2017年9月のナレッジプラザ函館ビジネス塾。その日の講師・佐藤等先生のお話に引き込まれ大きくうなずく。目があった佐藤先生からふいに問われる。「瀬川さん、成果とは?」「う・・・っ」ことばに詰まる。佐藤先生は優しく微笑み「ドラッカー教授のいう “成果” とは “外の世界における変化” ですね。『経営者の条件』の中には “組織の中に成果は存在しない。すべての成果は外にある” と書かれています」
(そういえば、そうだった・・・汗)
聞けば思い出せる。でも、使えるまでにはなっていない。「これが “知識と情報は違う” ということか」私はとっさに読書会ファシリテーター養成講座の確認テストで満点を目指し暗記していたドラッカーさんのことばを思い出す。
知識は、本の中にはない。本の中にあるものは情報である。知識とはそれらの情報を仕事や成果に結びつける能力である。『創造する経営者』
このことばを引用した『実践するドラッカー[思考編]』(4ページ~)のなかで佐藤先生はお医者さんの例をあげています。医学部で学び情報や技術を身につけ、実習を行い、卒業試験に合格し、医師国家試験を受け、医師免許を取得しても、すぐにお医者さんになれるわけではない。(必要な情報を身につけた状態)。 その後研修医として二年間、医師として欠かせない基本的かつ最低限の技能を培うことにより、初めて患者さんの治療ができるようになる。(真に必要な知識を得た状態)。
単に「知っている」状態から「わかった」状態にもっていき、実際の行動を通して仕事につなげていく。そのような能力を身につけて初めて、知識を得たというのです。『実践するドラッカー[思考編]』5ページ
ドラッカーさんのことばは理解する対象ではなくて、道具として使うもの。読書会は自分にとって必要なことばに出会う場所。2014年3月にドラッカーさんの本を初めて手にして以来、意識して過ごしてきたつもりだったのに、まだまだだなぁ。自分の足りない部分に気づいた私は後日『経営者の条件』の中から佐藤先生が話していたことば “組織の中に成果は存在しない。すべての成果は外にある” を探しだしオレンジ色の太いペンでグググっとマーキング。(31ページにありました!)
「”成果は外にある” ってホントかなぁ? ヨシ、ものは試しだ。徹底的に使ってみよう!」
バスガイドは廃棄対象だった
さて「お試し」はどこでしようかしら。思い当たる所がありませんでした。2014年に函館で読書会に出会った私はその面白さにどっぷりはまり「この学びの場を青森につくりたい」と思い、行動にうつしました。2015年9月、吉田麻子さんをファシリテーターとして迎え青森読書会立ち上げ。2016年春からは「自身がファシリテーターになることで青森読書会を継続的な学びの場としていこう」と決め、養成講座へ通いはじめていました。その年の夏のあたり、父が体調を崩しました。お医者さまから「新しい年は迎えることができないかもしれない」と告げられます。当時、パソコンインストラクター、バスガイド、インターネットラジオのパーソナリティ、司会、ボランティア活動など様々なことを行っていた私はオーバーヒートを起こしそうでした。ドラッカーさんの時間管理に「まずは、やらなくていいことを決め重要なことに集中できる時間を確保する」というのがあります。廃棄は時間管理における効果的な手段です。
第一に、する必要のまったくない仕事、何の成果も生まない時間の浪費である仕事を見つけ、捨てることである。(中略)第二に、他の人間でもやれることは何かを考えることである。『経営者の条件』58・59ページ
父の看病とファシリテーターの勉強以外は私じゃなくてもできそうです。代わりはいる。思い切って廃棄することにしました。ひとつだけ心に引っかかったのはバスガイドの仕事でした。「何の成果も生まない時間の浪費である仕事」ということばと照らし合わせると、なんとなく当てはまらないような気がします。バスガイドとしての仕事には少なからず手応えを感じていました。生産性もあるように思えます。2016年10月の読書会サミットin青森のとき「青森☆観光ミニツアー」なるものを行いまして、「バスガイドは廃棄します」と宣言していた私の案内を直に聞いた佐藤先生が別れ際にぽつりとおっしゃった「瀬川さんがバスガイドを廃棄するのはもったいないなぁ」ということばも心に残っていました。気になりはしましたがいったんやめてみようと決めました。本の中にこんなことばが書かれてあったからです。
不必要かつ非生産的な時間が多いことについては、誰もがよく知っている。しかし時間を整理することは恐れる。間違って重要なことを整理してしまうのではないかと恐れる。だがそのような間違いは直ちに訂正できる。整理しすぎればすぐにわかる。『経営者の条件』63ページ
さて、そろそろ2017年9月に戻ります(笑)
そんなこんなな経緯で父のそばに付き添っていたのですが、父は2016年12月他界。「整理しすぎればすぐにわかる」ドラッカーさんのことばのとおり整理しすぎたことはすぐにわかりました。様々なことをお断りしてきたなかで、バスガイドの仕事だけは依頼をいただき続けていたからです。「廃棄対象だったバスガイドだけどこんなに求めていただけるならまたやってもいいかな」と思った時期と、ビジネス塾で佐藤先生からの問いかけに答えられなかった出来事が重なったのです。
お断りしていた仕事を再び引き受け “成果は外にある” をバスガイドの現場で実践することに決めました。
(つづく)

瀬川 智美子

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