「美しい会社とはなにか?」著者佐藤等が語る『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』の読み方使い方―マネジメントとリーダーシップの関係もわかりやすく解説

上田惇生先生のお墓参りに行った日(2019.8.30)にその連絡はありました。

「ドラッカーの新刊を出したい」

最初の打ち合わせは、9月13日にありました。雑誌『日経トップリーダー』の連載を核にした企画でした。しかし、驚くべき言葉が続いてありました。

「年内に出したい。校了日は12月6日です」

「えっ、2か月しかないのですね…(沈黙)」

「わかりました。何とかしましょう」(と答えてしまった私)

…ということでスタートした企画が無事成就し、巻頭に上田惇生先生のインタビューが掲載された本書、『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』(日経BP社)が店頭に並び始めました。

生前の上田先生のご厚情を感じながら2か月弱で上梓できたのは、間違いなく先生から見えない力を得た結果です。

 

 

 

「世の中には『美しい会社』と『醜い会社』がある」

本書の帯にある「世の中には『美しい会社』と『醜い会社』がある」とは上田先生のインタビューにあった言葉です。

2017年4月号から連載再開に際して頂いたインタビューでした。このインタビューが生前の上田先生にお目にかかった最後の機会となってしまいました(2019年1月10日ご逝去)。

どのような1冊にすべきか。

時間はなかったのですが、結局本書のテーマを考えるのに約1か月かかりました。何度も先生のインタビュー記事を読み直し、本書のテーマを「美しい会社」とすることにしました。

本書は「美しい会社とは何か」を考える1冊です。

答えは、人により異なり、多様でしょう。

私なりの答えを導き出し、「まとめ」に書かせてもらいました。

マネジメントとは体系である―マネジメントを修得する順番

13の物語は、2017年4月から始まった事例を並べ替えて配置しました。順番には意味がありますのでできれば、1日1話じっくりと反芻しながら読み、味わって欲しいと思います。

順番が意味するものは、ドラッカー教授のマネジメントの体系を意識し、番号の若い方がより根本に近い原理原則となっています。それはマネジメントという能力を身に付けるおおよその順番を意味しています。13の物語は、「挫折と克服の物語」として語られます。各物語がドラッカー教授の言葉との出会いから変化を遂げやがて成果をあげるという運びになっています。これをドラッカー・プレミアムといいます「あとがき」参照)。上田先生の言葉です。各物語で主に用いられた原理原則は以下のとおりです。

物語1の原理原則
リーダーシップとは人ではなく、ミッションによって組織をリードすることである

物語2の原理原則
ミッションをはじめとした複数のツールを用いて組織を方向づける

物語3の原理原則
利益の最大化ではなくミッション実現のために「必要な利益」として方向づける

物語4の原理原則
卓越性(強み)と市場を特定し、そこに集中して事業を行う

物語5の原理原則
事業は知識で専門化し、市場や製品で多角化する。もしくはその逆で、市場で専門化し、知識で多角化する。

物語6の原理原則
事業は常に顧客が求める価値から考える

物語7の原理原則
モチベーションは、自己決定と自己評価(有能感)によってもたらされる

物語8の原理原則
イノベーションは強みを基盤として行う

物語9の原理原則
組織を通して自分の強みを生かし、貢献することで自己実現を成し遂げる

物語10の原理原則
経営者やマネジャーに真摯さは欠かせない

物語11の原理原則
組織や過去の活動から真の強みを見つけ、徹底的に磨き、活用する

物語12の原理原則
コミュニケーションはどうやって伝えるかではなく、組織の目的など何を伝えるかが大切

物語13の原理原則
優れた組織の文化はリーダーシップの源泉である

マネジメントの基礎-組織は道具である

「はじめ」では、これらの13原理原則の基礎となっているメタ原理とでも呼ぶべき原理を解説しています。以下の5点でが、本書は事業のマネジメントを中心に扱った1冊です。

①組織は道具である

②組織という道具には目的がある

③組織を方向づける

④事業を可視化する

⑤事業のマネジメントは経営者だけのものという誤解

ドラッカー教授のマネジメントは、組織を方向づけのマネジメントと呼ぶこともできます。私たちのセミナーなどでは通常「10の問い」を用いていますが本書では「12の問い」として拡張バージョンを掲載しました。すべてにすぐに答えられないと思います。一つが突破口となり、劇的な成果を手にした組織をいくつも見てきました。ぜひ活用してください。

各物語にはドラッカー教授の言葉を掲載しています。手元に本をお持ちの方はぜひ前後も含めてお読みください。また物語の理解を深める「解説」と自分に置き換え、実践の導入を図るための「質問」を3つ配しました。本の帯には「組織の病理を発見する『39の問いかけ』」とあります。質問は時間をかけてじっくり考え、答えてください。できれば組織やチームで取り組めばより効果的です。

特別篇として元キリンビール副社長で『キリンビール高知支店の奇跡』の著者である田村潤さんとの対談を掲載しました。同書の「まえがき」には社員の主体性をいかに発揮するかという課題に取り組む姿が記されています。私がこの物語から学んだ最大のものは、「組織が方向づけられてはじめて社員の主体性は発揮される」というものでした。これらを「田村氏とのインタビューから学んだこと」としてまとめました。このようなことを意識してぜひ『キリンビール高知支店の奇跡』をお読みください。

ささやかな実践のすすめ

多くの「美しい会社」が世に生まれることを念じて本書を世に送り出しました。その実現は、経営者ばかりではなく組織に属する一人ひとりの「ささやかな」実践にかかっています。「ささやかさ」は私が上田先生から学んだ大切なことの一つです(「あとがき」参照)。

 

実践者が行っている実践のためのポイントも参照してください―【ドラッカーの名言に学ぶマネジメントを実践するための秘訣】

多くの実践者が通う読書会のお試し体験の開催地情報とお申し込みはこちらから―【実践するマネジメント読書会🄬】

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<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。 ドラッカー学会理事。 マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。 ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。 Dサポート㈱代表取締役会長。 ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。 公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。 誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。 編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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