やる気のない部下のモチベーションを上げる指導よりも「仕事の方向づけ」が大事!

動かない部下を動かすことは、上司にとって胃が痛くなるような悩みです。「指示をするまで動いてくれない」「何度注意しても自主性が見られない」など、その悩みは多岐にわたります。あなたは今、何をやっても効果が見られず、頭を抱えているかもしれませんね。

実は、部下が積極的に行動する組織には共通した特徴があります。その特徴を自らの仕事に活かすことで、状況をガラリ変えることはできるのです。そこで今回は、部下の自主性を育てる効果的な方法についてまとめてみました。ぜひ、参考にしてください!

なぜやる気のない部下が出てくるのか?

やる気のない部下が出てくるのは、理由があります。たとえば、「やりたい仕事ではない」「自分の役割を理解していない」「上司のことが好きではない」などです。そうした理由では、上司の立場からどうすることもできないかもしれません。

しかしそれ以外の理由であれば、やる気のない部下のモチベーションを上げる方法があります。。

まずは、部下に動いてもらおうとする前に、あなたが部下にとってどのような存在なのか自覚することから始めましょう。

以下のデータを見てください。2019年に「エン転職」が約1万人を対象に実施した、「困った上司」に関する調査結果です。

出典:エン転職
https://www.atpress.ne.jp/news/185877

「人によって態度を変える」「いざというときに部下を守ってくれない」「指示・指導が曖昧」「チームを引っ張る能力が低い」の4つを見ると、それぞれの年代で50%前後の回答率となっています。

さて、自分のことに置き換えながら考えてみてください。あなた自身が該当している箇所はありませんか? 特に耳が痛いのは、各年代の半数以上が「指示・指導が曖昧」と回答していることです。

あなたの指示や指導が曖昧だと言いたいわけではありません。でも、部下が動かない問題を解決したいなら、自分は部下にとってどんな上司なのか、まずは考えてみることが大事です。

部下のやる気を引き出す上司のポイントは「関係性」

あなたの態度、在り方、考え方などが変われば、部下の自主性が大きく変化する可能性があります。なぜなら、理想の上司の元で仕事ができると、やる気や意欲、モチベーションが上がりやすいからです。

では、部下にとって理想の上司とは、どのような人物なのでしょうか? ここでも、先ほどの「エン転職」の調査結果を見てみましょう。

出典:エン転職
https://www.atpress.ne.jp/news/185877

各年代によって、トップ3はやや違います。ただし、ダントツで1位だったのは「自分の意見や考えに耳を傾けてくれる」でした。ここでも、自分のことに置き換えて考えてみてください。

あなたはふだん、部下の意見や考えに耳を傾けているでしょうか? もし、「ちゃんと部下の話を聞いている」とか、「日頃から、部下が何を考えているか理解している」と感じるなら、別のところに問題はあります。

逆に、「忙しくて話をする時間がない」とか、「業務に関する必要最低限の話しかしていない」などと感じるなら、改善する必要があると言えるでしょう。そうすることによって、部下との人間関係が深まり、少しずつ自主的に動くようになるかもしれないからです。

つまり、小手先のテクニックで部下を動かすのではなく、関係性を深めることが先決だと言えます。別の言葉でいうと、部下との信頼関係を構築するとも言えるでしょう。どういうことなのか、次項で見ていくことにします。

教育改革より信頼構築が先!

部下を動かしたいなら、教育改革より信頼関係を構築することが先です。そのことに関して、
大ベストセラー『人を動かす』の著者であるデール・カーネギーは、次のように述べています。

「家族、友人、同僚のやる気を起こさせる唯一の方法。それは、協力したいと思われること。そして、相手に感謝しながら正当に評価すること。心から励ますことが大事だ」

つまり、「この上司に協力したい」と思われるような人物であれば、それが部下のやる気につながると言えるのです。「この上司に協力したい」とは、別の言葉で例えると「部下との信頼関係が構築されている」と言ってもよいかもしれません。

実は、上司と部下との信頼関係が、部下の行動にどのような影響を与えるか、実験したデータがあります。こちらのグラフを見てください。

出典:パーソナル総合研究所
https://rc.persol-group.co.jp/column-report/202004280001.html

この実験では、上司が部下に対して行うマネジメントを分類しています。「信頼・承認のマネジメント」「柔軟・臨機応変なマネジメント」「厳格・厳密なマネジメント」の3つです。

そのうえで、どのマネジメントを実施したとき、最も部下の積極的行動を促したかを検証しています。結果、グラフを見るとわかるとおり、「信頼・承認のマネジメント」が最も部下の積極的行動を引き出したのです。

ようするに、部下を動かしたいなら、まずは部下との信頼関係を作ること。それが、部下の自主性を育てる効果的な方法だと言えるのです。

部下の自主性についての問いと解説

経営者やリーダーの支えとして、全国の会場やオンラインで読書会を開催している【実践するマネジメント読書会】の清水先生に、上記を読んだうえでさらに【自らに問いをたてて】もらい、その問いに関する解説を付けていただきました。

あなたへの問い

Q1:あなたのチームが成果をあげるために、あなたにはどんな貢献ができますか?

