横浜読書会から生まれた小さなイノベーション、その名も『TENTOミュージカル』。前回の記事では、TENTOミュージカル誕生から初演までのストーリーをご紹介しました。今回はその続報をお届けしたいと思います。
(前回の記事から読みたい方はコチラからどうぞ!)
「イノベーション」って言葉はよく聞くけど、実際どうしたらいいのか全然わからない。実際、自分の会社で使えるもんなのか、まったくイメージできない。そんな風に思っている方、意外に多いのではないでしょうか。
実は一般に思われているほど、イノベーションは難しいものではありません。イノベーションには原理があり、その原理に従って仮説検証をしていくことで、誰にでもイノベーションは起こせるのです。
ただ、ひとつ重要なこととして、イノベーションには仮説検証の実践がつきものだということを強調しておかなければなりません。
つまり、「意義ある失敗」を積み重ねる勇気が必要であり、その本質は行動であるということです。
われわれの挑戦も、おそらくこれから幾多の「失敗」に見舞われることでしょう(笑)
それをただの失敗ではなく、「意義ある失敗」とするために、われわれはドラッカーの言葉を活用し続けています。
失敗も含めて、われわれの挑戦を記録に残していくことで、誰かひとりでも「イノベーションに取り組もう!」と勇気をもってくれたら。そんな思いから、この続編記事を書いている次第です。
さて、前置きはこれくらいにして、そろそろTENTOミュージカル物語の続きをご紹介しましょう!
これは余興なんかじゃない!
前回、渋谷タロスでの初演を終えたTENTOミュージカル。はじめは「どうなることか?」とドキドキしていましたが、おかげさまで予想をはるかに超える大好評で幕を閉じました。
そして、ありがたいことに「うちでも出来ないか?」というお話が3件も! 正直、われわれのテンションはかなり上がりました(笑)
ただ、話を聞いているうちに、徐々にメンバーの顔が曇りはじめます。いただいたお話は軒並み、忘年会や新年会の余興のような内容ばかり…。
「これって、披露宴の余興に芸人さんを呼んでる感覚だよね…」
決して芸人さんや余興のことを、悪くいうつもりはないのですが、われわれがTENTOミュージカルに感じていた大きな期待や可能性からすると、「正直がっかりした」というのが素直な気持ちでした。
ビジネス的な側面から考えても、余興という枠でTENTOミュージカルを続けることは難しいということが、われわれには見えていました。
余興の相場をくわしく調べた訳ではありませんが、ざっと検索してみたところ、プロの芸人さんを呼んでも相場は数万円から。これではTENTOミュージカルに出演してくれる俳優さんたちのギャラすら、充分に払うことができません。
複数の俳優さんたちが個性のハーモニーを繰り広げるというミュージカルならではの強みが、ビジネス面では弱みとして表出してしまう現実があるのです。
「このままじゃ、どこかで行き詰るよね…」
内輪でそんな会話をしている雰囲気がなんとなく相手にも伝わったのか、いただいたお話は1つ、また1つと立ち消えになって行きました。
恩返しのためのイベント?
そんな中、ひとりだけ「TENTOミュージカルをうちのイベントでやりたい!」と言い続けてくれた人がいました。Dラボのサイトでライターとしても活躍する、「しおさん」こと塩崎 俊樹さん。(しおさんのDラボ記事はコチラから)
飲食店の強み活用プロデューサーとして大活躍する彼の、「ブログ2000日突破記念パーティー」で、TENTOミュージカルを上演したいと声をかけてくれたのです。
しおさんは数年前、事業がなかなかうまく行かなかった時期にドラッカーと出会い、それをきっかけにドラッカーの「集中する」の一言をブログを通して実践し続けてきました。
1日あたり約3時間という時間をブログに割き、1日も休まずにブログを書き続けたところ、いつしかファンが増え、お仕事も軌道に乗るようになりました。ブログ連続投稿1000日を迎えるころには、しおさんファンが「ブログ1000日記念パーティーをやろう!」を企画してくれるまでに。
そんなしおさんですが、ブログ1000日を超えたあとは、ブログを書き続ける目標を少しだけ見失ってしまった時期があり、とても苦しかったのだそうです。
苦しみの向こうに何が見えたのか。ブログ2000日を迎えたとき、しおさんが感じたのは「周りへの感謝の気持ちだった」と言います。
記念すべきブログ2000日記念パーティーのテーマは「恩返し」。
そんなしおさんの思いを聞かせてもらううちに、いつの間にかわれわれも、「今回ばかりは余興でも何でもいいじゃないか!」と思うようになりました。
しおさんがくれた、せっかくのチャンス。
「先のことはよく分からないけど、とにかく今回はやろう!」
そんな風に、チームはまとまって行きました。
予期せぬ成功。ブログの反響がもの凄いことに!
