地域や商店街の賑わいにドラッカーの5つの質問を取り入れ、活性化に貢献したい。矢部商店・矢部千尋さん

地域や商店街の賑わいにドラッカーの5つの質問を取り入れ、活性化に貢献したい

 

矢部商店

矢部千尋さん

 

1979年、神奈川県生まれ。

司法書士事務所勤務を経て

家業のガソリンスタンド経営の道に入るも

2017年に廃業、現在は新事業を構想中。

 

家業のGSを廃棄する時期に経営

 

●現在はどのようなことをしていますか?

祖父が創業し、それまで55年間経営してきた家業の部門のひとつであるガソリンスタンド(GS)部門を2017年に廃業。

現在は次のステージへ向かうための移行期です。

地元、茅ヶ崎で読書会などを開催しています。

廃業処理に半年くらいかかりました。

最後の営業日は2017年の5月15日。

ちょうど祖父の命日にあたる日になりました。

ガソリンなどを入れていたタンクが空になり、売り切って終了。

お客さんからは「なんでやめちゃうの」という声をたくさんいただきました。

最後の最後に、長年、地域のみなさんから愛されていたことに気づき、感謝でいっぱいの気持ちになりました。

 

●つらい経験でしたね

一番つらかったのは、メーカーとの契約が切れた翌日のことです。

看板などが白く塗られてメーカーのマークやロゴが消えた時でした。

涙、涙があふれました。身が切られる想いでした。

でも、その作業が終わってクルマや人がいない広い元スタンドだった空間に立つと、ホッとしたというか、真っ白な色だったこともあり、この先、自分はなんでもできるんだという開放的な気持ちも芽生えたことを覚えています。

 

 

●経歴をおしえてください

昭和54年生まれ。39歳です。

神奈川の茅ヶ崎生まれ、横浜育ちです。

学生の時に法律系の仕事を目指していて司法書士試験を受けていました。

30歳くらいまで働きながらチャレンジしていました。

家業のGS経営にかかわってくれないか?というタイミングになり、経営の道に入りました。

2012年のことです。

 

●ドラッカーとの出会いは?

GSの職場は男性が主体で、しかも年上ばかり。

その上、私は車の運転が苦手でした。

そんな環境の中、顧問税理士さんからは「これから経営を担っていくのであれば、ドラッカーを読まなくてはだめだよ。全部読んだ方がいいよ」と言われました。

図書館へ行き『経営者の条件』を借りました。

けど、まったく読めませんでした。

経営というか、スタッフの人にどうやって接していけばいいのかわからず、悩んでいました。

そんな時に地元の青年会議所の先輩から「実践するドラッカー講座」があるよと聞き、たまたま書店に寄ったところ、佐藤等さんの本『実践するドラッカー』のチーム編に目がとまり、購入。

実は最初、読めませんでした(笑)。

でも、この本の著者が来て直々におしえてもらえるんだったら私でも読めるかもしれない!と。

経営者としてスタートできるかも、と感じて参加したのです。

 

 

ドラッカーのことばを使ってみる

 

●その後はどのような実践を?

ウチは当時、地域で一番高い価格でガソリンを販売していました。

お客さまはありがたいことに、多くの方々に利用してもらっていました。

しかし、私個人としては価格が高いことに引け目を感じ、否定的な気持ちを抱いていました。

実践するドラッカー講座では「企業が売っているものを顧客が買っているものは稀である。顧客は満足を買っている」というドラッカーのことばに衝撃を受けました。

そこでどうしたら、もっとお客さんに喜んでもらえるのかを一所懸命に考えるようになりました。

講座を受けドラッカー本を読んで、内向きだった意識が初めて外の世界に目が向きました。

すると、お客さまは洗車の利用者が多く、待合室で待ってもらう時間が多いことに気がつきました。

実ドラ講座を受けて帰ってきた時に、待合室に一人座ってみました。そこには古いPOPがあったり、売りたい!売りたい!というものばかりでした。

まずはここを変えようと。

キレイにしました。

次にウチの利用者に「車をつかって何をしているの?」と聞いてみました。

すると、「週末、郊外に出かけてドライブしているよ」という声が多かったのです。

そこで、季節ごとにドライプマップのようなものを手づくりして配布しました。

反響がありました。

 

●その後は?

学びは継続しなきゃ、と思い、ちょうど相模原市でファシリテーター・鹿島さんの読書会が始まったこともあり、その会に参加をしました。

『経営者の条件』を購入して本格的に読み始めました。

引き込まれるように読了しました。

「こんなにおもしろい本だったんだ〜」と思いましたね(笑)。

『実践するドラッカー』本を読んだ後だったから、“アカ本”(ドラッカー名著集)を読めたのだと思います。

その後はスクリューのように周りのみなさんに巻き込まれていき、ファシリテーター養成講座に通いました。

今、一番好きな本は『創造する経営者』ですね。

顧客が事業であるとか、知識が事業であるといった記述があるからでしょうか。

どうしても企業目線に陥りがちな自分がいるので、お客さん目線になるためにも繰り返し読んでいます。

 

 

●振り返ってみてわかることも?

私はスタッフの方々を、自ら考え自ら決定し自ら行動する知識労働者として見ていなかったんです。

支配・管理コントロールしてしまう習性がありました。

私は大きな勘違いをしていました。

みんなをまとめ切れず、マネージャーとしてダメダメでした。

ドラッカーの「集中」のところに「生産的でなくなった過去のものを捨てること」と、あります。

集中のためには廃棄が必要だと。

自分としてはGS経営をやり続けたいという思いはすごくあったんですけれど、冷静にみると縮小・廃棄する選択が正しかったと思っています。

ウチの店が「10年後までやっていられるのか?」と考えた時、私の力ではむずかしいなあと。

社員の中には40〜50歳代の方も多くいました。

彼らの働くキャリアのためにも人という資源を開放する、ことに納得しました。

ドラッカーさんのことばがあったので勇気を持って決定することができたと思っています。

 

 

●今後はどんなことを?

これからは学びの機会を提供しようと考えています。

自分自身もドラッカーさんのことばを学んで人生が変わったので、ドラッカーさんのことばを気軽に手軽にハードル低く、みじかに使える人が増えればいいなと。

地域活動やら、商店街の活性化などに関わっていますが、イベントをやる時なども、ドラッカーの「5つの質問」って効果的だと思っているんです。

お客さま側から見るということがいかに大切なことかと。

自分たちの想いも伝わり、お客さんも満足するといったそういう関係性に貢献したいと思います。

まずは足元、地元・茅ヶ崎を盛り上げていきたいと思っています。

 

 

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取材記者/エディター   1965(昭和40)年、北海道恵庭市生まれ。高崎経済大学卒業、(株)ピーアールセンターにて広告・マーケティング業務に従事。2007年独立、人口減少の道内経済に貢献すべく、地域の新しい情報の発信をライフワークにする。一眼レフを片手に、年間100日以上をアウトドアフィールドや道の駅・キャンプ場を取材。新聞記事連載やWEBコンテンツ制作がメインの仕事。P.F.ドラッカーの読書会、札幌ビジネス塾に10年以上通い、上田惇生先生のサイン入り『経営者の条件』は家宝。著書に『アウトドア&感動体験ガイド北海道』『北海道キャンプ場&コテージガイド』『北海道道の駅ガイド』(共に北海道新聞社)。休日はマラソンと登山に勤しむ。

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