Q2:その貢献のために、どんな行動がどれくらい必要ですか?

Q3:その行動のためにどれだけ時間を確保できていますか?

▼問いの解説

 ここで紹介された「信頼・承認型のマネジメント」を行うには、仕事の「方向づけ」が必要です。

 「方向づけ」の代表的なものとしては、ミッションを伝える、という事があります。この仕事は、何のためにやるのか、なぜそれが必要なのか、何を目指しているのか、という意味づけです。意味がわからなければ、どんな仕事も退屈な作業になってしまいます。

 また、自由裁量の余地がないような仕事の設計であれば、承認するタイミングもありません。指示通りにやったことを承認されて喜ぶのは最初だけです。自分の提案や判断を承認されるからこそ「もっとその先」を考えるのです。
逆に、何もかも指示・命令する上司や、マニュアル通りを要求する職場では、強制されたことを渋々行い続けるか、そんな職場をやめてしまうかしか選択肢はないでしょう。(※この自由裁量の余地を残す仕事の設計については、「できない部下を切り捨てる前に知っておきたい5つのこと」でお話しました。)

 さらに、「目を離すと部下はサボる」という前提で監視されている職場で、自主性など生まれるはずがありません。「上司の顔色」をうかがうばかりです。自分の仕事の出来を自分で評価ができる環境がなければ、自ら動くことなどできません。(※自己評価できる環境づくりについては、「テレワークをサボる部下に仕事をさせるには?」で触れました。)

 ここでは、こうした仕組みや環境が整えられたとしても・・・「コレ」がなければ台無しになる、「コレ」があればなんとかなるかも。という「上司自身の姿勢と行動」について考えてみましょう。

 カギは、【セルフマネジメント】すなわち上司自身が自分を高める意欲や、成長している様子、あるいは挑戦する姿勢を示しているか、です。
部下の挑戦を支援し励ます働きかけも重要ですが、他人を操る努力ではなく、まずは自分自身が模範となること。
模範となるという事は、仕事を背中で語れるということです。

「部下との面談ばかりしているから時間がなくて、あなたと約束したことをする暇がなくて・・ごめんね。」
「チームの成果があがってないって呼び出されたんだけど、全部自分のせいだって誤ってあげておいたから。」
「この前、君が提案してくれた改善案だけど、部長にOKもらえなかったからさ。今まで通りでやってみて。」
「俺がどんな貢献をすべきかなんてどうでもいい。俺にわかっているのは、君がどんな貢献をすべきかだ。」

という態度では、どんなに部下との信頼関係を構築しようと対話を増やしても逆効果です。

 自分自身の姿勢や行動を振り返ってみましょう。まずは、自分自身が「何のためのどんな行動に時間を使っているか?」を記録して自分を一歩引いて客観的に見つめるところからです。そこから【セルフマネジメント】が始まります。

 目指すべきは「仕事を背中で語れる上司」。尊敬できる上司でなければ、「信頼と承認のマネジメント」が十分に機能することはありません。

ドラッカーの言葉

 ほかの人間をマネジメントできるなどということは証明されていない。しかし、自らをマネジメントすることは常に可能である。
そもそも自らをマネジメントできない者が、部下や同僚をマネジメントできるはずがない。マネジメントとは模範となることによって行うものである。自らの仕事で業績を上げられない者は、悪しき手本となるだけである。

『経営者の条件』まえがきⅲ

【解説者】清水祥行プロフィール

Dサポート株式会社代表取締役、ナレッジプラザ・ドラッカー読書会認定ファシリテータ
一般財団法人しつもん財団認定ビジネス質問家、経済産業省登録中小企業診断士(平成8年登録)

清水祥行
『ドラッカーを読んだら会社が変わった!(日経BP社刊)』『ドラッカー教授組織づくりの原理原則(日経BP社刊)』編集協力。 中小企業におけるドラッカーのマネジメント実践をサポートする[実ドラ・実践ナビゲータ]。 『実ドラ:実践するドラッカー』シリーズ(ダイヤモンド社)をテキストに、1日一冊で、マネジメントを実践的&体系的に学ぶ[実践するマネジメント講座]の講師を全国で務める。  趣味は、受講企業に訪問して実践事例を取材するとともに、自社では気付かない強みをフィードバックすること。

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