そんな中、予期せぬことが!
DラボのサイトにTENTOミュージカルの記事を投稿させていただいたところ、、、
「初日だけで400アクセス越え」
「初日だけで月間ランキング1位」
「総合ランキングも3位に上昇(サイト開設からの累計なのに!)」
「いいね!の数も400件超え」
と、まったく予想もしていなかった、Dラボ始まって以来のとんでもない “事件” が起きたのです。
インターネット業界の用語では「バズる」なんて言い方をしますが、まさしくそんな感じで、SNSでも沢山の方にシェアしていただき、沢山の応援コメントもいただきました。
ドラッカーは「イノベーションの機会は7つある」と言います。それら7つの機会のうち1つ目に挙げられており、最も信頼性と確実性が高いのが「予期せぬことの生起」。つまり「予期せぬ成功」を見つけ、活用することです。
「それらのものを(見落とすことのなきよう)、意識的かつ組織的に探せ」とドラッカーは言っているのですが、今回はあまりに反響がありすぎて “意識的” に探すまでもなく、誰の目にも明らかな形で、予期せぬことが起こりました。
まったく根拠はありませんが、もし神様がいるなら、これはきっと「Goサイン」に違いありません(ポジティブ勘違い…笑)
この「予期せぬ成功」を、いかにイノベーションの機会とするか。分析し、知覚し、活用するか。
しおさんがくれたチャンスを機会とし、われわれが今回の公演を通して行うべきことが、徐々に固まっていきました。
エンターテイメントは一つの知識体系である。
公演当日。
会場には130名を超える人が集まりました。パーティーの開始から1時間が経ち、参加する皆さんの会話が最高潮に盛り上がったころ。
いよいよわれわれ、TENTOミュージカルの出番です。
私のつたない言葉で語るより、実際の様子を見ていただいた方がはるかに伝わると思うので、公演の模様はぜひムービーをご覧ください!
(5分ほどの短い動画です)
「なぜ、場がひとつになって盛り上がれるのか?」
「なぜ、Dラボに書いた記事があれほどバズったのか?」
理由はまだ分かりませんが、当日のパーティー会場で沢山の方々とお話しているうちに、私の中ではTENTOミュージカルの今後につながる、ひとつの大きなヒントが見えたように思えました。
「エンターテイメントの中には、いくつかの原理が散りばめられており、おそらくひと固まりの知識体系である」
ドラッカーのマネジメントが原理によるマネジメントであるように、TENTOミュージカルによって起こった予期せぬできごとも、きっとエンターテイメントの原理に沿っていたからこそ起こった、小さな奇跡なのだと気付いたのです。
エンターテイメントという知識体系を分析し、その知識の新たな活用方法を見つけること。そうすることで「ビジネス × エンターテイメント」や、「飲食店 × エンターテイメント」のような、新たな組み合わせを創造できる可能性が高まります。
まさに新結合、イノベーションそのものです。
今回の公演をきっかけに、ありがたいことに次のお話もいただきました。どうやら次の機会も、われわれの希望は叶わず、「余興」のような形でお呼びいただくことになりそうではあるのですが…(笑)
しかし、われわれが次の機会を通して明らかにすべきことは、非常にクリアです。だからこそ、「行くべき余興」と「行くべきではない余興」もまた、明確に見分けることが出来ています。
成功が約束されている訳ではありませんが、前よりほんの少しだけ、TENTOミュージカルの成功に近づけたのではないかと思える、第2回公演になりました。
横浜読書会から始まった小さなイノベーションは、次のステージへと続いていきます。



鹿島晋

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