まもなく令和の時代を迎える。
ドラッカーはイノベーションに関して、「イノベーションの7つの機会」というヒントを提示している。その第5の機会に、「人口構造の変化」というものがある。
先日、国立社会保障・人口問題研究所は2040年までの「世帯数の将来推計」を公表した。国勢調査の結果をもとに算出する推計。都道府県ごとの推計は1966年以降、原則5年に一度実施される。日本経済新聞では「将来の社会の姿を見通す基礎的な推計として位置付けられている」と説明する。
人口の変化ではないが、世帯の変化も重要なイノベーションの機会になると思う。
その中身を見てみよう。北海道の数字を紹介したい。2015年の一般世帯の家族類型構成。
・単独世帯 37.3%
・夫婦のみ世帯 24.0%
・夫婦と子から成る世帯 22.7%
・一人親と子から成る世帯 9.3%
・その他の世帯 6.7%
ちょっと前までの「標準世帯」とされていた子どもが1〜2人いる世帯、我が家がそうであったが、このモデル世帯は1980年代には全体の40%を超えていた。しかし今、この世帯は少数派になってしまった。全体の2割強しか存在しない。
一番多い世帯は、単独世帯。つまりは一人暮らしだ。この世帯と夫婦のみ世帯の2人世帯をあわせると、実に6割を超える。北海道の半数以上の世帯は、1人〜2人という現実になっている。
これが、約20年後、2040年にはどう変化しているのか。推計による数字は次のとおり。都道府県別 一般世帯の家族類型構成の推移[2040年]。
・単独世帯 41.7%
・夫婦のみ世帯 23.9%
・夫婦と子から成る世帯 19.7%
・一人親と子から成る世帯 9.9%
・その他の世帯 4.7%
少子高齢化の加速により、あなたも感じているとおり、単独世帯が増え、子どもがいる世帯が減る。加えて、65歳以上の高齢世帯の割合が増える見通しだ。北海道のみならず、日本社会は「高齢者のお一人様」消費がメインになる、これまでと景色がちがった世の中が到来する。
ドラッカーは言う。「人口構成の変化は、いかなる製品が、誰によって、どれだけ購入されるかに対し大きな影響を与える」。「その上で、通念を捨てて現実を受け入れる者、さらには新しい現実を自ら進んで探そうとする者は、長期にわたり競争にわずらわさせることなく事業を行うことができる」と指摘している。(『イノベーションと企業家精神』)。
単身世帯、すなわち一人の世帯が4割を超え最大セグメントとなった時代には、提供商品やサービスも1人用ユースがメインになったものが必要とされる。スーパーやコンビニなどでは、1人用のパック、単身者向けの小分けした商品の高齢者に向けたさらなるコンパクト化が求められるだろう。住宅ならば、1LDKや1DKの部屋が主流になるのかもしれない。旅行業界ならば、おひとりさまでも参加可能なツアーのニーズが高まる。
ドラッカーは「必要なことは問いを発することである。統計を読むだけでは十分でない。統計は出発点にすぎない」という。自らショッピングセンターに出向いて、見て、聞く。あるいは、お客を観察し、話しかけ、耳を傾けることが大切だと説く。「現場に行き、見て、聞くものにとって、人口構造の変化は信頼性と生産性の高いイノベーションの機会になる」と指摘する。
このアドバイスに基づき、あなたの業界において「高齢のお一人様」に対して提供できる商品/サービスは、どんなものがあるだろうか。
既存のものの廃棄を手始めに考えてみたい。


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