編です。どんな話が飛び出すかお楽しみに!

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