
プロセスイノベーションは、これまでの事業の在り方を根本から覆し、独自の市場シェアを獲得しうるイノベーションの一種だ。以下では、プロセスイノベーションの基本的な知識をわかりやすくコンパクトに解説する。
目次
プロセスイノベーションの意味や定義
プロセスイノベーションとは、文字通り、製品の生産・流通の過程(process)で起こるイノベーションのことだ。
アカデミックな文脈における「プロセスイノベーション」という語は、ジェームズ・アッターバックらによって整理された概念であるが(参考:UTTERBACK J M , ABERNATHY W J, 1976, A dynamic model of process and product innovation)、イノベーションおよびプロセスイノベーションの源流となる概念を提起していたのは経済学者のヨーゼフ・A・シュンペーターだ。
プロセスイノベーションでは、革新的な製品が生まれるというよりは、製品を生み出す過程に革新が起こり、販路や価格の面で大きな変化を及ぼす。
プロダクトイノベーションとの違い
革新的な製品(product)の開発によって、新しい市場を開拓したり、人々のライフスタイルを一変させたりすることを、プロダクトイノベーションという。こちらは製品の革新として区別するとわかりやすい。
プロセスイノベーションの効果と注意点
プロセスイノベーションは社会や経済に何をもたらすのか?5つの要点に整理した。
生産性があがる
たとえば原料の仕入れルートが合理化されて潤沢に在庫を持つことができるようになれば、1日あたりの生産性は大幅に向上する。仮に、輸入木材に大きく依存している家具メーカーが、自社の所有する山から大量に木材を手に入れることができるとすれば、家具の生産スピードが上がることは想像に難くない。
雇用が増える
生産性の上昇は供給の増大を意味し、人手不足をまねく。生産水準を維持するために、雇用が促進される。
コストが下がる
輸送ルートの合理化は、輸送コストを大幅に引き下げる。つまり、製品に転嫁するコストが少なくなるため、結果として販売価格が引き下げられる。消費者の経済厚生が改善されることは、社会全体でみると正しい。
販路が拡大する
プロセスイノベーションが起こると、これまで進出できなかったエリアに販路を拡大することができる。市場が拡大し、マーケットイノベーションを起こす可能性もあるだろう。
競争が激化するリスクがある
プロセスイノベーションは模倣されうるし、参入障壁が低くなることで新規参入者が増える。一気にレッドオーシャン化する可能性もあるだろう。
プロセスイノベーションを起こすための思考法
プロセスイノベーションは独創的なアイデアや画期的な技術によってのみ起こるものではない。イノベーションの可能性は誰にでも開かれている。以下ではイノベーションを起こすためのポイントを3つ紹介しよう。
古くなったやり方を見直す
これまで通用してきたやり方を根底から見直すこと、すなわちプロセスの改善こそイノベーションの第一歩だ。人は変化を避けたがる性質がある。慣例化した方法に従ったほうが楽な道だからだ。しかしそれでは、顧客よりも組織の都合を優先させてしまうことになる。それではイノベーションは起こせない。
過去の成功に固執しない
多くの人が、これまで通用したやり方に固執する。だが世の中は日々刻々と変化する。社会の変化が、プロセスの改革の必要性を高める。その変化に気づき、自己革新を図る勇気が必要である。
IoTの可能性を検討する
「IoT」(Internet of Things)は、モノとネットが接続され、データ収集・処理・高速化・品質管理・流通の安全性などを一括コントロールできる新時代のテクノロジーだ。生産ラインや流通経路に携わるなら、IoTはプロセスイノベーションの重要な契機となるかもしれない。
プロセスイノベーションの事例
プロセスイノベーションで有名な例として、トヨタの「カンバン方式」(トヨタ生産方式)だろう。車の生産を
- 部品をつくる「前工程」
- 部品で車をつくる「後工程」
に分け、「後工程」が必要な部品を必要な分だけ取りに行くシステムにすることで、「前工程」がムダな部品をつくらなくて済むようになり、非効率な生産体制を大幅に改善することができた。のちに世界中の企業が模倣したこのカンバン方式は、まさにプロセスイノベーションの典型例である。
まとめ
- プロセスイノベーションとは?基本的な意味と定義
プロセスイノベーションとは、文字通り、製品の生産・流通の過程(process)で起こるイノベーションのこと
- プロセスイノベーションの効果と注意点
生産性があがる、雇用が増える、コストが下がる、販路が拡大する、競争が激化するリスクがある
- プロセスイノベーションを起こすための思考法
古くなったやり方を見直す、過去の成功に固執しない、IoTの可能性を検討する
- プロセスイノベーションの事例
世界中の企業にも影響を与えたトヨタのカンバン方式



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