絵で見るドラッカーの人生【1975年】
マネジメントの原点
マネジメントは豊穣な大地にしっかりと根をはる大樹に似ている。地中深く根を張り、自律的でありながら他の生命体とともに生きている。多様な生命に満ちたこの世界の縮図である。(中略)
世の中には誰もが耳を傾ける経営論者が三人おり、それが、マイケル・ポーター(競争戦略論の大家)、トム・ピーターズ(『エクセレント・カンパニー』で著名なコンサルタント)、そしてドラッカーだとする見解を受けて、それを肯定したうえで、この二人と自らの根本的な相違を書いている。
確かに、ポーターもピーターズも優れた経営学者である。経営知識のイノベーターであり、今なおトップランナーであることを疑う者はいない。しかし、経営学者は、程度の差はあれ経営を一つの窓にして社会全体を見ようとする。経済学者が経済を窓にして世界を見、物理学者が物理現象を中心に世界を把握しようとするのと変わるところはない。
ところがドラッカーは、自らはそうでないと言う。それというのも、自分はいかにしても払拭不能な衝撃的原点がある。第一次世界大戦とそれに続く文明の崩壊がそれであったと言う。
簡単に言えば、ドラッカーは経営学を志してマネジメント分野を開拓したわけではなかった。実際にドラッカーの学研としての来歴を見る限り、経営学に関する専門性はまったく見当たらず、中心は法政治分野にあった。あくまでも、自らの原点的体験である文明の崩壊から再生に至る鍵となるコンセプトを探求した結果として、半ば偶然にも、ドラッカーはマネジメントの苗木を育てる役割を担うことになったのだった。
筆者はインタビュー取材のため自宅を訪れたことがあるが、書棚には経営書のたぐいはまったく見当たらなかった。目についたのは、文学書、歴史書、美術書だった。書斎とは精神が可視化された空間である。書斎がドラッカーという人の成り立ちを雄弁に語っていた。『ドラッカー入門 新版』より
五月女 圭司
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