- ドラッカーの実践によって約40年ぶりに運送収入を上昇させた
- 「顧客であっておかしくないにもかかわらず顧客になっていない人たち」(非顧客)の声に大きなヒントが隠されている
- 小さい成功を積み重ねていくことがイノベーションの基本
- 既にある経営資源を組み合わせればイノベーションを起こせる
目次
はじめに
40年以上減り続けていた路線バスの利用客数を増加に転じさせた北海道の十勝バス。その背後には、野村 文吾(のむら ぶんご)社長がドラッカーから得た学びがあった。
本記事では、「中小企業経営者のためのドラッカー入門セミナー」で講演した野村社長の講演を再録する。

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イノベーション――私が初めてドラッカーと出合ったとき、最も心に響いた言葉です。
十勝バスは、北海道帯広市を中心に路線バスを運営しています。1926年設立。約1世紀、地域の交通インフラを支えてきましたが、マイカーの普及や人口の減少で利用客数は69年から毎年数%ずつ減少。
2000年代には、ピーク時の2割以下にまで落ち込み、激しい経営状況が続いていました。
しかし2011年、十勝バスはまさにイノベーションを起こします。約40年ぶりに利用客数を増やし、運送収入を上昇に転じさせました。
地方の路線バス事業者としては快挙でした。
衰退の一途を辿る父の十勝バス。ある夜の「小銭がこぼれる夢」が教えてくれたこと
札幌で会社員をしていた私が帯広に戻り、父が経営する十勝バスに入社したのは1998年、34歳のときでした。
その少し前、札幌まで私を尋ねてきた父にこう告げられました。
「できる限りの合理化を進めたが、もう次の一手がない。残念だけど会社を潰すしかない」
私の返事は、「そうか、残念だったね」――それで会話は終わりました。
私は幼い頃から会社を継ぐように言われたことは一度もありません。父はおそらく、衰退の一途を辿る路線バス業界の未来を憂いて、息子には別の道を歩ませようと思ったのでしょう。
だから私にも、家業には愛着がありませんでした。
しかし、その夜、私は夢を見ました。バスに乗っているお客様の指先から小銭がぽとりぽとりと運賃箱にこぼれていきます。
『ああ、あの小銭が積もり積もって、父母の家計を支え、私が大学に進学する原資になった。今の自分があるのは十勝バスのお客様のおかげ……』
ガバッと飛び起きて、「このまま十勝バスを潰していいのだろうか」と考え込みました。
十勝バスがなくなれば、困るお客様もいるだろう。父のほかに経営を引き継ぐ誰かがいれば、十勝バスは生き残るかもしれない。そしてその「誰か」とは、やはり自分ではないだろうか。
そう考え、私は会社を継ぐことを決意しました。
仕事を教えてくれない父。給与削減で荒む社員。いつも会社の雰囲気は最悪だった。
「おまえではダメだ」
ところが、会社を継ぐという私の申し出には父は猛反対します。
「なぜだ・どうしたらやらせてもらえるんだ」
と食い下がると、父は
「全責任を負うならやらせてやる」
と言いました。もちろん私は覚悟を決めていました。
「当たり前だ。最初からそのつもりだ!」
このときはまだ、父の本意を理解していませんでした。
1998年4月1日、入社当日に、父は私を社長室に呼び、実印と金庫の鍵を渡して言いました。
「約束だからな。おまえが全部やれ」
その瞬間から私が実質的な経営者になりました。
しかしどれだけ執拗に尋ねても、父は死ぬまで何一つ仕事について教えてくれませんでした。奈落の底に突き落とされたような気持になりました。
全責任を負うといっても、それは事業承継を終えた後。最初は丁稚奉公のつもりで、路線バス会社の仕事を現場で少しずつ学ぼう。当初はそんな腹積もりでいたのです。
そしてさらに最悪なのは、社員との関係でした。
十勝バスでは、すでに約30年続いていた営業収入の減少を補うため、人員削減こそしなかったものの、給与や賞与のカットによる人件費の削減を続けていました。
そのため、社員の心は荒れ果てていました。
当時の私もまだ若く、ささいなことで社員と言い争っては実力行使。物を投げ合い、机をひっくり返すような騒ぎを繰り返していました。
経営者として成長するために出合ったのがドラッカーだった
そんなある日、途方に暮れて街でお酒を飲んでいた私に、同級生の友人が言いました。
「会社は経営者の器以上には大きくならない。おまえの会社がうまくいかないのは、おまえの器が小さいからだ。だから、経営の勉強をしろ」
私は藁(わら)をも掴む思いで「じゃあ、経営の勉強というのは、どうやるものなのか」と尋ねました。
