社内外のドラッカー読書会を通じて、介護保険制度以外の新たな価値をつくり出したい (株)ファミリーケアサポート 代表取締役 田中卓さん@留萌


社内外のドラッカー読書会を通じて、介護保険制度以外の新たな価値をつくり出したい

(株)ファミリーケアサポート

代表取締役

田中卓さん

 

1977年、留萌市生まれ。

札幌学院大卒業後、東京のインターネット会社へ就職。

2007年(株)ファミリーケアサポート入社、2013年代表に就任。

 

 

経営に悩みドラッカーにたどりつく

 

—最初の仕事はIT系?

留萌市に生まれ育ち、大学で札幌圏に来ました。大学は社会情報学部でした。当時、ITが盛り上がってきて、ITと社会学とを組み合わせて何ができるのかといったことを研究する学部。コンピューターだけではなく、情報を地域と社会にどのように活かすかということを学んでいました。当時は「これからはITだ」みたいな雰囲気があり、わたしもその流れに乗って就職しました。大手IT関連会社だったので、ポータルサイトを運営したり、大手企業のホームーページを受託・開発していました。東京での仕事は充実していました。夜は遅く、家に帰ることなく肉体労働していましたね(笑)。7年くらいやりました。

 

—現在の会社へは?

2007(平成19)年に入社しました。母が留萌市で起業した会社です。創業して7年目が経過したころになります。母が仲間と想いだけでつくった会社と施設。スタッフは20数人いました。いわゆる在宅介護という分野、ヘルパーステーションです。父は別の会社を経営していまして、その一部門として出発した会社になります。ITから福祉へ。当初はまったくそんな気はありませんでした。しかし、母の仕事ぶりを見ていて、人とのふれあいに魅力を感じ、決断しました。その後、通信教育の専門学校で学び、社会福祉士など国家資格を取得しました。

 

—現在の規模は?

施設のハコモノでいうと道内に4カ所あります。留萌市に2つ・増毛町・札幌市にそれぞれ1つです。事業形態でいうと9つの事業を展開しています。スタッフ数は全員で100人を越えました。今も昔も留萌には実家があり拠点です。わたしの家族は札幌に住んでいます。留萌と札幌の間、140kmほどを2時間半かけて、クルマでいったりきたりの生活です。冬はちょっとしんどいですね。

 

—ドラッカーとの出会いは?

最初にドラッカーに出会ったのは、たぶん5年くらい前だったと思います。当時、経営に悩んでいて、いろいろな経営セミナーに出たりしていました。本を読みあさったりする中で、当然、ドラッカーの本『経営者の条件』も買っていました。

しかし、全然ダメで、読みきれませんでした。なので、しばらく本棚に眠っていました。その後、ナレッジプラザの夏季オープンセミナーがあり、プルデンシャル生命保険の高塚伸志さんのご紹介で出席しました。講師の佐藤等さんからドラッカーの『経営者の条件』のことを引き合いに話されて、「ああ、やっぱりあの本なんだ」と。

3年くらい前に、医療・福祉業界誌「介護ビジョン」主催の経営セミナーが札幌でありました。その時の講師も佐藤さんでした。セミナーの後には懇親会がありました。意気込んで出席、あこがれの佐藤さんの隣りに座ろうと思っていました。佐藤さんとはこの時、いろいろとお話させていただきました。

ちょうど「近々、ドラッカー読書会のファシリテーター養成講座がありますよ。一番早くドラッカーを学ぶには、この講座がいいと思います」というようなことを聞き、参加することにしました。札幌での読書会に参加しながら、ファシリテーターにもなりました。

 

 

—社内でも学びを実践?

学びをいかに現場に浸透させていくか。社内での読書会を実施しました。社内読書会は、吉田麻子さんが書いた『人生を変えるドラッカー』(ダイヤモンド社)を使いました。管理職を対象に8〜9人でやりました。けれど、社長が自らファシリテーターで読書会を実施すると、なかなかうまくいかないんですね。社長にはこんなことを言ってはいけないじゃないかとか、ぶっちゃけトークができなくなるんです。「本を題材にスタッフを操作して、社長は何をしたいのか」といった疑心暗鬼になってしまいがちでした(笑)。

その後は、人材育成として新卒者向けに『経営者の条件』本を使って読書会もやりました。若い人は、若いなりに素直ですので入っていけましたね。地域の方々を対象にしたドラッカー読書会もやっています。留萌振興局の会議室をお借りしています。製造業やサービス業、公務員から経営者まで、いろいろな人が参加しています。

 

—具体的な実践を?

