社内でドラッカー読書会を実施し、「札幌ビジネス塾」でもドラッカー実践者たちの学びをシェアしたい〜(株)リーツ  渡部謙介さん

リーツ渡部さん

(株)リーツ 代表取締役 渡部謙介さん

1987(昭和62)年、札幌市生まれ。

北海道工業大(現北海道科学大)工学部情報デザイン学科卒。

2012年、会社を創業。代表取締役

『実践するドラッカー』本からドラッカーを学ぶ

―業務分野をおしえください

渡部 ITのシステム会社です。主にソフトウェアの受託開発をしています。メイン業務は教育系の学習アプリやeラーニングシステムの開発、業務支援システムなどを受託しています。これ以外にはWEBサイト制作とデザイン制作があります。

この3本柱が当社の業務。「つかう・つたえる・みせる」の本質を見極め、依頼主のさらなる強みを開発していく仕事です。ホームページをつくりたいという注文があれば、ロゴデザインもどうでしょうかとか、名刺もつくりますよとか、提供できる価値を高める提案をしています。

当社の理念は、「成長の感動づくり」。会社や個人の成長に関わることは事業領域ということで、自社の強みとテクノロジーを生かして取り組んでいこうと考えています。

―ご自身はデザイナーですか?

渡部 学生時代は工学部の情報デザイン学科というところで情報とデザインを学びました。理系の方が就職の際に、なんとなく職につけそうなイメージがあったからです(笑)。

デザインの領域の中でも、いわゆるグラフィックデザインやWEBデザインです。大学の授業ではホームページをつくったり、デザインの歴史やデザイン思考を熱心に聴講しました。わたしは幼少のころから絵を描くことが好きでした。デザイナーというよりはデザイナー的な考え方が軸になっています。

システムとかウェブは、自分で勉強しました。独学です。とにかく本を読んだり、ネットで調べたりして覚えました。当社には経験豊かなスタッフがいることもあり、スタッフから学ばせてもらっています。

―会社の創業はいつですか?

渡部 25歳の時に創業しました。2012年10月からですので、8期目になります。わたし自身は大学を卒業したあと、2年近く、アルバイトやフリーのデザイナーをやっていました。その頃のご縁で現在のお仕事へつながり、会社を創業。数年はスタッフ2~3人でやっていました。

その間は特にマネジメントとかは必要なく、来た業務をこなすだけでした。大学の同期に入社してもらったりして、今は5人います。人数が増えてきて、このメンバーをどうまとめたり、どういう風に引っ張っていけばいいのか、まったくわからなくて。そんな時に知人から公認会計士でありドラッカー学会理事の佐藤等さんを紹介いただきました。4年くらい前のことです。

―佐藤さんの本からドラッカーを知る?

渡部 そのころ、どういう風にマネジメントをしたらいいのか、マネジメントのマの字もわかりませんでした。これは何か学ばないと何も情報が入ってこないなと思いました。

ある研修を受けた際、「ビジネス書を読んでレポートを書け」という課題がありました。その時、知人が推薦してくれたのが、『実践するドラッカー 思考編』(ダイヤモンド社)でした。彼いわく「経営のビジネス書では、ドラッカーがいいと思うが、難しいぞ」と。では「何から入ればいいの?」と聞いたところ、佐藤さんの編著本を教えてもらったのです。

最初に『思考編』を読んで、次に『行動編』を読んで。研修のレポートを書き上げました。

―その後、読書会に参加?

渡部 はいそうです。読書会ではドラッカーの名著『経営者の条件』(ダイヤモンド社)を読みました。佐藤さんの解説本『思考編』に書かれていたドラッカーことばのオールスターたちが出てきた感じでした(笑)。名言や金言といったことばを回収していくみたいな感覚でした。「このことばはここに書かれていたんだ」みたいな。

その一方で、ドラッカーの書いた本(エターナル版)は難しくてぜんぜん内容が理解できないことが衝撃でした(笑)。それでも、読書会という会に参加を続けることで、全章にふれることができました。

とりあえず1冊、読み終えた時、進行役のファシリテーターの田畑祐司さんに聞いたんです。「ドラッカーって、どうやれば一番最短で学ぶことができますか?」と。すると「ファシリテーター養成講座というものがあるよ」とおしえてもらいました。すぐに参加することにしました。

―養成講座はどうでしたか?

渡部 講座ではマネジメントの体系について学びました。けれど、自分の現場である会社にはぜんぜん落とし込むことができませんでした。そこで、まずはセルフマネジメントのことから取り入れて実践してみようと思いました。まずは、時間管理に取り組んで、自分の活動を35個程度に分類しました。成果をあげていない活動を減らしたり、得意な人に任せました。

次に「強み」について意識しました。強み診断ツールのストレングスファインダーをやってみた結果、わたしの場合は、着想・収集心・内省・適応性・運命思考と出ました。たくさんの情報を集めて、一人黙々とアイディアをつないで、現実的に実現可能なかたちに整えることが得意です。これは、スタッフ全員でやりました。お互いに違うやりかたで進めていた仕事の根っこが理解しあえた感がありましたね。

エマジェネティックスというEG研修も取り入れました。ドラッカーを学ぶ前までは、人の弱みをどうするかと悩んでいたのが、今は人の強みをいかに引き出すかだけ考えるようになりました。『経営者の条件』を読んで一番組織内で使えた部分は「強みを活かせ」というところかもしれません。

―その後は理解が進む?