そこでいくつかのセミナーや勉強会を紹介してもらったのが、私の経営者としての本当のスタートだったかもしれません。
ドラッカーの読書会に初めて参加したのは、2006年。最初のうちは、おぼろげにしか理解できませんでした。
そんな中、我が社に大きな転機が訪れます。2008年、燃料費の高騰で経営危機が深刻化したのです。
実は、私は入社直後から一貫して「利用客を増やすために営業を強化しよう。地域住民に『もっとバスに乗ってください』と呼びかけよう」と言い続けていました。
それに対する彼らの反応は、次のフレーズの繰り返し。
「嫌だ」「無駄だ」「無理だ」
まるで壊れたレコードです。決して首を縦に振りませんでした。
今思えば、そんな社員を責めるのも酷でした。業界全体が何十年も右肩下がりのなかで「利用客を増やそう」と言われても、無謀としか思えなかったでしょう。
しかし、彼らも、燃料費高騰には並々ならぬ危機感を持っていました。そこで私はもう一度、「営業をして利用客を増やそう」と呼びかけました。
するとついに
「分かりました。やりましょう」
と社員たちが答えてくれたのです。
ここまでに実に10年の月日を要しました。
もしこの10年間のどこかで私が諦め、「営業強化」と連呼するのをやめていたら、燃料費高騰の危機があっても、誰も「やろう」とは言ってくれなかったでしょう。
すぐ相手の心に届かなくても、言い続けることに意味がある。そう実感しました。
では、どこから営業を始めるか。私たちは路線図を広げました。
私は人通りの多い駅前から着手したいと考えていました。
だが、社員が「ここからやりたい」と指さしたのは、中心部から離れた小さな1つのバス停でした。
カーッと頭に血が上りました。
『そんなちっぽけな取り組みで、何が変えられるか!』
と怒鳴りたかった。
しかし、ぐっとこらえて、
「よし、ここからやろう」
と答えました。
10年かけてやっと社員がやる気を見せたのです。とにかく一歩でも前に進みたかった。
ただし、社員たちに一つ、お願いをしました。
「最初は1つの停留所でいい。でも、もしここで成果が出たら、隣の停留所でもやろう。そうやって成果が出るたびに営業するエリアを広げて、1路線だけでも全停留所をやり切ろうね。それができたら、隣の路線でまた1つの停留所から始めようよ」
ここまで譲歩すると、社員たちは「分かりました。やります」と約束してくれました。
実は社員たちのほうが正しかったのです。後から知ったのですが、ドラッカーはこう説いています。
「イノベーションに成功するには小さくスタートしなければならない。大がかりであってはならない」
『イノベーションと企業家精神』
小さく成功して、うまくいった方法を大きく展開するのがいい。その後、私たちが成功させた戦略は、まさにその通りでした。
なぜバスに乗らない?チャンスは「非顧客」の声にあり!
最初の停留所の見込み客は、バス停から半径200mほどの範囲に住む約300世帯の住人でした。
私たちはそのご自宅を1軒1軒回る「戸別訪問」を実施しました。
「路線バスに乗っていますか?」
そう尋ねると、嫌になるくらい乗っていない人ばかりです。
しかしなぜか、尋ねたお宅の約7割が玄関の扉を開けて話をしてくれました。
驚きました。
なぜ見ず知らずの人のために玄関を開けてくれるのか――歯を食いしばって地元でバスを運行し続けてきた十勝バスへの信頼が残っている。
チャンスはあると前向きにとらえました。ドラッカーはこう言います。
「ほとんどあらゆる組織にとって、もっとも重要な組織の情報は、顧客ではなく非顧客(ノンカスタマー)についてのものである」
『ネクスト・ソサエティ』
「非顧客」とは誰か。「顧客であっておかしくないにもかかわらず顧客になっていない人たち」のことです。我々にとっては、まさにバスに乗らない地域住民のことを意味します。
そう、彼らの声の中にこそ、必ずヒントがあるはずです。
だから私は、こう尋ねました。
「どうしてバスに乗っていただけないのですか?」
すると
「行きたい方向への路線がない」
という答えが返ってきました。そこですかさず私も食いつきます。
「年1回でもいいんですよ。年1回なら、行きたい方向へ向かうバスがあるんじゃないですか」
しかし返ってくるのは
「うーん……」
という微妙な反応。
『よく考えたら、バスがどこに向かっているかを知らないんだ。前と後ろ、どちらかが乗ればいいかも知らないし、料金も分からない。だから、ちょっと怖いんだよな』
私は目からウロコが落ちました。そんな根本的なことすら知らなかったのか。あるいは、しばらく乗らない間に忘れてしまったのか……。
要するに、お客様がバスに乗らないのは「不便」だからではない。「不安」だからなのでした。
