第2回「ドラッカーの本でも読んでおけ」という言葉に応えるためのドラッカー本を読む順番―人のマネジメントに悩むマネジャーや経営者の方に

第2回は「ドラッカーの本でも読んでおけ」と言われる可能性が最も高いマネジャーの皆さんに特に関係があります。

 

「ドラッカーの本を読んでみたいのだけれども、どれから読んでいいか教えて欲しい」という問いに対する答えは、その人の地位や経験、期待されているものによって異なります。つまり、一般的な答えはないということです。

 

前回も書きましたが「ドラッカーの本でも読んでおけ」という言葉には、仕事の役に立つからという意味が込められています。ドラッカー教授の言葉を実践に使って成果を出すという意識が大切です。

 

私たちの読書会―「実践するマネジメント読書会🄬」では、本そのものではなく目的別にプログラムを開発してきました。その経験からドラッカー本のどの章を、どんな順番で読めばいいのかを長年研究してきました。

 

第2回目は、人のマネジメントに悩むマネジャーや経営者の方に向けて次の4冊を推薦したいと思います。

読むべき本と章

①『経営者の条件』(1966)特に第4章、そして第3章を中心に

②『現代の経営』(1954)特に第2部、第4部、第5部を中心に

③『マネジメント』(1973)第15章~第28章および第2部を中心に

④『非営利組織の経営』(1990)第1部、第4部を中心に

※この一冊ということでいえば、『現代の経営』をお薦めします。

 

4冊の概要

①『経営者の条件』は、セルマネジメントの中核的一冊。しかしセルフマネジメントとチームや組織のマネジメントは表裏一体。そのことは第3章が「人の強みを生かす」となっていることからもわかります。マネジャーの立場から書かれた箇所が多数ありますので、セルフマネジメントからマネジャーの視点に変えて読んでみて下さい。

②『現代の経営』は、マネジメントの全体像が網羅的に書かれています。それゆえ、必要な情報を取り出すには、全体を読むのではなく必要箇所を重点的に読むという姿勢が求められます。人のマネジメントは仕事のマネジメントと一体です。一体ですが原理は異なりますので分けて読み、考える癖をつける必要があります。上記に挙げた該当章はそのための章です。

③『マネジメント』と『現代の経営』は、ほぼ同じ性格をもっています。それゆえ選んだ基準は同じです。しかし、姉妹巻ともいうべき『マネジメント』と『現代の経営』は、補完関係にあります。出版年次に約20年の開きがあり、その間、ある個所は簡明に、ある個所はより深められていいます。

④『非営利組織の経営』は、1990年発行で人と仕事のマネジメントのアップデート版であるとともに両方のネジメントとの隣接領域との関係が分かるように記述されています。

 

 

こんなことが書いてあります~一部内容の紹介

「仕事(work)は働くこと(working)、つまり人の働きとは違う。仕事は客観的な存在である。それは何かである。人とは別の何かである」(『マネジメント』)とドラッカー教授は言います。

 

仕事と人が働くということは全く異なるものです。しかし現場では、人が仕事を行っています。…ぇ、当たり前という声が聞こえてきそうですが、この区別が案外できていないのが現実です。

 

たとえば何か仕事でミスが出ると、まずその担当者に目が向けられます。人のミスということです。しかし仕事のマネジメントの欠如を原因とする仕事サイドのミスも多いのが現実です。

 

典型例は、ドラッカー教授も用いるコンセプト「仕事の設計」が出来ていない組織は多数あります。誰がやっても必要な作業とその手順は、どんな事業においても存在するものです。

 

人のマネジメントの土台に仕事のマネジメントがあります。しかし多くの組織で、人のマネジメント―たとえばリーダーシップ、コミュニケーション、動機づけなどの能力やスキル―だけで組織運営を乗り越えようとしている例を多く見うけます。仕事のマネジメントという土台なしに、人のマネジメントを行っても砂上に楼閣を建てるようなものです。

 

「仕事と、働くことは別の世界に属する。仕事は人の外にある。仕事そのものの論理に従う。働くことは人の内にある」『マネジメント』

 

良好な仕事のマネジメント土台の上に、人のマネジメントは有効に機能するのです。

 

「ドラッカーの本でも読んでおけ」という言葉に応えるための本を読む順番(連載記事)

第1回:すべての社会人の方に…(2018.4.30)

第2回:人のマネジメントに悩むマネジャーや経営者の方に…

第3回:新規事業の立ち上げなど事業のマネジメントに悩むマネジャーや経営者の方に…

第4回:組織の方向づけに悩むマネジャーや経営者の方に…

第5回:ドラッカーマネジメントの「一丁目一番地」を知り、真のマネジメントを行いたい方に…

第6回:社会はどのように変化するのか?未来の予見力を高めたい方に…

第7回:<付録>目的別に読む理由

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<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。 ドラッカー学会理事。 マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。 ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。 Dサポート㈱代表取締役会長。 ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。 公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。 誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。 編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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