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「わたしの非常事態宣言—でも悪いことばかりではないぞ」プロジェクトの趣旨に賛同し、投稿させていただきます。
私は、西條先生が主宰するエッセンシャル・マネジメント・スクール(EMS)に登壇する講師の一人です。その際、ドラッカー・マネジメントを皆さんに紹介しています(ドラッカー学会理事)。
会計事務所を主宰する者として…現場から
投稿には、門外漢であることから一人ひとりの感染症予防の観点は、含まれていません。しかし組織社会といわれる現代において、一部の組織に維持継続、正確には事業の維持継続に重大な危機が迫っています。
私は、札幌で会計事務所を主宰していることから、日々、観光業や飲食業などから悲鳴が届いています。この時期のアドバイスは、「キャッシュ イズ キング」の一言です。今は「入るを量りて出を為す(制す)」の精神で臨むことしかありません。政府等の金融支援や助成などを最大限活用することでまずは何とか事業の継続性を確保してほしいと願っています。
しかしそれでもコロナ禍の終息が見えない今、事業の継続が困難となる場面が少なからず訪れるかもしれません。そのときは再起を期してリセットするタイミングと手法を間違えないようにしてください。「―悪いことばかりではないぞ」という観点からは、ピンチがチャンスに変わることもあるからです。
30年以上職業会計人をやっていると、1990年代のバブル崩壊、2000年代初頭のITバブルの崩壊、2008年のリーマンショックを生き残った事業(あえて企業ではなく事業といいます)にやはり共通点があるといわざるを得ません。事業により、世の中に価値が提供され、その事業を支える従業員の雇用が守られるからです。共通点はただ一点、その事業は顧客の支持を得ているかです。
「新しい現実」と「すでに起こった未来」【観察しよう】
一方で忘れてはいけないのは「コロナ禍は必ず終息する」ということです。6ヶ月なのか1年なのか、はたまたそれ以上かかるのかは、誰にもわかりません。しかし確実にいえることは、そのとき私たちの意識と行動が変わっているということです。
「アフターコロナ」という言葉には、コロナ禍の後におとずれる世界観の変化を内包しています。そしてその変化は、今まさに起こっているということです。
西條先生が主宰するEMSでは、「方法の原理」を共有しています。つまり、有効な方法は、目的と状況によって決まるということです。これをコロナに置き換えると、アフターコロナでは状況が大きく変化しているということです。それは、アフターコロナを迎えた時、採るべき有効な方法が変わること意味します。有効な方法とは、具体的には事業や仕事の変化として現れます。
この変化を見逃すと、私たちは従来の古い世界観、価値観、慣習、ルールなどに従って行動することになります。つまり慣れたものに従うという慣性の法則の下、行動してしまいます。ドラッカー教授の言葉を借りれば、「新しい現実」が到来しているのに、古い現実をもとに意思決定し、行動してしまうのです。
このような観点から考えた場合、「コロナ禍」は一つのきっかけとして位置づけられます。
たとえば、今回のプロジェクトの発起人のお一人であるサイボーズの青野社長は、10年前からテレワークを始めていたという自社の取り組みを紹介されています。この事例からわかることは「コロナ禍」でテレワークが始まったのではないのです。すでに行われていたことが、今回をきっかけに多くの方が体験し、主流化し行くかもしれないということです。
ドラッカー教授は、これを「すでに起こった未来」といいます。テレワークを多くの人々が体験し、「テレワークでいいじゃない」から「テレワークの方がいいじゃない」に意識が変わるとき、働き方にシフトが起こります。
シフトとは、後戻りしない、重大は質的変化のことをいいます。これに対する言葉としてトレンドがあります。これは、質的な変化なしに量が増減することです。新車の販売台数の増減はトレンドですが、ハイブリッド車やEV(電気自動車)のシェアが上がることは、シフトと関係しています。本質的な変化であるシフトこそが重要です。
アフターコロナ~コロナ禍のあとにくる機会
さてコロナ禍との人類の闘いは、今も続いています。しかし、数ヶ月から十数ヶ月後には、終息の日は必ず来ます。私たちは、その間、観えるものに目を凝らさなければなりません。そして、もし本当に「新しい現実」の到来を告げるものかどうかに関心を持たなければなりません。
「でも悪いことばかりではないぞ」~コロナ禍を一つのきっかけとして新しい時代の変化をよく観ましょう。今が観察のチャンスです。それは、変化を機会に変え、新しいチャンスを手にすることを意味します。事業の継続性に対する重大な危機が去ったとき、「過去の有効な方法」ではなく、「新しい有効な方法」を手に立ち上がらなければならないのです。
社会生態学の視点からコロナ禍を観察してみよう
マネジメントの父といわれるドラッカー教授(1909~2005)には、もう一つ社会生態学者という側面があります。この社会生態学(ソーシャル・エコロジー)という視点から、コロナ禍の真っただ中ゆえに観えてきたものを中心に投稿することで、みなさんの周りで起こっている「新しい現実」という変化を観察する眼を養う一助になればと思っています。
エッセンシャル・マネジメントスクール西條代表、さくらインターネット田中代表、サイボーズの青野代表が発起人となって「わたしの非常事態宣言 − でも悪いことばかりではないぞ」プロジェクトが発足されました。どのような内容でも結構です。みなさんもぜひハッシュタグ「#わたしの非常事態宣言」でポジティブな発信をお願いいたします!
最後に医療の現場で奮闘している皆さまに感謝と敬意を捧げます。どうかこの国をお守りください。
私たちは一人ひとりできることをしましょう。
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