「部下が言われたことしかできない」「仕事に主体性がない」という悩みは、組織で働く以上、誰もが直面する課題です。
どうか、まだあきらめないでください。言われたことしかできない人は、もしかしたら、仕事の目的や意義を見失っているせいかもしれません。
この記事では、言われたことしかできないスタッフを抱えていた企業が、ちょっとした工夫や問いかけを行うだけで、劇的に変化した事例を紹介します。
特別な仕掛けやテクニックなどはありません。ここでお伝えするのは、あなたが今日、明日にでも実践できる方法です。ぜひ試してみてください。
目次
言われたことしかできない人の特徴
お金だけがモチベーション
仕事が好きじゃない人は、言われたことしない・できないタイプに当てはまりがちです。というのも、そういう人はお金だけが唯一のモチベーションであり、基本的に「仕事は苦痛」「最小限の労力でお金をもらえば得」と考えるからです。「損得勘定が強い」とも言い換えることができるでしょう。
怒られたくない
人の顔色を伺ってばかりの人は仕事における柔軟性を失います。「言われたことさえすれば怒られないはずだ」という視座の低い考えを持っているので、自分の行動が周囲にどのような影響を及ぼすかに配慮できなくなってしまいます。あなたも部下や同僚に「それは自分の仕事じゃないので」「指示されていなかったので」とバッサリ言われたことがあるのでは?
先を読んだ行動ができない
これは責任感と深くつながっています。「言われたことを言われた通りにこなす」ことが仕事の責任だと考えている人は、それ以上に範囲に想像力をめぐらせることができません。
仕事にやりがいを感じていない
「お金だけがモチベーション」のケースと同様に、そもそも仕事それ自体にやりがいや意義を見いだせていないのであれば、仕事が投げやりになり、言われたことをこなすだけの退屈な作業となってしまいます。
人付き合いが苦手
他者と関わるのが苦手な人は、できるだけコミュニケーションを抑えて仕事を終わらせようとします。つまり、「提案」や「相談」をしないで済むように職場で立ち回るわけです。提案や相談を極力避けるには、結局「言われたことだけをやる」しかありません。
言われたことしかできない部下を改善する方法
確実に改善できる方法はありませんが、改善を試みることで、スタッフの仕事に対する考え方に変化が起き、仕事の生産性があがったという例はたくさんあります。以下では、事例を交えながら、いくつか改善方法を提案します。
組織のミッションを共有する
まずは、「この仕事は何のためにあるのか」「自分たちの事業は誰を幸せにするためにやっているのか」という組織のミッション(使命)をしっかりと共有し、浸透させましょう。組織のミッションが明確になると、“お客様の顔”が自然と浮かび上がってきます。
事例:指示待ち社員が大胆な企画を提案するまでに成長
佐賀県のとある英語教室は、かつては社員の主体性のなさに悩んでいました。
社長が指示を出せば動く。電話が鳴ればとる。生徒がいれば授業をするし、雑談もする。しかし、それ以上のことはしない。集客改善の提案もなければ、アクションも起きない。
当時は「まるで作業員のような働き方だ」と悩んだといいます。
そこで社長は、「われわれのミッションは何か」とみずから問い直し、英語教室を通じて生徒をどんなふうに成長させ、親御さんを喜ばせるべきなのかを具体的にイメージしました。浮かび上がってきたのは、“明日の自分が楽しみになる”というフレーズ。生徒が自己成長を実感し、また明日塾に行きたくなる……そんな塾にしていきたいのだと、社員に想いを伝えました。
それからというもの、社員からの提案はどんどん増えていきました。海外の人を読んで地域の子どもたちと交流させようという大胆なアイデアも出てくるようになったといいます。
「正しい問いが、人と組織を成長させる」。佐賀県の英語教室の社長は、組織のミッションを問うことの重要性を確信したのでした。
自己決定の機会と有能感を与える
心理学者デシの有名な実験が示しているように、人は金銭的動機では真のモチベーション(内発的動機)を得ることはできません。報酬や評価などの外発的報酬が絡むと、内発的d動機が妨げられるといいます。
では、真のモチベーションはどのように得られるのでしょうか。その大きなヒントが、「貢献」の実感です。自分の仕事が世のため人のために役立っているのだという実感こそ、人を突き動かし、主体性を育むのです。
事例:自由研究に取り組む姿勢が仕事に生きる
埼玉県にある老舗の製菓店は、「優れた会社とは従業員全員が活躍する会社」という考えのもと、社員やパートが自由に研究テーマを決めて取り組む活動を奨励しています。
画期的な業務改善案がパートさんから提案されたり、思わぬヒット商品につながったりすることもあったそうです。みんなが集まる社員食堂には、毎年の自由研究で賞をとったスタッフの名前がたたえられています。
この自由研究を通じて、スタッフは自己決定を行い、有能感を得ることができます。
貢献に焦点を合わせる
“どんな貢献を目的にして仕事を行うのか”ーーこれは、人を方向づける大事な問いです。人を変えることは難しいかもしれませんが、達成すべきゴールや実現したい仕事のビジョンを共有すれば、みずから仕事の仕方を工夫する可能性はあります。
事例:“家族のようにお客様を迎える”がスタッフの意識を変えた
玄米と野菜のヘルシーな食事を提供する大阪のとあるカフェは、女性から大人気の繁盛店です。売上は好調ですが、スタッフの接客の質にばらつきがあり、安心して仕事をまかせられないという悩みがあったそうです。
そこで社長は、“クレド”をしっかり定め、店が果たすべき貢献を言葉に表しました。“家族を迎えるように、お客様を迎える”。この貢献をスタッフと共有してからというもの、接客の質が上がっただけでなく、業務改善のアイデアが次から次に出てきたといいます。
まとめ
人を問題や費用や脅威として見るのではなく、資源として、機会として見ることを学ばなければならない。管理ではなくリードすること、支配ではなく方向づけることを学ばなければならない。
ピーター・F・ドラッカー『マネジメント』
- お金だけがモチベーション
- 怒られたくない
- 先を読んだ行動ができない
- 仕事にやりがいを感じていない
- 人付き合いが苦手
- 組織のミッションを共有する
- 自己決定と有能感を与える
- 貢献に焦点を合わせる
言われたことしかできない人と、どう向き合うか。ヒントは「方向づけ」です。仕事の目的や意義を共有すれば、自然と行動が変わるかもしれません。
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