読書会それぞれの出会い(その5)-「日本酒」への恩返しとしての読書会


前回(読書会それぞれの出会い(その4)-37年ぶりに再会した友は何と「ドラッカリアン」だった)の冨永浩靖さんへのインタビューの節々に出てきた札幌等のドラッカリアンが多く集う飲食店「活食・隠れ酒蔵 かけはし 北2条店(以下、「かけはし」)」の代表で、現在、「実践するマネジメント読書会®(以下、「読書会」)かけはし読書会」のファシリテーター(以下、「FT」)を務める下川部康雄さんにお話を今回うかがいました。

○日本酒との出会い

(筆者)下川部さん、今日はご多忙の中、お時間をいただきありがとうございます。下川部さんは私のFTの先輩でもありますが、実は副店長の冨永君同様、同じ歳でもあり、更に言うと私の大学時代の悪友の高校の部活(サッカー)仲間という事で縁を感じています。下川部さんに初めてお会いしたのは、覚えていらっしゃらないかもしれませんが、2012年12月に東京で開催された佐藤等先生が主宰する勉強会「ナレッジプラザ(以下、「ナレッジ」)」のサミット(札幌・旭川・函館・帯広・東京のナレッジ仲間が年1回集うイベント)でしたが、きちんといろいろとお話を聞いた事は実はなかったので、今回は様々なお話がうかがえることを楽しみにしています。

 かけはしさんと言えば、私だけでなく、お店を訪ねる全てのお客様が「美味しい料理と日本酒を楽しめるお店」というイメージを抱いていると思うのですが、まず下川部さんの日本酒との出会いについて簡単に教えて戴けませんか。

(下川部)そうですね。私は高校卒業後、大学受験浪人をしたのですが、結局、大学進学せず浪人中からアルバイトをしていた会社に社員希望でフリーターとして働く決意をし、19歳で飲食業の道に入り、以降、30数年現在に至っています。日本酒そのものとの出会いは25歳の時です。その頃は朝7時まで営業の小さな居酒屋で店長をしていました。お客様に同業者が多く、その中の1人の日本酒を沢山扱う居酒屋店長さんから酒屋さんを紹介していただき、色々と教わりました。その中でその頃はやっていた「上善如水(じょうぜんみずのごとし:新潟県南魚沼郡湯沢町の白瀧酒造のお酒)」の上のクラスの日本酒の「緑端渓(りょくたんけい:同じく白瀧酒造のお酒)」の味に感動しました。それ以降、すっかり日本酒の魅力にハマり、今でも日々勉強しています。

○紆余曲折を経て、「かけはし」開店そしてドラッカーとの出会い

(筆者)具体的なご経験の違いはありますが、下川部さんも先日お話を聞いた冨永さんと同様の経緯で飲食業そして日本酒に「惚れ込んで」いったのですね。ちなみに今のかけはしのご繁盛までにもいろいろあったのでしょうね。

(下川部)八谷さんも東京の会社の近くや帰札時にすすきのに呑みに行けばわかると思いますが、同じ場所に行っても、飲食店って結構、移り変わり(開店・閉店)が激しいものです。同じように私もいろいろな店舗展開の運営会社の役員をつとめたり、独立して様々なお店を立ち上げ・潰してきまして、2005年(当時38歳)に沢山の人たちのご縁で「かけはし(当時はすすきの)」を開店しました。

(筆者)様々なご苦労があったのですね。そんな中でドラッカーというか読書会とどの様な出逢いがあったかについて教えていただけませんか。

(下川部)その頃、私は「もっと学ばなくては」という思いが強く、様々な勉強会に顔を出していました。そんな勉強会の1つが佐藤等先生が主宰されているナレッジでした。今でもそうですが、私がナレッジに入った頃の活動展開の柱の1つはドラッカーでしたが、最初は読書会には参加していませんでした。

 その後、すすきの1店舗のみの経営で店長が育ちつつありました。そんな時、経営者仲間から「あえて現場を任せることでしか、現場責任者の意識は高まらない」と言われ、店長に店の運営を任せることとしました。その結果、夜の自由な時間も増えたので、ナレッジとの関わりも深くなり、その時のナレッジの仲間が沢山読書会に参加していたので、「行ってみようか」と思い、読書会に参加しはじめました。