渡部 運営が異なる2カ所でドラッカー読書会のファシリテーターをしています。こういった読書会の機会を経て、ようやくドラッカーの言葉と実際の仕事での使い方が見えてきました。ドラッカーはどの本を読んでも「命令してこない」んです(笑)。「やってみてください」というスタンスで問いかけてくれる。

原理原則が書かれているので、「書いてあることから外れたら失敗するけど、そのまま素直に取り入れたら失敗はしないよ」という前提で書かれている気がしています。なので自分の軸がつくれるいい本だなという印象です。

とりあえず、3年間はきっちりドラッカーを学ぼうと、集中しようと考えています。経験上、だいたい3年しっかりと取り組んだら基礎ができるという感覚があります。

 

社内読書会でことばを揃える

―社内でも読書会を開催する?

渡部 当社の仕事は個々がパソコンに向かってもくもくと作業している、という感じです。「なんかちょっとヘンだよね」と。コミュニケーションがないなと思い、月曜日はランチ会と称してスタッフ全員でご飯を食べに出ることにしています。そんな流れで、ドラッカー本の読書会をやることにしたのです。社内の「ことばを整える」という意味も含めて。2019年2月からです。

するとだんだんベクトルが揃ってきました。正統派の読書会の作法に習って、うちでも毎回、懇親会もしています(笑)。懇親会では、「3人の石工の話」を出して、「なんのために働いているのか、生活のためなのか、より良い仕事のためか、でもお金のためだけでもないよね」とか。「貢献ってぼくらの場合はどのようなことか?」といった話をするようになりました。そんな下地があって、社のミッションを制定することに至ったのです。

―同業他社との違いはどんなところ?

渡部 ユーザーインターフェースなどは、デザイン性が高いものに仕上がるところが他社さんとは異なる部分です。機能性の伴った見た目の美しさは強く意識しています。加えて、うちは開発者が発注元の担当者と直接話をします。そのため、話が早く、スピード感があります。システムなどは作ってからフィードバックを受けて改善していくことも得意です。電話1本でここを直してほしいと言われたら、即対応します。

多くのシステム会社では「仕様書」というものがあり、要件を定義して変更があったらその都度、変更を盛り込んで作業を進めるため時間がかかります。しかしうちは直接、エンジニアが口頭でやり取りして作っていきます。スピード感と柔軟性があり、フレキシブルに対応ができるかと思っています。

―今後の抱負をおしえてください

渡部 提供しているサービスの中には、人口構造の変化を受けやすいものもあります。子どもの数が減り、労働人口も減っています。正しいフィードバックは現場に行くこととドラッカーは言います。まずは現場の変化を見て聞いて知る。新しい取り組みとして、学習の振り返りや隙間時間で学べる動画学習のしくみや、業務改善に向けたペーパレス化といったサービスも、お客さまからのお声があり、進めています。

組織においては、スタッフの給与水準を高めていくことはもちろん、ワクワク働ける環境づくり、より成長を実感できるしくみ作りを促進したいと思っています。

―勉強会でもドラッカーを?

渡部 今わたしはナレッジプラザという会の勉強会「札幌ビジネス塾」の「隊長」という役を拝命しています。ここではドラッカーのマネジメントをベースにビジネスについて学ぶ場。月に1回、勉強会と懇親会を開催しています。

そのドラッカーが亡くなって14年。年月も経ちました。ドラッカー本の事例も一部は古くなってしまった感もあるかと思います。そのドラッカーから学び、成果をあげているのは今現在最前線でビジネスをされている人。『ドラッカーを読んだら会社が変わった!』(日経BP社)に事例として掲載される人のナマの話を聞いてみたい。ドラッカーのことばを今にどのように使って成果をあげているのかを、みなさんとシェアしたい。そんな想いがわきあがってきました。

ドラッカーを中心軸におきつつも、それ以外の分野の知識も相互補完できる人をお招きして「札幌ビジネス塾」で学ぶ1年にしたいと思っています。そういう機会はなかなかないので、来年2020年の講座には、ぜひ多くの人が参加してほしいと思っています。

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取材記者/エディター   1965(昭和40)年、北海道恵庭市生まれ。高崎経済大学卒業、(株)ピーアールセンターにて広告・マーケティング業務に従事。2007年独立、人口減少の道内経済に貢献すべく、地域の新しい情報の発信をライフワークにする。一眼レフを片手に、年間100日以上をアウトドアフィールドや道の駅・キャンプ場を取材。新聞記事連載やWEBコンテンツ制作がメインの仕事。P.F.ドラッカーの読書会、札幌ビジネス塾に10年以上通い、上田惇生先生のサイン入り『経営者の条件』は家宝。著書に『アウトドア&感動体験ガイド北海道』『北海道キャンプ場&コテージガイド』『北海道道の駅ガイド』(共に北海道新聞社)。休日はマラソンと登山に勤しむ。

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