第6章「意思決定とは何か」(その2)二つの実例
二つの実例
ヴェイルとスローンの意思決定は、それぞれまったく異なる問題を扱い、それぞれに際立って特殊な解決策をもたらしたにもかかわらず、いくつかの重要な共通点をもっていた。すなわちそれらの意思決定は、すべて最高の概念的水準において問題と取り組んでいた、いずれも何についての意志決定かを検討して原則を明らかにした。換言するならば、それらはすべてその時々の個々のニーズに対する対応としてではなく、戦略的な意思決定として取り組まれていた。
それらの意思決定はすべて社会定期なイノベーションをもたらすものだった。いずれも基本的な議論を引き起こすものだった。事実彼ら二人が行った五つの意思決定はすべて、当時誰もが知っていたことと正面から対立するものだった。『経営者の条件』P163
まだエンジニアだった頃、関連会社に出向した時期がありました。50人くらいの端末技術に特化した組織で、フィールドに導入された端末の修理対応、不具合対応と、新しい端末の開発を内製化するミッション。そこでは毎週課長職が「経営会議」という、ボス、役員、課長職が出席する重要な会議。小さい組織なので課長が実務と方針報告を、毎週、役員に行います。
その会議中のできごと…役員が目の前で、ボスにしかれれているのを何度か見たことがあります。
「その事象は、現地に行って確認したのか?」
という問いに対する答えに対するもの。
「確認してません…。」
「今すぐ現場へ飛べっ!」「お前たちが自分の目で確認がとれていないものを報告するな!」
という会話。その後、「虚偽の報告によって経営の舵が切れるか!」と激怒されたのを今でも覚えています。
その会話を通して、私たちは「自分の目で確かめる」という習慣と、経営者の「意思決定の重さ」を知らなければならないこと学んだのです。
戦略的な意思決定
問題の解決だけを重視してよい意思決定は、さして重要ではない日常の意思決定である。重要な意思決定は、戦略的な意思決定である、戦略的な意思決定には状況を把握することが必要である。とドラッカー教授は言います。
ベル電話会社のヴェイル、GM(ゼネラルモーターズ)のスローン。
昨年の4月から現場を離れて、本社の事業企画部という部署に配属され、日々の緊急な意思決定を強いられることは少なくなりましたが、その分、次につながる「事業を企画する」というミッションの重さ、意思決定の重さを改めてこの歴史上の人物から気づかれました。
(つづく)
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五月女 圭司
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