攻略!ドラッカー本の実践的読書のススメ―「ドラッカーの本は難しい」というあなたへ―第1回:ドラッカー教授の学習理論と実践的読書法

ドラッカー教授の学習理論?

というと怪訝な顔をされる向きもあろうかとおもいますが、これがとても奥深く、面白いのです。

ドラッカー教授の学習理論のベースにある考え方を紹介します。

成果をあげることは学ぶことはできるが教わることはできない」『経営者の条件』

教授は、学ぶことと、教わることは別物と考えています。このことはとても重要な示唆を私たちに与えてくれます。

仮に…『決定版―3時間で泳げるようになるには』というタイトルの本を読んで泳げるようになっていると確信できる人は、一人もいないはずです。つまり、水にいきなり飛び込んでみようと思わないはずです。

なぜなら本を読んでも能力は身につかないと体感的に知っているからです。

本を読んでも能力は身につかない…ではどうすればいいのか

ドラッカー教授は言います。

知識は、本の中にはない。本の中にあるものは情報である。知識とはそれらの情報を仕事や成果に結びつける能力である」『創造する経営者』

ところが、どういうわけかマネジメント能力については、本を読むことで身についてしまうと勘違いしてしまう何かがあるようです。このような勘違いは増幅され、マネジメント能力を座学で誰かに教えてもらおうというする姿勢にまで行きつきます。

繰り返します。

「成果をあげることは学ぶことはできるが教わることはできない」のです。

トレーニングなしに身につく能力は一つもないということです。水に浸かって格闘しない限り、マネジメント能力は身につきません。その意味でマネジメント能力は日々の仕事をとおして身につけるしか方法はないのです。

では何を身につけるのか。

「ドラッカー教授の言葉」

それが正解です。えっ…と思うかも知れませんが正解は他にありません。

マネジメントとは、ドラッカー教授の言葉(=情報)を、仕事をとおして知識(=能力)に変えていくことです。そのプロセスを「実践」といいます。

「ドラッカーの本は難しい」とか「理解できない」との声を聴くことがあります。これらの方はすでにトラップにかかっています。ドラッカー教授の言葉は理解の対象ではなく、実践の対象だからです。

なぜドラッカーの本は難しく感じるのか

ドラッカー教授の言葉です。少し長いのですが重要です。

学ぶことは情報の取得であって、主として機械的なプロセスだということである。(中略)われわれは情報を、頭を使わずに答えられるようになるまで反復することによって習得する。記憶する。言語を学ぶのはこの方法によってである。九九を覚えるのもこの方法によってである。(中略)反復と暗記によって覚えることによってである」『断絶の時代』

学ぶことは情報の取得です。

私たちの「実践するマネジメント読書会🄬」で時々、ファシリテーターが「これは憶えて下さい」と言うのはこのためです。理解ではなく暗記の世界です。それが学ぶというプロセスの入り口だからです。

次もドラッカー教授の言葉です。

学ばなければならない重要なことは特定の科目ではない。いかにして学ぶかである。個々のスキルではなく、普遍的な能力を身につけること、すなわちスキルを手にし、成果をあげ、何事かを達成するための基盤としての知識を体系的に習得し、それを適用することである」『断絶の時代』

いかにして学ぶか?その答えが知識の体系的な習得です。そのためには、体系的に情報を取得する必要があります。私たちの「実践するマネジメント読書会」のプログラムが本と章をバラバラにしている理由はここにあります。体系的に学べるように再編成しています。

この体系の概要は、本サイトの投稿記事「『ドラッカーの本でも読んでおけ』という言葉に応えるためのドラッカー本の読む順番」をご覧ください。

さらにドラッカー教授の言葉です。

理解するには知識がなければならない。理解するためには学ぶ習慣が身についていなければならない。逆に、理解して初めて学ぶことの意味が出てくる。子供だろうと大人だろうと、反復練習すなわち知識の体系的な反復が不可欠である。しかる後に意味を理解しなければならない」『断絶の時代』

つまり真の理解は、仕事をとおして情報を知識に転換しながら、そのプロセスの中でしか実現しないことを意味します。つまりドラッカー教授の本を読んで難しいと感じるのは泳げない人が、泳ぎ方の本を読んで難しいと思うのと同じです。

したがって「ドラッカーの本は難しい」とか「理解できない」はある意味正しい反応ですが、そこで本をおいてしまうのはもったいない!一生泳げないままで過ごす選択をしたのと同じだからです。

「理解できないのは当然…で、私は何から実践しようか」が正しい姿勢です。

その実践の対象こそが、ドラッカー教授の一言です。言葉はマネジメントのための道具だからです。読書会ではファシリテーターが、身につけるべき重要な言葉のガイド役を務めます。今、あなたに最も必要な言葉に出会ってください。

私たちが行きついた一つの結論―それが「実践するマネジメント読書会®」です。そこにはドラッカー教授の学習理論が落とし込まれ、マネジメントを真の能力にまで高める有力な方法があります。

この連載では「何を読むか」と「どのように読むか」の後者に重点をおいて書き進めていきます。※「何を読むか」については、本サイトの投稿記事「『ドラッカーの本でも読んでおけ』という言葉に応えるためのドラッカー本の読む順番」をご覧ください。

攻略!ドラッカー本の実践的読書のススメ 第0回もぜひお読みください。連載予定の掲載があります。

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<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。 ドラッカー学会理事。 マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。 ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。 Dサポート㈱代表取締役会長。 ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。 公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。 誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。 編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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