人生100年時代のセルフマネジメント 第3回 幸せに生きる―就活生も転職や副業希望者も知ってほしい仕事と強みの究極の関係【実践するライフシフト】

わずか数十年前までは、ほとんどの人にとって、自らの強みを知っても意味がなかった。生まれながらにして、仕事も職業も決まっていた。(中略)ところが今日では、選択の自由がある。したがって、自らが属するところがどこであるかを知るために、自らの強みを知ることが必要になっている。『明日を支配するもの』(1999)

世の中にまだ明確な階級があった時代、人々の職業は、親から子へ引き継がれ、固定化されていました。その後、市民革命により人々は自由を手にし、折しも起こった産業革命の波に乗り、その多くは農村から都市へと移り住み、工場で働くようになりました。

農村に残る者、工場で働く者、都市で飲食店などのサービス業を行う者など人々の選択肢は格段に増え、自由の恩恵を享受するようになりました。

工場の中で蓄積される一人ひとりの能力の多くは、その工場特有のものであり、熟練工を目指して働きました。多くの人は一生を同じ工場で過ごすことで、その能力を高めていきました。人は自由の中にも職業の新しい固定化の中で人生を過ごしていました。

ところが20世紀が幕を開ける頃、工場には大量生産のための機械が導入されるようになりました。さらにオートメーション化へと向かい工場から多くの人がいなくなりました。しかし工場から人が消えたのではなく、その多くは機械を動かすオペレーターや出来上がったものを検査する仕事に就くようになりました。

人々は工場の中で様々な仕事に就く機会を得ました。また大量に作られるモノを売りさばく販売員も必要になりました。機械を動かしたり、モノを販売したりというスキルは、だんだん他の組織に異動しても通用するようになってきました。

こうして人々が仕事や職業を選択する機会さらに増えました。

知識労働者(ナレッジワーカー)登場

1960年頃、ドラッカー教授が知識労働者と呼ぶ人たちが世に出現しました。彼らの前には、機械はありませんでした。彼らはデスクに座り、情報を集め、加工し、書類などを作成します。ときおり会議を行い、連絡を取り人に会い、提案・交渉・調整などを行います。これが彼らの仕事です。彼らに共通することは、連携して組織が生み出すものを人々に届けることです。

こうして、これまでの仕事のほかに「知識労働」という仕事が大量に世の中に誕生しました。

さらに現代では、たとえばパソコンに向かい、情報を加工し、発信したり、システムを構築したりするテクノロジストと呼ばれる知識労働者が増えています。

彼らの特徴は、モノやサービスを生み出し、届ける技能を自分で有していることです。特定の機械や情報機器などに左右されることなく、他の企業に転じてもこれまで以上のパフィーマンスを出すことができます。

そしてついに私の世代では理解できない…ユーチューバ―なる職業を象徴とするような新しい仕事が今も生まれています。こうして何百年も仕事の選択肢は、時代とともに多様化し増えています。

このような時代の流れの中に私たちはいます。

幸せに生きる仕事と強みの究極の関係

2013年にオックスフォード大学のマーケティングスクールの研究者マイケル・A・オズボーンが書いた論文には、AI(人工知能)の登場で影響を受ける仕事を分析するため702の仕事が挙げられています。

私たちは、おそらく1000を超える仕事から選ばなければならない時代に生きているのです。自分を最も生かせる仕事に出会うことができた人は幸いです。

その幸せの源にあるものの一つが自分の強みを生かすことであることは間違いありません。

弱みを使っても成果はほとんど上がらないからです。

人生のなかで多くの時間を費やす仕事。

その選択が人生を決定づけるといっても過言ではありません。

人生100年時代、何度仕事や職業を変えることになるのかわかりません。

自分の強みを知ることは、善き人生を送ることに直結します。

おそらく長い間働き、世の中の役に立つ最も重要な秘訣です。

自分の強みを知り、これを磨き、仕事で使って世の中の役に立つ。

だからドラッカー教授は問う

得るべき所はどこか。『明日を支配するもの』

自分と向き合い問う、自分が光り輝く場所はどこか…

前回紹介した言葉、「私的な強みは公益になる」『マネジメント』(1973)の「私的な強み」は、一人ひとりがもっている個人の強みという意味です。

この言葉は、人の強みを世の中のために使うこと、それがマネジメントの役割であることを示しています。しかし、実際に自分の強みを組織で発揮するのは自分次第。だから人の強みを自ら意識して仕事で使って世の中のためになる。一灯を守って一隅を照らす。これが人生100年時代を幸せに過ごすための大切なポイントです。

セルフマネジメントの原理と方法3

仕事という人生最高の舞台で自分の強みを磨き、輝かせる

強みに関する清水祥行さんの以下の連載は必読です!

ドラッカーマネジメントの中核―自分の強み(長所)の見つけ方 シリーズ一覧

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<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。 ドラッカー学会理事。 マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。 ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。 Dサポート㈱代表取締役会長。 ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。 公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。 誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。 編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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