人生100年時代の先人:絵で見るドラッカーの人生【2000年】(1909〜2005年)


絵で見るで見るドラッカーの人生【2000年】

大ベストセラーは、ある一つの質問から生まれた『プロフェッショナルの条件』

本書は、その後『チェンジリーダーの条件』『イノベーターの条件』『テクノロジストの条件』と続く「はじめて読むドラッカー」シリーズの一作目にあたります。

これまでの著作を再編集するという構想は『非営利組織の経営』の刊行を目指してやりとりしていた1991年の頃から温めていたものでした。しかし、10年もの間、ドラッカーも私(上田惇生先生)も多忙のため、取り掛かれずにいました。それが、ある出来事をきっかけに再び動き出すことになったのです。

1999年、私(上田敦生先生)は2001年4月開学予定の「ものつくり大学」で教鞭を執ることが決まっていました。教員予定60名を集めて行なわれた顔合わせの会でのこと、立て続けに3人の方から、同じことを聞かれたのです。「『明日を支配するもの』がとても面白かった。次は何を読んだらいいでしょうか」と。

こうした質問を受け取ることはよくありましたが、実は、いつも答えに困っていました。そこで、すぐさまドラッカーと相談して、ドラッカーの世界の地図をつくることにしたのです。これから読もうとしている人、次に何を読むか迷ってるいる人のヒントになり、かつそれ自体が面白い本をまとめることにしました。

しかし作業を始めてまもなく、もう一つ扱うべき分野があることに気づきます。それは、一人ひとりの人間に関わる領域でした。とくに進むべき道を模索している若者たちに向けたメッセージがたくさんあったのです。

こうして、“ドラッカー的生き方・働き方読本”としての[自己実現編]が誕生しました。本書では、若手自身の働き方のみならず、若手を生かす組織やマネジャーの心得についても触れています。

「成果をあげるためには、強みを中心に据えて異動を行い、昇進させなければならない。人事においては、人の弱みを最小限に抑えるよりも、人の強みを最大限に発揮させなければならない」

「組織は、一人ひとりの人間に対し、彼らが、その制約や弱みに関わりなく、その強みを通して、ものごとを成し遂げられるよう奉仕しなければならない。このことは今日、ますます重要になっている」

今世界で起きていることから成果を出すための具体的方法まで、必要な要素が一冊に詰まっているいるからこそ、本書は多くの企業で管理職研修や新人マネジャー研修の指定図書に選ばれているのでしょう。

「わからなくてもいいは傲慢」三部作出版順へのこだわり「チェンジリーダーの条件」

この「はじめて読むドラッカー」構想に、ドラッカーと私(上田敦生先生)は夢中になって取り組みました。毎日のようにFAXをやりとりし、お互いすぐに返事を出していました。

『プロフェッショナルの条件』の日本での刊行直前には、目次とともに、ドラッカーから世界中の編集者に宛てて、こんな手紙が送られました。

1939年の『「経済人」の終わり』以降、1999年の論文「IT革命の先に何があるか」に至る私の全著作より、重要な章を選択編集した「ドラッカー読本」三部作、[自己実現編][マネジメント編][社会編]が日本のダイヤモンド社から、上田惇生氏編集で刊行されることになりました。すでに[自己実現編]の英文原稿がありますので、関心のある向きは私までご連絡ください。

これは、各地でドラッカーブームのようなものが起こっている中で、次に何を読んだらよいかという読者向けのドラッカー読本です。内容の選択も編集もきわめてすぐれたものです。

本書はドラッカー自らが世界中の出版社に営業をかけるほどのライフワークとなってくれたのです。

わが国では、発行の数日後には、ある大手企業が経営管理者全員に読ませたいと1000部を購入してくれたほどの大ベストセラーとなりました。

続いて追いかけるように刊行されたのが[マネジメント編]の『チェンジリーダーの条件』でした。三部作の構想当初、ドラッカーからの要望はたったひとつだけ。[マネジメント編]を[社会編]の前に持ってきてほしいということでした。

