絵で見るで見るドラッカーの人生【1990年】
営利と非営利を区別しない、しかし同じものとして片づけない
企業、乱気流、企業家精神、イノベーションと、ドラッカーはマネジメントの分野を次々と広げていきました。
もともと、マネジメントは事業を行い経済的な成果をあげること、スタートラインは営利を目的にしたところにありました。しかし、ドラッカーは、経済を超えた「非営利」の世界にもマネジメントはあるはずだと考えます。
そして、世界がグローバル化すればするほど人はコミュニティを必要とするし、非営利組織の役割の増大を予告したのです。「これからは非営利組織がもっと大きくなっていかなければならない。その数が横ばいなのは、アメリカ社会の恥だ」とまで言い切りました。
ドラッカーは会社に勤める人も、非営利団体に所属する人も区別をしませんでした。たとえば、本書に挙げられた以下のような姿勢は、どの世界でも必要とされます。
「成果をあげる人とあげない人の差は才能ではない。いくつかの習慣的な姿勢と基礎的な方法を身につけいるかどうかの問題である」
「仕事を変え、キャリアを決めるのは自らである。自らの得るべきところを知るのは自らである組織への貢献において、自らに高い要求を貸す課すのも自らである。飽きることを自らに許さないよう予防策を講じるのも自らである。挑戦し続けるのも自らである」
ただし、営利と非営利をまったく同じものとして片づけることもしませんでした。そして、非営利組織は利益という結果を求めないからこそマネジメントすることが難しく、それゆえマネジメントが必要だと考えたのです。実際、非営利組織には、営利組織にはない苦労があります。それはいかにして継続的に寄付を集めるかということだったり、ボランティア精神だけでは成り立たないということだったり。
本書には、こんな話も出てきます。会社員に 「会社で働きすぎだから、ボーイスカウトでボランティアをしなさい」というと納得するのに、牧師さんに「病院の理事をしなさい」というと、忙しいから無理だというのです。
こうした事情は、実際に非営利組織にかかわらなければわかりません。ドラッカー自身、教会やガールスカウトをはじめ、多くの非営利団体(NPO)のコンサルティングを無償で行っていました。
本書は、非営利組織のマネジメントに必要なことはすべて書いてあるという、長く読みつがれるべき非営利組織のバイブルです。『経営者の条件』とも重なる部部の多い、万人に役立つ方法論なのです。
ここでドラッカーファンの間で有名になったフレーズ「何によって覚えられたいか」のくだりを紹介しましょう。
「私が13歳のとき、宗教の先生が『何によって覚えられたいかね』と聞いた。誰も答えられなかった。すると『答えられると思って聞いたわけではない。でも50になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよ』といった」『P.F.ドラッカー完全ブックガイド』より
※この情報は『ドラッカー入門 新版』p.281~の「ドラッカー年譜」をもとに制作しています。より深い背景の理解には同書をお薦めします。
五月女 圭司
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