ドラッカーマネジメントの中核―自分の強み(長所)の見つけ方/自分を活かすトリセツのつくり方]【第3回】自分の仕事を「作品」としてみる

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Q:いままでのあなたの「作品(=仕事)」を10個以上挙げてください。

 「自分トリセツ(自分取扱説明書)」の次のページに書いてほしいのは、この問いとそれに対する回答です。

 私たちは仕事について、努力や苦労という投入物(インプット)に目が行きがちです。そのため、『あなたのこれまでの「仕事」を教えてください。』と尋ねると、多くの場合、

「10年間、ルートセールス業務に従事してきました」とか、
「5年間、販売管理部担当でした。」
「経理に5年いました」という回答になりがちです。

 しかし、ここでは仕事の結果として生み出された成果物(アウトプット)に注目してください。
 それは、仕事の結果を「作品」としてみること。

「いい仕事していますねぇ」

と、感動されるほどのことは少ないかもしれないませんが、ご自身が取り組んだ仕事の一つ一つは、間違いなくあなたの作品です。

ドラッカー教授も、仕事を生産的なものにするには、「仕事のアウトプット」から考えることだといいます。

 アウトプットがインプットと大きく違うのは、「思い通りにいかないこともある」ということです。

 インプットがうまくできたかは自分次第ですが、アウトプットを評価するのは相手だからです。細心の注意を払ったのに失敗することもあれば、直感で(適当に?)行っているのに次々と成功することもあります。

 実は、さほどには努力せずに不思議とうまくいっている時こそ、あなたの強み(長所)が発揮されている可能性があります。

 だからこそ、努力(インプット)に注目してひらすらがんばるよりも、いちど手元から目線をあげて、努力の向こうにあるはずの結果(アウトプット)を見る必要があるのです。 「結果が全て」ではありませんが、「結果が、適切さをしめしてくれる」のです。 これまでのあなたが関わった仕事のアウトプットを棚卸しして、それによってできあがったものを「作品」だととらえて振り返ってみましょう。

 

モノづくりではなくても

 「作品?そんな大それたもの、つくったことがありません。」「私は、モノをつくる仕事ではないので。」とおっしゃる方もあると思います。私たち現代に働く人は、普段は、筋力よりも、アタマやココロを使って働く「ナレッジワーカー」です。ナレッジワーカーの作り出すものアウトプットは、「コレです。」と人に指し示すような有形物とは限りません。例えば、以下の様なイメージです。

(業績に直結する仕事)

  • 入社2年で50件の新規顧客獲得を実現したこと。
  • 悲願だった大手M社からの大型受注を獲得したこと
  • 取引先K社の担当者の悩みを解決したことでK社の取引規模が変わったこと。
  • 取引先F社の成長のきっかけをつくったこと
  • 販路として量販店ルートを開拓し軌道に乗せたこと

(仕組みをつくる仕事)

  • 各人バラバラだった配送ルートを統合する「ルートマップ」をつくったこと
  • 当社独自の業務連絡システムをつくって全社導入できたこと
  • R市の工場を立ち上げたこと
  • 業務日報の様式を改定したこと
  • 今も活用される「目標管理制度」を導入したこと
  • 販売促進企画を40個つくり、その半分を通したこと

(誰かを支える仕事)

  • お客様のNさんから「あなたのおかげで人生が変わった」と感謝されたこと
  • いまはエースプレイヤーとなった「O君」。
    (彼がどう思っているかは別として、新人の彼を育ててのは自分。)
  • 新規出店プロジェクトチームのメンバーとの絆こそが、私の作品。
  • 常態化していたシステムエラーの原因を突き止めたこと。

などなど、です。
10個「以上」なので、これを機会にこれまでの仕事の棚卸をするつもりで100個あげてもよいでしょう。

【『作品一覧』をつくるだけでも気づくことがある】

 ご自身の『作品一覧』を作って、今後の仕事を書き加えていくことで、ご自身の強み(長所)に意識が高まるはずです。今後さらに、どんな範囲の作品、どんな範囲の仕事を積極的に取りに行けば、自分の強み(長所)に磨きが掛かるかを考える材料になります。 「大きく、しかも集中が可能なように範囲を特定」できるようになったとき、卓越した強み(長所)になることでしょう。
 (※『創造する経営者』より)

 きっと、後から思い出す仕事もあると思います。 もし思いついたのなら、過去の失敗作や駄作(?)も含めて書き加えていくとよいでしょう。 その頃には、失敗作や駄作だという評価だったとしても、時代を経て評価が変わる可能性がありますし、その失敗があったからこそ生まれる優れた作品もあります。

 今後も、過去の作品を思い出した時に加筆できるように、そして、新たな作品を書き加えられるように、ノートには空白スペースをとっておきましょう。

 さて、今回は、この仕事を振り返っていただくことに集中して欲しいので、この辺りで終わりにします。
 あげていただいた作品への考察をする質問は、次回以降に譲ります。
 

Q:いままでのあなたの「作品(=仕事)」を10個以上挙げてください。

Q:今後どんな作品を、『作品一覧』に書き加えていきたいですか?

 

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【第1回】あなたの『自分取扱説明書』をつくりましょう!

【第2回】あこがれた職業は、自分の仕事観を示す。

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『ドラッカーを読んだら会社が変わった!(日経BP社刊)』『ドラッカー教授組織づくりの原理原則(日経BP社刊)』編集協力。 中小企業におけるドラッカーのマネジメント実践をサポートする[実ドラ・実践ナビゲータ]。 『実ドラ:実践するドラッカー』シリーズ(ダイヤモンド社)をテキストに、1日一冊で、マネジメントを実践的&体系的に学ぶ[実践するマネジメント講座]の講師を全国で務める。  趣味は、受講企業に訪問して実践事例を取材するとともに、自社では気付かない強みをフィードバックすること。

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