あなたの強みを生かす「逆転」の働き方(9)~自分を輝かせようとしない!【その2】協働して目指す成果を決める

今回は「自分を輝かせようとしない!」の二回目。

あなたの強みを生かす「逆転」の働き方シリーズ一覧はこちら。

前回は、自分を輝かせたいなら
(自分自身の強みを生かして活躍したいなら)
自分ではなく、
仲間を輝かせようとする方が近道。というお話をしました。

でも、そればかりでは「滅私奉公」で誰かの犠牲になりそう?!

そんなイメージもあるかと思います。
今回はそんなお話から・・。

共通の成果を目指すのが仲間

誰かのために誰かが犠牲になる・・・。

そんな状態は長続きしません。

でも実は、「自分」を輝かせようとする人ほど、
知らず知らずのうちに誰かを利用し、犠牲にしてしまうものです。

それではもう「仲間」とは呼べません。

そうではなく
「共通の成果」を目指して強みを生かし合う人間関係こそが
「仲間」と呼べる人間関係ではないでしょうか。

そこには、かならずお互いの「貢献」を通じて形成される人間関係があります。

*******

対人関係の能力を持つことによってよい人間関係がもてるわけではない。
自らの仕事や他との関係において、貢献に焦点を合わせることによって
よい人間関係がもてる。(中略)
生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義である。
仕事上の関係において成果がなければ、温かな会話も感情も無意味である。

経営者の条件 p.91-92
*******

企業組織は、家族や地域コミュニティとは違い、
その組織自体の存続や利益が目的ではありません。

和気あいあいとしている集団だけれど、
その「ゆとり」の元は、その外部の人たち(お客様や外注先、あるいは社会全体)の
犠牲の上になりたっているとしたら・・
とても恐ろしいことです。そして、いずれ滅びるでしょう。

組織の成果は、必ずその組織の外部にあって、
その目指す成果を共有するからこそ、「協働」できる仲間になるのです。

ですから、ドラッカー教授は、
互いに敬意ははらうべきだ。といい、
愛しあう必要などない。と言っています。

別に和気あいあいなどしていなくても、
その成果に向かって真剣に仕事について取り組み、
実際に成果をあげるのかを重視すべきなのです。

(※この文章を引用するとよく勘違いされるのですが、
 ドラッカー教授は、温かい関係を否定しているわけではありません。
 「頭のよい人たち、とくに若い人たちは、人への対し方が潤滑油であることを知らないことが多い。
  (中略)
  「お願いします」や「ありがとう」を口にすること、
  名前や誕生日を覚えていること、
  家族について尋ねることなど簡単なことである。
  もし素晴らしい仕事が、人の協力を必要とした段階でつねに失敗するようであれば、
  一つの原因として、人への対し方、すなわち礼儀にところがあるのかもしれない。」
 とも語っています。〈「明日を支配するもの」p.198〉)

強みを生かし合う関係は、最初から役割分担できない

ここで、互いの強みを生かし合う人間関係について考えてみましょう。

「私の強みは〇〇だから、これを生かしてください。」とか、
「ウチの組織は、俺の強みがわかっていない。」

といったセリフは、強みの本質を知らない発言です。

仲間との相互作用のない、いわば「無重力下の真空状態」での個性や強みなんてあるはずがないからです。

 

・・・ちなみに「個人(Individual)」という概念は、
もともとは「それ以上分割不能な最小単位」という意味をもっています。
この考え方の弊害が、仲間と仕事を行う上で起こっているように思います。

これに対して、平野啓一郎氏(作家)が提唱されたのは『分人(Dividual)』という概念。

社会や周辺の環境とは全く独立した「分割不能な唯一無二の本当の自分」など現実からは程遠い。

という平野氏の主張には、大いに考えさせられるものがあります。

たしかに私たちは、職場にいるときの顔、お客様の前での顔、家族といるときの顔・・・
「さまざまな人間関係ごとに見せる複数の顔」の“すべて”が本当の自分なはずです。
・・・NHK教育テレビ「ピタゴラスイッチ」の挿入歌『ぼくのおとうさん』の歌詞を思い出します(笑)

 

きっと、
Aさんたちのチームにいるときには、自分の専門知識がチームにとっての力となり、
Bさんたちのグループと合流したときは、持ち前のムードメーカーであることが重視され、
Cさんたちのチームと仕事するときには、この業界で長く働いていることが皆の安心につながる、
といったことが起こっているはずです。

どこに行っても通じる、どんな環境でも重宝される自分の強みなんて存在しないのですから、
最初から役割分担などできないのです。

この状況でどんな貢献ができるか?という試行錯誤の判断基準

いま、この状況で・・・
この仲間たちといるときに・・・
仲間たちと共有している「目指す成果」に対して、
自分はどんな貢献ができるか?
を仲間との関係で考えて仮説を立て、
挑戦し、互いにフィードバックして試行錯誤し続けることこそが、
自分自身の本当の強みを見つけ生かすカギなのです。

決して、無重力下の真空状態の(唯一絶対の)「強み」が自分にないことを嘆いたり、
「自分の強み」(だと思い込んでいるもの)を生かせる仕事がないことを呪ったり、
自分への期待が変化していくことを不安に感じたり、
強みを生かして活躍している人を羨んだりしている場合ではありません。

 

いま、ここで。 自分にはどんな貢献ができるか?

に集中しなければなりません。

それを考えるための基準が、仲間と共有する「目指すべき成果」です。

*********

Q:あなたの組織は、どんな成果(外の世界のよい変化)を、
 地域、社会や業界、市場にもたらすための組織ですか?

Q:あなたのチーム(部や課など)は、
 どんな貢献を組織全体から期待されていますか?

Q:チームがその期待に応えるために、
 あなたはどんな貢献ができそうですか?

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『ドラッカーを読んだら会社が変わった!(日経BP社刊)』『ドラッカー教授組織づくりの原理原則(日経BP社刊)』編集協力。 中小企業におけるドラッカーのマネジメント実践をサポートする[実ドラ・実践ナビゲータ]。 『実ドラ:実践するドラッカー』シリーズ(ダイヤモンド社)をテキストに、1日一冊で、マネジメントを実践的&体系的に学ぶ[実践するマネジメント講座]の講師を全国で務める。  趣味は、受講企業に訪問して実践事例を取材するとともに、自社では気付かない強みをフィードバックすること。

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