絵で見るで見るドラッカーの人生【1992年】
「読みたいところ取り」ができるのも魅力の一つ
1992年、経団連が中国の大学付属の日本研究所に日本語の本を送るというプロジェクトを行いました。広報部が担当したそのプロジェクトは、経団連会員企業の経営者が実際に本を購入し、サインして経団連経由で対象の日本研究所に届けるというものでした。
「日本の財界人が選んだこの一冊」というこの企画で集められた本のなかで、圧倒的に多かったのか、ちょうどベストセラーとなっていた本書『未来企業』でした。ドラッカーがどれだけ日本の経営者たちに読まれていたかがわかるでしょう。中国で現在活躍している人のなかには、きっと大学時代や、大学院時代に、日本の経団連の会員企業の経営者がサインして寄贈したこの本を読んだという人がいると思います。
では、日本の経営者はどうして本書を選んだのでしょう。「生き残る組織の条件」というサブタイトルが心に刺さったのでしょうか。経営者から支持される理由の一つに、ドラッカー本の“構成”が挙げられると思います。
本書の目次を見てわかるとおり、ドラッカーの評論集の多くは、①世界経済、②人(働く人)③マネジメント、④組織、という四部構成になっています。一見バラバラに見えるほど、話はいろいろなジャンルに飛んでいます。
①については「相互主義をもって国際経済を融合する基本原則とする流れは、好むと好まざるとにかかわらず、ますます貿易ブロック間の関係となってくる」と述べたかと思えば、②「(リーダーへ信頼とは)リーダーの言うことは真意であるということについて確信をもてることである」と言い切ります。③では、これまでの一世紀にわたる潮流が逆転し、今後は「経済の重心は大企業の重心は大企業から中規模企業に移る」と見通しています。
もちろんドラッカーの頭の中ではもともと描きたい絵があり、すべてつながっています。読者にとっては、必ずどこかに自分が今必要としている話が見つかります。「読みたいところ取り」ができるのも、ドラッカーの魅力なのではないかと思うのです。『P.F.ドラッカー完全ブックガイド』より
※この情報は『ドラッカー入門 新版』p.281~の「ドラッカー年譜」をもとに制作しています。より深い背景の理解には同書をお薦めします。


五月女 圭司
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