 実際に参加してみると、自分の経営課題に対して腹落ちすることが多々あり、「経営改善に役立つ」と思い、継続参加していましたが、その後、FT養成合宿ゼミ(3期)が朝里(小樽市)で開講される事となり、既にFTとなっていたナレッジ仲間の堀内明日香さん(元宝塚歌劇団)のすすめもあり、参加することにしました。

(筆者)もう少し、FT養成合宿ゼミ参加のより具体的な理由について教えていただけませんか。

(下川部)はい。2つ理由があります。一つは自分を長年育ててくれている「日本酒への恩返し」でした。日本酒に巡り合い、様々な人たちとの出会いの中で本当に自分は成長することが出来ている。しかし、最初に日本酒について教えてくれた酒蔵・お酒屋さんなどの経営者が代替わりして、経営にご苦労されているのを見て、「読書会開催」という形(FTゼミ修了生は何らかの形で読書会開催が期待されている)で恩返しがしたかったのです。

 もう一つの理由はまだまだ自分は経営者としてもっと成長したかったので、その「道具」としてドラッカーをより深く学びたかったからです。ナレッジの仲間のうち、すでに何人かFTとなっていて、その人たちに話を聞くと「ドラッカーの読み方が根底から変わる」と言われました。

 実際にゼミに参加してみて、ハードでしたが、読書会参加時で感じた「自ら学んだことが身につき、習慣となる」ということをどんどん実感するようになりました。FTゼミ修了後、2013年からFTとして読書会を始めたのですが、読書会前に準備段階で読むので、自分の実践とドラッカーの結びつきを深く考え、具体的にどう行動に落としたら良いか、参加者として読書会に出ていた時より「思考→行動→振り返り(自己フィードバック)」が習慣化しました。

(筆者)なるほど、私も一応、FTですが経営者としての下川部さんの言葉には重みを感じます。今の下川部さんの言葉でもすでに出ている部分がありますが、改めて読書会に参加者として、そしてFTとして参加・運営して良かったことを教えて下さい。また、下川部さんが考える「ここがドラッカーを学ぶおすすめポイント」も教えて下さい。

(下川部)そうですね。以下の3つのことがらが定期的(継続的)に学べることだと思います。毎回、その都度テーマは違いますが、定期的に①自分で「考える」というインプットをすること、②読書会の場で「コメントする」というアウトプットをすること、③他参加者のコメントを聞くこと(「耳勉」)により、自分にない切り口を学べることですかね。

 また、ドラッカーを読めば読むほど感じることなのですが、ドラッカーからの学びはどの人にもあると思いますが、特に「経営者の人には学んで欲しい」と思います。ドラッカーの本にはマネジメントに関する原理・原則の言葉が満載ですが、経営者として読書会に参加しつづけるうちに、「経営者として(良くも悪くも)経験したことが必ず書いてある」と感じました。

 例えば、今、ベーシック読書会で指定図書として使っている『経営者の条件』で最初の方の部分で言うと、「成果は外にある」「組織の取り組むべき成果の1つとしての価値への取り組み」なんで、私たちのお店で言うと好例でしょうか。具体的にはお客様の「美味しいと思っていただける」好みは違っているので、メニュー数は多いことは一般的に言う効率だけを考えると「非効率」ですが、結果的には来店されたお客様が「美味しかった。ありがとう。また来ます。」ということでリピーターのお客様が多くなっています。

 

○将来の夢、そして「人生の経営者」へのメッセージ

(筆者)ドラッカーと経営者としての実践のかかわりについて具体的なお話をいただきありがとうございます。経営者として読書会に参加者・FTとして関わり、日々の実践の「フィードバックの道具」としてドラッカーを活用している下川部さんですが、最後に経営者としてではなく、FTとしての「夢」について何かあればお話をお聞かせいただけないでしょうか。

