言ってることは正しいがそれを言うのは正しくない2つの理由。正論が人のやる気を奪う?スタッフが輝く組織づくりの極意を解説。

言ってることは正しいがそれを言うのは正しくない2つの理由。正論が人のやる気を奪う?スタッフが輝く組織づくりの極意を解説。

巷に「正論を言ってはいけない」という言葉があります。あなたもきっとご存じでしょう。しかし「なんとなく言いたいことはわかるけれど、意味はよくわからない」という方もいるはずです。

社会人になると、「言っていることは正しいが、それを言うのは正しくない」とたしなめられる場面がしばしばあります。とくに、部下を持った人なら、一度はそのフレーズを実際に言われたことがあるのではないでしょうか。

「言っていることは正しいが、それを言うのは正しくない」とたしなめられる人は、仕事熱心の人が多い傾向があります。なぜでしょう?実は「組織をよくしたい」「部下に成長してほしい」と情熱のある人ほど陥ってしまう思考の罠があるのです。

「言っていることは正しいが、それを言うのは正しくない」の真の意味は、実はマネジメントの視点から解き明かすことができます。

なぜなら正しいことを言おうとする人の真意は、「人を動かす」にあるからです。マネジメントもまた、人を動かすにはどうすればいいのかを考えるフレームワークですから、正論を人に言いたくなる人ほど、マネジメントを学ぶ絶好のチャンスなのです。

そこでこの記事では、マネジメントの発明者ことピーター・F・ドラッカーの金言を借りながら、「言っていることは正しいが、それを言うのは正しくない」と言われる理由と、人を動かすためにマネジメント能力を身につける意味についてお伝えします。

この記事は、「正しいことを言い続けているのに、人が応えてくれなくてツライ」「それどころか組織の雰囲気が悪化して事態がさらに悪い方向に進んでいる」「仕事ができない人に優しくできない」という方に、ぜひ読んでほしい内容となっています。

あなたの仕事に対する情熱を、組織や他のスタッフのエネルギーに転換してほしい……その想いで「なぜ正論で人を動かすことができないのか」について書きました。ぜひ最後までお付き合いください。

「言ってることは正しいがそれを言うのは正しくない」2つの理由

要点をまとめると、次の2つに集約されます。

  • 理由①正しさで人を変えることはできない
  • 理由②マネジメントを改善する機会を逃す

理由①正しさで人を変えることはできない

仕事熱心な人ほど陥りがちなのは、「正しいことを言って相手を説得する」です。

「仕事で大事なのはコミュニケーションなんだから、もっと積極的に関わってほしい」「日々学んでほしい」「お客様のために頑張るのは当たり前。努力しないなんて、考えられない」「もっと主体性をもって仕事をしてほしい」……これではいたずらにモチベーションを奪うだけです。

正しいことを言っても人を変えることはできません。この言葉を違う表現にすると、「相手を変えようと干渉する者に対して、人は不快感を示す」です。なぜなら正論は、人の価値観に踏み込む行為だからです。

いかに正論であろうとも、いや正論なればこそ、押しつけられた信条や価値観は社員にとってむき出しの専制にほかならない。人間重視の経営の基本は、個として社員を遇すること、そして強みに着眼して組織的に成果をあげるような環境を整えること、それだけである。ドラッカーによれば、それ以上のことは明らかに越権である。マネジメントは個人の内面や自発性に一ミリたりとも立ち入ることを許さない。

上田 淳生/井坂 康志『ドラッカー入門 新版』より

仮にあなたのアドバイスが正論だとすると、あなたは「正しい側」に立ち、相手は「間違っている側」に立っていることになります。間違っているのは相手というわけで、理屈でいえば、変わるべきは相手です。

ですが、人間はそう単純ではありません。たとえ正論でも、他人から「きみは間違っている、変わりなさい」と言われると、不快感と反感を抱くのは当然です(参考:【正論で追い込む人への対処法】アドラー心理学を活用しよう)。

間違っている側が変わるのは当たり前」と考える人の奥底には、実は支配欲が潜んでいます。「そんなつもりはない」と反論したい人もいるでしょうけれども、正論を言って相手を変えさせようとすることは、客観的にみて、「自分の要求に相手を従わせる」ことに他なりません。

「正論をいえば言うほど、相手が言うことを聞かなくなる」といった経験はありませんか?職場のみならず、家庭・学校でもよくみられる光景です。これは相手からすれば、ある種の防御反応だといえるでしょう。誰だって、他者に支配されることは不愉快です。ですから、正論を言う人は「自分を支配しようとする敵」として本能的にカテゴライズされてしまい、ますます言うことを聞かなくなるのです。

ドラッカーは、他人を変えようとする干渉の仕方に警鐘を鳴らしています。「成長をさせてやらなければならない」という考えも否定します。それは明らかに個人の価値観に踏み込むふるまいです。

理由②マネジメントを改善する機会を逃す

もしも「スタッフ一人ひとりが主体性を発揮する組織にしたい」と考えているにもかかわらず、現実にそうならないのであれば、それはスタッフが悪いのではなく、そうなる環境をつくれていないマネジメント側に問題があります。つまり、事業の設計・仕事の設計といった仕組みに構造的な問題があるのです。