人間がいて社会があって組織があり、そしてマネジメントがある。そのようなつながりを考えれば、[社会編]→[マネジメント編]という順番で出版するのが倫理的でしょう。しかし、ドラッカーは、理解されない知識は意味がないといいます。常に読者が理解しやすい方法を探す、わからなくてもいいというのは傲慢、というのがドラッカーの考え方だったのです。

「個人」から「組織」そして「社会」へ。はじめてドラッカーの世界に触れる人でもとっつきやすい順番となりました。こうしてドラッカーファンの裾野も広がっていったのです。

チェンジリーダーとイノベーターとは?『イノベーターの条件』

『プロフェッショナル』『チェンジリーダー』『イノベーター』の三部作は、ドラッカーを理解するうえで必須と思われる著作から、私(上田敦生先生)が大きなかたまりを選定、編集し、ドラッカー自身が加筆・削除・修正を加えるという形でつくられたものです。三冊をまとめるまでに一年半、約500〜600時間を要した決定版ともいえるものです。

その最後がいよいよ[社会編]です。しかし、ドラッカーの世界に初めて触れた人からすると、「『プロフェッショナルの条件』は自己実現編だということはわかる。でも、なぜ『チェンジリーダーの条件』は社会編なの?」と思われるかもしれません。

『チェンジリーダーの条件』は、変化の時代におけるマネジメントに焦点を合わせた一冊です。とくに知識労働者は、かつてのようにマネジメントされる存在ではなく、方向づけのみされる存在。変化を自らリードする「チェンジリーダー」とならなければなりません。ドラッカーは、まえがき「日本の読者へ」の中で、「もはやマネジメントは専門的な機能ではない。一般教養である。一般教養とは、教育ある人間が、自らの役割を果たすために知っておかなければならないことである」と記しています。

一方『イノベーターの条件』は、新しい時代の社会、政治、経済、知識、教育の姿、激動の転換期における思考と行動の原理を書いたドラッカーの社会編です。社会を観察する社会生態学者として、今日の社会で「何が起こっていおるのか」「それは本当の変化か」「それは何を意味するか」を考えたものです。

『イノベーターの条件』のまえがき「日本の読者へ」は、このようなものでした。

「私は、日本の読者が、本書によって創造力をかき立てられ、ルネッサンスを担うイノベーターとなって、あおの戦後日本に匹敵する熱気ある社会を築かれることを祈念してやまない」

そう「イノベーター」とは、これから新しい社会をどうつくっていくかを考え、。担う存在なのです。だからこそ、ドラッカーは私たちが陥りがちな落とし穴を前もって示してくれます

「組織、制度、政策もまた、製品やサービスと同じように、生命を失ったあとも生き延びる。一度できあがったメカニズムは生き続ける」

「完全な制度を発明することはできない。理想的な仕事のための理想的な道具を発明しようとしても無駄である。なじみの道具を使ったほうがはるかに賢明である」

ここでもやはり、大きな社会の問題を指摘しつつ、「役に立たなければ意味がない」とするのがドラッカーなのでした。

『P.F.ドラッカー完全ブックガイド』より

※この情報はドラッカー入門 新版』p.281~の「ドラッカー年譜」をもとに制作しています。より深い背景の理解には同書をお薦めします。

 

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五月女 圭司

『人生を変えるドラッカー』を読んで「人生は変えられるよ!」と、神さまの声が聞こえた57歳の会社員。己と向きあうには師匠がいる。私の師匠はドラッカー教授の「ことば」。この「ことば」が自らを成長させてくれます。私のミッションは「人」と「音楽」と「ドラッカー」をつないで笑顔あふれる街を創ること。 何によって覚えられたいか? 「いつも、どんなときでも笑顔の人」と覚えられたい!

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