この発見が突破口になりました。とにかく、お客様の不安を解消しよう。そこでバスの乗り方を説明するパンフレットを作成して地元で配りました(※写真)。またケーブルテレビでもバスの乗り方を説明するCMも流しました。
組織はお客様のニーズを満たすためにある。ドラッカーの言葉を真に理解したのは、実践をしたからだった。

戸別訪問を重ねると、こんな要望も聞こえてきました。
「病院に行くのにバスを使いたい」
「スーパーにバスで行きたい」
私たちは最初、不思議でなりませんでした。なぜなら、バス路線はすでに、主な病院やスーパーは必ず通るように設計されているからです。
しかし、どの停留所の近くにどんな施設があるかが、地域住民の目には分かりにくかったのです。
そこで、どの路線を使えば、どんな施設に行けるかを解説する「目的別時刻表」を作成しました。
2009年、最初の一路線の戸別訪問が終わりました。
すると、この路線の利用者は約2割増えていました。この活動を翌年、翌々年と続け、路線を広げていくことで、2011年、実に約40年ぶりに全体の利用客数が増加に転じたのです。
この取り組みを通じて、私は気付きました。バス会社を経営していると、ともするとバスを運行することが「目的」になってしまいます。
しかし、お客様にとって、バスは「手段」に過ぎません。自分たちの都合や常識を脇に置き、お客様にとっての「良き手段」に徹することが、きわめて重要なのです。
ドラッカーも、こう言っています。
組織が存在するのは、組織それ自体のためではない。社会的な目的を実現し、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためである。組織は目的ではなく手段である
『マネジメント』
ドラッカーは経営者に多くのことを教えてくれます。しかし、その言葉に私が納得したのは、自らの実践を通じてです。知識は行動に移してはじめて成果になります。
私たちの取り組みは地道なものでした。奇抜なアイデアがなくても、大きな投資をしなくても、イノベーションは起こせます。
自社にすでにある経営資源を丁寧に見直し、配分や組み合わせを工夫するだけで、大きな変化が生まれます。
中小企業経営者が知恵をふり絞り、全国各地でイノベーションを起こせば、日本全体で元気になります。
そう信じて私は今、全国の地方路線バスを活性化するという新しい挑戦を始めています。
ドラッカーの実践ポイント
- 小さく行動を開始する
- 非顧客(ノンカスタマー)に「なぜ顧客ではないのか?」を尋ねる
- 自社の存在は、顧客にとって手段であり、目的ではないと自覚する
- 知識は行動してはじめて成果になることを忘れない
- 既にある経営資源の組み合わせでイノベーションを起こす
株式会社エレメント
2006年 旭川市にて、WEBサイト製作会社を立ち上げ200件以上のWEBサイト製作を手掛ける。創業3年目にただ作るだけのWEBサイト製作・業界の考え方に疑問を感じ、製作後の顧客WEBサイトで成果をあげる仕掛け、仕組みを追求。
成果をあげる方法、習慣的な貢献【マネジメントとマーケティング】であると感じ、ドラッカーやコトラーを学びだしてナレッジプラザ読書会に出会い今日まで【顧客の価値のある情報をユーザーに届ける】を実践する。
★実績★
・司法書士事務所のWEBサイトにて「札幌 ○○○○(某キーワード・守秘義務の為非公開)」で1位を取り、毎月の大きな広告費をゼロにして、さらに売り上げをアップさせる!
・ゼロから立ち上げて1年で月商200万円のドメスティックブランド通販サイトを立ち上げて現在も多くのブランドキーワードで上位を獲得維持しています。
・月商1000万円のインポートブランド通販のSEO対策で上位表示させるコンテンツ制作を手掛け1年で1800万円まで売り上げを伸ばす。
・月商6000万円以上のネット通販立ち上げから商材コンセプト設計などマネジメントにも携わる
・ゼロから作ってコンバージョンレート15%以上の月商100万円有機農家通販サイトの製作&動画集客を成功させる
・月間6万UU以上の集客をたった1枚のブログ記事で達成、日本一集客する病院ページの作成・運営サポートを行う
などなど
★最近のお仕事★
●札幌市の弁護士・司法書士・公認会計士・税理士のWEBサイトに相続の見込み客を集客する
●旭川市の銃砲店は日本一の集客 旭川家具を世界一の家具へ!
などなどその他多くのお客様のサポートをしています。
●実際に制作した人気のコンテンツ・記事の紹介
などなど
㈱エレメント
WEBサイト:http://elmt.jp
問合せ:011-596-7986
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