しかしマネジメントを学ばないと、いつまでたっても個人の問題として人を責める思考から脱却できません。

マネジメントは「人」と「仕事」を分けて考えないと何もかもがごっちゃになって感情的になってしまいます

仕事の設計そのものを改善しなければならないはずなのに、仕事をする人の考え方・仕事の仕方・価値観・性格・やる気に問題があるという結論に走ってしまうのです。

すると、正論を言う→相手を変えようとする→反発が生じる→主体性が失われる→さらに強く正論を言う→信頼関係の崩壊→組織の崩壊……という最悪の循環に陥ります。

正論を言いたくなったときの対処方法

  1. 「相手は自分とは違う現実を見ているのかもしれない」と冷静になる
  2. 「自分と他人は同じではない」と謙虚になる
  3. 「意見が食い違うことで新しい発見があるかもしれない」と前向きに考える
  4. 「遠回りや間違いこそが成長に不可欠な肥料だ」と大きな目でみる
  5. 人を責めるのではなく仕組みを責める

正しいことを言ってもいいのは意思決定が使命に合っているかを判断するとき

それでは、「言っていることは正しく、それを言うのも正しい」ということはあるのでしょうか。状況次第では存在します。マネジメントでは「何が正しいかで意思決定を行う」という考え方があります。

組織の存在理由を考えたとき、その意思決定が正しいのかを判断するのです。

組織の存在理由とは、すなわち事業の使命(ミッション)のことです。使命は組織の羅針盤です。

たとえば「高齢者の自動車事故がゼロ%になる車をつくりたい」という使命に対して、「コストカットのために自動運転機能の品質を下げる」という意思決定が妥当かどうかを考える際に、何が正しいかを問うわけです。

ポイントは、「誰が正しいか」ではなく、「何が正しいか」です。

このときの「正しさ」は、けっして人を責めたり、人の価値観に踏み込んで変えようとしたりするためのものではないことが、おわかりいただけるかと思います。

ただし、組織の掲げる使命(ミッション)の価値観が、その人に合うかどうかは、極めて重要です。組織の価値観と個人の価値観が合わないと、組織の基準である正しさは、個人にとって押し付けられたものになってしまうのです。

組織には価値観がある。そこに働く者にも価値観がある。組織において成果をあげるためには、働く者の価値観が組織の価値観になじまなければならない。同一である必要はない。だが、共存できなければならない。さもなければ、心楽しまず、成果もあがらない。

ドラッカー『プロフェッショナル』の条件より

人を動かしたいなら「正しいことを言う」のではなく「方向づけること」を学ぼう

人はなんのために正論を言うのでしょうか。その先にある目的は、けっきょく「人を動かす」ことにあります。“こうなってほしい”、“はやく間違いに気づいてほしい”という願望を相手に期待するから、人はつい正論を言ってしまうのです。

しかしこれまでみてきたように、正論では人は動きません。ではどうするか?いまこそ、マネジメント能力を身につけるときです。

マネジメントとは何か?「人」に限っていえば、成果に向かって「人」という資源を動員することです。そのためには人の弱みではなく、強みに目を向けなければなりません。

人を問題や費用や脅威として見るのではなく、資源として、機会として見ることを学ばなければならない。管理ではなくリードすること、支配ではなく方向づけることを学ばなければならない。

ドラッカー『マネジメント』より

弱みからは何も生まれない。結果を生むには利用できるかぎりの強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自らの強みを動員しなければならない。強みこそが機会である。強みを生かすことは組織に特有の機能である。

ドラッカー『経営者の条件』より

マネジメントの本当の意味は、“方向づける”です。

マネジメントの語源はイタリア語の「馬を馴らす」(maneggiare)に由来し、「手綱を操る」というニュアンスを含んでいます。

馬には性格、意志、気分、得意・不得意があり、これは人間と同じです。目指すべきゴールは一つでも、その道程はそれぞれ異なります。

そして、ゴールに向かう過程で何に苦痛や喜びを感じ、人生の意義を見出すかも人それぞれです。

こうした個性豊かな馬をゴールへ導くためには、目の前の馬と真摯に向き合い、その個性を認めた上で、その馬に合った方法で強みを活かしながら目標へと導かなければなりません。

このように、「馬を馴らす」という比喩的な意味が転じて、managementは「物事をうまく扱うこと」、すなわち組織やプロジェクトに関わる人々を統率し、目的達成へと導くことを意味するようになりました。

つまるところ、マネジメントの核心は「人」です。意志も感情もない車をハンドリングし、ゴールへと導くのとはわけが違います。意志も感情も願望もある「人」を、いかに正しく方向づけ、成果をあげるか……。

ドラッカーは次のように言います。

マネジメントは方向づけを行う。使命を決める。目標を定める。資源を動員する。(中略)…ビジョンと資源を成果と貢献に向けて動員する存在である。マネジメントは、これらの機能を果たすべく行動する。仕事を組織し、働く人たちに成果をあげさせる。

ドラッカー『マネジメント』より

さいごに:マネジメントへの招待

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