「エドワード・ジョーンズ」とは、アメリカで有名な老舗の証券会社。1922年にエドワード・D・ジョーンズがミズーリ州セント・ルイスで創業した。
投機的な資産運用ではなく、長期的に安定して資産を運用したい中間富裕層がメイン顧客である。地域密着型の「一人店舗」システムで、他の証券会社とは異なる独自路線を貫く。
アメリカで権威あるビジネス誌「フォーチュン誌」で「働きたい全米ベスト10」に毎年ランクインするほど評価されている。未曾有の金融危機リーマンショック時でも黒字経営を維持。従業員を解雇することなく新規採用を増やした。
エドワード・ジョーンズの独自性は顧客に「ノー」と言える真摯さ
エドワード・ジョーンズの強みを一言で表すなら、「真摯(Integrity)」である。投機的性質の高い金融商品は「売らない」と断言し、ハイリスクハイリターンを求める顧客には「ノー」と言う。エドワード・ジョーンズはこの態度を一貫し続けてきた。
そして、たとえ預金が500万円以下であっても「財産を守りたい」という想いがあれば、誠実に寄り添うのだった。
特筆すべきは、各地方に一人、エドワード・ジョーンズのアドバイザーを配置する「一人店舗」制である。よほどの理由がなければ、アドバイザーは最低でも10年は同じ店舗で勤務することになる。地域密着型で顧客の信頼を得、二人三脚で財産運用を実現するためだ。
アドバイスの方法も「期待する結果」を常に意識した内容となっている。
【顧客の資産状況を把握➡顧客と相談の上ゴール設定➡ゴールに到達するために必要なこと➡以降、描いたビジョンから逸脱していないか注視し、必要ならアドバイスを行う】
こうした顧客一人ひとりに寄り添う真摯さが、まさにエドワード・ジョーンズの本懐といえるだろう。リーマンショック下で黒字経営を維持できたのも、長期運用に長けた金融商品しか取り扱わないスタイルが幸いした。
いまのエドワード・ジョーンズをつくったのはドラッカーのおかげだった
エドワード・ジョーンズは、ドラッカーとも大変ゆかりがある。というのも、『マネジメント』を読んで感銘を受けた当時のCEOジョン・バックマンが、ドラッカー本人に手紙を書き、コンサルティングを熱烈にオファーしたからだ。1972年のことだった。
バックマンは何度もドラッカーに手紙を書いた。「立派な会社にしたい」「社員の強みを活かす会社にしたい」と。やがてドラッカーはラブコールに根負けし、1980年、エドワード・ジョーンズのコンサルタントに就任した。以来、ドラッカーが没する2005年まで、同社はドラッカーのアドバイスを直に受け続けることになった。
初めての面会で、ドラッカーはバックマンにこう言った。「金儲け目当ての顧客を相手にしてはならない」と。それがすべての始まりだった。
バックマンは、「顧客は誰か」「顧客にとっての価値は何か」というドラッカーの問いの中で、顧客が本当に求めているものについて深く考え直すことができた。
これまでは、顧客は証券取引で利益をあげたいと思うのが当然である――と自明視してきた。だがそれは間違いだった。エドワード・ジョーンズが多くの顧客から信頼を得てきた理由、“本当の強み”について向き合うことで、顧客にとっての価値が見えてきた。顧客は「儲け」ではなく「安心」を求めている、財産を守りたい中間層だったのだ。
こうしてバックマンは、ドラッカーから大切な気づきと発見を得、支店は300からなんと9000店舗にまで拡大。「リスクの低い金融商品のみを扱う」「顧客は投機ではなく財産を守りたい中間層」「投機的な利潤を求める顧客にはノーと言う」といった、今日のエドワード・ジョーンズに通ずるビジネス指針が確立した。
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