続・絵で見るドラッカーの人生(魂よ永遠に)【2006年】
誰もが「自分のために書いてくれた」と思う不思議(『ドラッカー入門』)
ドラッカーからはいつも「自分以上に自分の著作について知っている」といわれてきました。うれしくないといえば嘘になりますし、その反面、なんて大げさなことをと思っていました。
しかし、彼が亡くなる半年前にそれが当たり前のことだと知らされました。2005年の『テクノロジストの条件』の序文、「日本の読者へ」の中にさらりとう書いてあったのです。
「(上田)先生は、私以上に私の著作に精通しておられる。著作を理解する最善の方法が翻訳することだからである」
ドラッカーに詳しいことは、それほど感心すべきことでもなかったというわけです。もしドラッカーを勉強したい方がいれば、原著を翻訳するという方法があることをお伝えしておきます。
私(上田惇生先生)はこれまでドラッカーの著作のほぼすべてを翻訳し、またドラッカー本人と共同で名言集をはじめ多くの書籍の編集を行ってきました。しかし、一つだけやらないと決めていたことがあります。それは、ドラッカー論は書かないということでした。
なぜかというと、ドラッカーから教わったままに経営をして成功したという人、ドラッカーからヒントをもたったという人、とにかく考え方が好きだという人、そうした多くのドラッカーファンのために、できるだけ無色透明な文章を書くことが私の役割だと考えていたからです。
2001年6月、私は『週間東洋経済』からおそろしく長時間のインタビューを受けました。その内容は「入門ピーター・F・ドラッカー 8つの顔」として8週間にわたって掲載され、最初の2回分の英訳を読んだドラッカー本人からいくつか助言をもらいました。
現代社会最高の哲人とされるドラッカーの96年に及ぶ歩みと教えを、翻訳者兼編集者の私が入門書としてまとめたものです。
私とドラッカーの出会いは大学時代、『現代の経営』を読み、ドラッカーのようんな本を書きたいと思って資料集めを始めたものの、事業としてのアメリカ大陸横断無銭旅行にのめり込んだところから始めります。それから50年、そして出版社からドラッカー論を書かないかと言われて30年。ドラッカー本人の亡くなったこのときに書かなければ、もう一生かけないと思いました。
もちろん入門書として、できるだけ客観的な視点で書くつもりでスタートしました。ところが、そうはいきません。出来上がったのは、入門というにはあまりに主観的なものでした。そもそも、客観的なドラッカー入門などありえないのです。
『乱気流時代の経営』でのバブルへの警鐘、『ネクスト・ソサエティ』での社会の転換など、まさに日本のために書いてくれていたと本心から思っています。しかし実は、どの国の人も、ドラッカーは自分のために書いてくれていると思っているのです。
それぞれ好きなフレーズがあり、それぞれ好きなドラッカーがいる。ドラッカーとは、それぞれのドラッカーである。本書の執筆を通じ、そのことを改めて思い知りました。『P.F.ドラッカー完全ブックガイド』より
五月女 圭司
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