ドラッカーのことばの中で、3つの成果というのがあります。「直接の成果、価値への取り組み、人材育成」です。ここを各部門で数値化する取り組みをしています。今年度のテーマは「成果への貢献」です。われわれの仕事って、目の前の患者さんや利用者さんにいいケアをすることに目が向きがちになります。得てして成果とか売上とか意識することは後回しになってしまいがち。しかし、事業としては成果を上げつづけなければなりません。われわれの成果はただ単にケアすることではなく、患者さんがどういうふうに良い状態になっていくか、そのお手伝いをすることだと思っています。現場での専門性はもちろんですが、スタッフ一人ひとりが経営感覚を持ちながら自ら動く環境が必要だと感じています。

 

スタッフの育成を通じて多店舗展開へ

 

—業界の環境はいかがですか?

わたしたちは国が定めた介護保険制度の中でビジネスをやっています。業界全体としては、事業所の統廃合があったり厳しい状況にあります。生き残りに関しては試行錯誤の毎日です。留萌市など地方は、高齢化がどんどん進み、日本の10年後を見ているような状況です。ドラッカーのことばでいう「既に起こった未来」です。人口減少・高齢化に関しては、田舎の方が先を行っている感じがしていますね。

 

 

—経営者の仕事で重視していることは?

人と人とのかかわりの中で仕事をしています。なので、理念の浸透や人材の育成などを重視しています。「クレド」をつくって毎朝、唱和しています。理念に関するスピーチや発表会などを通じて忘れないようにしています。ウチは採用の段階から、理念に共感している人を採用しています。理念共有型にして離職率も下がりました。「宗教かよ」と思われるフシもありますが(笑)、重要だと考えています。研修も重視しています。年間、3,000時間ほど実施しています。教えるにも限界があります。拠点もいくつかあるので直接指導はできません。なので、研修のしくみとかを考えています。自分の強みとしては、学ぶことが好きで、いろいろやりたいことがたくさんあり、他社の動きを研究したり、しくみを考えたりすることがメインの仕事です。

 

—ドラッカー本では何が好きですか?

『非営利組織の経営』が好きですね。ぼくたちの業界ととても近いからです。リーダーシップとか理念を共有して経営していくところとか、あの本はとてもフィットしています。何度も読み返しています。付せんの数を見るとドラッカー本の中で一番多く付いているかもしれません(笑)。

 

—今後の重点課題は?

ビジネスの目標としては、介護保険のワクにとらわれない価値のあり方をつくっていかなくてはならないと思っています。制度に左右されない価値の模索です。外出支援とか旅行支援といったことの事業化です。加えて、稼働率を上げる工夫、客単価を上げる工夫は常に必要です。各拠点で定員が決まっているからです。より重度の利用者さんを対象に、難易度が高いケア、専門的なリハビリに挑戦することが大切なのです。わたしたちのディサービスのコンセプトは身体的なリハビリだけではなくて、社会生活の上で自立支援を目指すリハビリです。単に筋トレしてリハビリするのではなく「わたしは再びゴルフをしたいのだ」という目標設定をした上で筋トレがあるということです。買い物に行きたいとか、北海道神宮に行きたいとか。生活上の目的を設定してトレーニングを支援しています。

 

—今後の目標は?

「3年で10店舗」を目標に掲げています。そのためにはスタッフの育成が一番の課題です。これが成功するか否かの分かれ道。さらには、業界全体の人材育成。ウチのスタッフが講師役になって北海道の福祉・介護業界全体のレベルを上げていくようなことにも取り組んでいきたいと思っています。

 

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花岡 俊吾
1965(昭和40)年、北海道恵庭市生まれ。高崎経済大学卒業、(株)ピーアールセンターにて広告・マーケティング業務に従事。2007年独立、「北海道体験.com」のプロジェクトに参画。人口減少の道内経済に貢献すべく、北海道の新しい体験観光情報の発信をライフワークにする。カメラを片手に、年間100日以上をアウトドアフィールドで取材活動。新聞記事連載やWEBコンテンツ制作がメインの仕事。P.F.ドラッカーの読書会、札幌ビジネス塾に10年以上通い、上田惇生先生のサイン入り『経営者の条件』は家宝。著書に『アウトドア&感動体験ガイド北海道』(北海道新聞社)。休日はマラソンと登山に勤しむ。

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