ドラッカーを学びセルフマネジメントの能力を身につけイキイキ働きワクワク生きるフリーランスバスガイドせがわとみこでございます。
前回お伝えしたのは降水確率0パーセント、お天気に恵まれた「みちのくの桜の名所をめぐる二泊三日のバスツアー」からのレポートでした。
フリーランスではたらくあなたに読んでほしい。バスガイドせがわとみこのマネジメント実践報告~桜が咲くとトミコ咲く
お天気に恵まれる旅はお客様の気持ちも晴れやか。「ドライバーのかぶっている帽子は危険ボウシ(防止)に事故ボウシ(防止)、安全運転で参ります」なんていうコテコテだじゃれもオオウケ。ご機嫌なお客様はバスガイドの話に耳を傾けてくださる体制が整っているからでしょうか。反応も上々。コミュニケーションがとりやすいです。
ドラッカー教授は、コミュニケーションは受け手が主役だと教えてくれます。
コミュニケーションとは、①知覚であり、②期待であり、③要求であり、④情報ではない。それどころか、コミュニケーションと情報は相反する。しかし、両者は依存関係にある。『マネジメント[エッセンシャル版]』
(1)コミュニケーションは知覚である
(中略)コミュニケーションを成立させるのは受け手である。コミュニケーションの内容を発する者ではない。彼は発するだけである。聞く者がいなければ、コミュニケーションは成立しない。音波しかない。コミュニケーションを発する者は、話し、書き、歌う。しかしコミュニケーションはしない。できない。コミュニケーションの発し手は、受け手が知覚することができるようにする、あるいは、できないようにすることができるだけである。『マネジメント(中)』
毎日雨が降る降るバスツアー「なすべき貢献は何か」
しかしお天気はコントロールのできない自然現象。毎日晴れの日の旅ばかりとは限りません。三日間の旅が三日間とも雨に見舞われるなんてことも、もちろん、あります。雨、雨、雨に見舞われ続ける旅はお客様の気分は下がり気味…、とくに朝、ホテル出発時のバス車内…、どんよりと不穏な空気がただよいます。元来、気分の下がっているときというのは人の心は閉じやすいもの。
心閉じると耳閉じる(せがわとみこの仮説)。そのまま「案内」に入っていくのはかなり危険です(笑)
雨が降るのはバスガイドのせいではありませんが、旅を楽しんでいただくように務めるのは私たちの仕事です。お天気に左右されることでせっかくの旅の気分を台無しにしていただきたくありません。晴れてない、晴れてない…。「ない」にとらわれているお客様の気持ちを「ある」に向け、「雨の旅もいいものねぇ」に切り替えるきっかけを投げかけることができるのは、マイクを持っている私たちバスガイドができる貢献です。
なすべき貢献は何であるかという問いに答えを出すには、三つの要素を考える必要がある。第一は、状況が何を求めているのかである。第二は、自己の強み、仕事の仕方、価値観からして、いかにして最大の貢献をなしうるかである。第三は、世のなかを変えるためには、いかなる成果を具体的に上げるべきかである。『P・F・ドラッカー経営論』
出会ったお客様すべてに「また来たい東北」と思っていただけるようなおもてなしの心で接する。バスガイドをするにあたって心に決めていることです。そのために「なすべき貢献は何であるか」を自らに問いかけるという姿勢はドラッカーを学んでから身についた習慣。
「雨もいいものねぇ」と思っていただくため、私はいくつかのシナリオを道具として頭の中にストックしています。それらを旅の目的や状況(募集ツアーなのか修学旅行なのか社員研修なのか、など)に応じて、お客様に伝わることばに変換・工夫して使うようにしています。
道具としてストックしている雨の日用オリジナルシナリオの例
・「友人のエッチャン」の話
エッチャンは子どもの頃、雨の日が大好きだった。なぜなら、雨の日はお父さん、お母さんと一緒にいられる、彼女にとって特別うれしい日だったから。彼女のご両親は農家さん。普段は農作業の為、学校から帰ってもお父さん、お母さんは家にいなかった。夕飯は用意されていて、一人で食べる毎日。ところが雨の日は農作業ができないためご両親が家にいることが多かった。雨の日は「今日は家に帰るとお父さん、お母さんがいるかもしれない。夜ご飯一緒に食べられるかも~!」雨が強ければ強いほどご両親が家にいる確率は高まります。雨が激しく降れば降るほどエッチャンのウキウキ具合はアップ。雨の日は学校が終わるのが待ち遠しくてしかたなかったのだとか。
・「雨の日に見かけた小学生」の話
とある雨の日に見かけたピカピカの傘をさし、ピカピカの長靴をはいて楽しそうに水たまりを歩いていた小学生。買ってもらったばかりの雨具かもしれない。雨だから使える傘や長靴、カッパを身につけて、この雨のなかを大喜びで登校している子どもたちが今日もまたどこかの街にいるかもしれない。
・「旅の楽しみ方がお上手だな、と感じたお客様」の名言
「毎日晴れの日の旅より、毎日雨にあたるくらいハプニングのある旅の方が、時がたてばたつほど楽しい思い出として残るのよ。お天気に恵まれる旅はね、その時はいいわいいわなんて言っていても、一年もたてばすっかり忘れちゃうんだから!」
これらのシナリオ(道具)を車内の雰囲気を肌で感じながら組み合わせて使っています。「久しぶりに降った雨なので花や樹木はいつもにも増してイキイキと艶やかに輝いているように見えますね」などのセリフを交えながら…。
お客様の表情にやわらぎが出て、優しく微笑み大きくうなずいてくださる方が増えてきたあたりでバシッと決めゼリフ。「外は雨降りですが、バスの中は晴れ晴れと参りましょう。本日もどうぞよろしくお願いいたします!」ここまでくると、私の話に耳を傾けてくださる準備、バッチリです!
心開くと聴く耳開く…(とみこの仮説)笑
期待をかけられる存在であるために
ポイントは「このガイドさん、私たちをとことん楽しませてくれるかも!」と期待をもって向き合っていただくこと。
(2)コミュニケーションとは期待である。
われわれは期待しているものだけを知覚する。期待しているものを見、期待しているものを聞く。(中略)重要なのは、期待していないものは認識すらされないということにある。見えもしなければ聞こえもしない。無視される。あるいは間違って理解される。『マネジメント(中)』
「この瞬間だからこそ味わえる気分を味わっていただく。この旅に参加してよかったと思っていただけるような案内をする」という心構えが、なすべき貢献を自らに問い、お客様との円滑なコミュニケーションを考え、行動に反映させる、という一連の流れとなり、強みを生かした働き方…イキイキ働きワクワク生きる、につながっているのかもしれません。
フリーランスバスガイドは仕事を組む相手(ドライバーさんや添乗員さん)も、お客様も、乗務するバス会社さんも毎度毎度違います。バスガイドの絶対数が不足する観光シーズンはその専門性を求められひっぱりだこになることもあります。ともすればいい気になって(勘違いをおこして)自分の専門分野に凝り固まり、ひとりよがりな偏った働き方をしてしまう可能性があります。そういう自分を知っているからこそ「強みを生かす三つのステップ」
第一は(中略)明らかになった強みに集中することである。(中略)第二はその強みをさらに伸ばすことである。(中略)第三は、(中略)無知の元凶ともいうべき知的な傲慢を正すことである。『明日を支配するもの』
を意識して、これからもドラッカーを学び、実践で生かし続けていこうと思っています。
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