(下川部)そうですね。これは2つとも私の仕事から広がる夢なのですが、1つは「ホステス読書会」の実現。これは「繁華街」に対する恩返しと言えるでしょうか。八谷さんは勤務先が日本有数の繁華街である某エリアに近いからわかると思いますが、繁華街に繰り出すって楽しいものですよね。中でも、クラブって「繁華街の顔」で「非日常感」をお客様に最大限に感じていただく場で、その主役はママさんやホステスさんだと思いませんか。そういう彼女たちがドラッカーを学ぶと、クラブの「非日常感」という価値が増し、繁華街全体への好影響を与えると思っています。

 もう1つは先ほど話したFTになった理由の1つの「日本酒への恩返し」に関係することです。それは47全都道府県の酒蔵さんの方にFTになってもらい、読書会を開催してもらい、酒蔵さんやその地域を盛りあげていただく、そのお手伝いをすることです。そのきっかけはFT同期の仲間で2015年1月にいわゆる「大人の修学旅行」で私が以前よりお世話になっていた信州の某酒蔵を訪ねたことです。旅行そのものも大変楽しかったのですが、その酒蔵の経営者の方が読書会の話を目を輝かせて聞いている。それで、FT合宿ゼミ受講をすすめたところ、幹部の方が実際に受講し、FTとなり、実際に今、社内(酒蔵)内読書会をしているのですが、その後、職場に活気が出て来て、業績にも好影響が出ていると言う。その話を聞いて、日本酒が大好きな佐藤等先生やFT仲間と全国を回り、「ドラッカーから学び・実践することの普及」と「大好きな日本酒を楽しむ」ことをかねて、全国の酒蔵さんを盛り上げたいなと思いました。今、日本人に日本酒の良さが見直されているだけでなく、外国人の方々にも日本酒の魅力がどんどん伝わり始めている。酒蔵さんが元気になれば、様々な面で「成果」が出てくると思います。

(「大人の修学旅行」で見学の酒蔵の案内の様子)

(FT同期との「大人の修学旅行」の一コマ)

(筆者)下川部さんらしい2つの夢を語っていただきありがとうございました。FTや読書会の仲間はどこにいても、またはじめてお会いした方でも旧知の仲間の様に親しく過ごすことができる。もし、下川部さんの夢が実現すれば、全国の酒蔵やクラブのホステスさんに会いに行き、ドラッカーを肴に語り合い楽しい一時を過ごすことができる。そんな一時、考えただけでワクワクします。最後にこのページを見ている方の中には「ドラッカーって誰?」、「読書会って参加するのにハードルが高そう」と思って見ている人もいます。そんな方々に向けて、下川部さん、本当に最後になりますがメッセージがありましたらお願いします。

(下川部)さきほど、私、経営に関する原理・原則が全て書かれていて、「経営者にこそドラッカーを読んで欲しい」と言いましたが、よくよく考えると、どの人も「人生の経営者」なんですよね。私の飲食店の経営同様、どの人も人生で紆余曲折があったはず。なので、ドラッカーの本を読むと、仕事のことだけでなく、自分の生活・人生等についても心に染みる部分が絶対にあると思うので、読書会に参加してインプット・アウトプットそして実践というサイクルを繰り返していけば、自分の人生を必ず変える事が出来ると思うので、一緒にドラッカーに触れてみませんか。

(筆者)下川部さん、今日はご多忙の中、本当にありがとうございました。最後の「全員、人生の経営者』であり、自分の人生を変えることができる」ってグサッと来ました。札幌に帰省のときはまた美味しい日本酒と食べ物を味わいにかけはしさんに来ます。また、前回インタビューした冨永君も含めて、3人、同じ歳で「人生のハーフタイム」が終わったばかり。「人生後半戦」、頑張りましょう!

 

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八谷 俊雄

八谷 俊雄

1966(昭和41)年、札幌市生まれ。北海道大学卒業後、現在も勤務している某エネルギー会社に入社。地方機関(札幌・青森・名古屋)、本社(東京)各部署、出向で様々な業務を経験。2008(平成20)年春から開催されている東京での「実践するマネジメント読書会」に参加。仕事・学び(ドラッカー等)・プロボノ(東北社会起業家支援)・同窓会(高校・大学・大学院)活動の「四刀流」の傍ら、趣味である旅行(国内はプライベート・出張等で国内は47都道府県全て、海外は約30か国を訪問)を旭川市出身の妻と楽しむ。

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