公認会計士を続けながら6冊の本を出版できたドラッカーの時間管理の極意―その3 タイム・マネジメントの目的を考える

タイム・マネジメントの目的は大きく分けて2つあることを知る人はあまり多くありません。

前回、タイム・マネジメントに成功するための決定的な条件として、「何のためにタイム・マネジメントを行うのか」を明確にすることだと述べました。この際に考えておかなければならない観点なので少し説明しておきたいと思います。

1910年頃、How to Live on 24Houres a Dayという本が出ました。

作者は作家のアーノルド・ベネットです。タイム・マネジメントの源流といわれている本です。この本の目的は、心を耕すために時間を生み出すことでした。つまり仕事以外で自分の時間を生み出すことを目的する点は、今でも時間管理の目的の一つといえます。

これに対してドラッカー教授の時間管理は、仕事で成果をあげることを目的としています。これらに関する著作も多数あります。つまり「何のためにタイム・マネジメントを行うのか」という問いに対する答えは、どちらか1つあるいは仕事とそれ以外の2つ用意しておかなければならないということです。

本屋さんの棚にはタイム・マネジメントの本が何冊も並んでいます。ほとんどの本がどちらかの目的で書かれています。これらを手にするときには、自分が「何のためにタイム・マネジメントを行うのか」を明確にしておくことが大切です。

曰く

仕事オンリーの人間は視野が狭くなる。仕事オンリーでは、組織だけが人生であるために組織にしがみつく

『現代の経営(下)』より

さてこの連載に「公認会計士を続けながら6冊の本を出版できたドラッカーの時間管理の極意」と名づけている理由は、これらの目的が両方入っているからです。

つまり公認会計、税理士という資格の下で本業である職業会計人の仕事を行うには、効率的および効果的に仕事を行うことが求められます。ドラッカー型の仕事で成果をあげるためのタイム・マネジメントが求められます。

これに対して「心を耕すために時間を生み出す」目的で行うタイム・マネジメントは、また観点が別です。本業以外で時間をつくることが求められるからです。余暇、つまり余った時間の使い方とでもいうべきものです。私が本を6冊書いた領域は、ドラッカーのマネジメントについてでした。この領域は、心を耕すため...とまではいえませんが、本業の領域そのものでないことは明らかです。

両者の目的は相互依存的です。たとえば、仕事で成果をあげるためのタイム・マネジメントによって残業が減れば、仕事以外でつかえる時間量が増えるという関係にあります。

また仕事以外の目的で始めたものが、本業に役立つことがあるからです。私の『実践するドラッカー[利益とは何か]』がこれに当ります。また、『ドラッカーを読んだら会社が変わった』には、会計事務所の顧問先の事例が掲載されています。

これら2つの目的は、実は1つの上位の目的で結びついています。それは仕事をとおして自己成長することです。時間管理/タイム・マネジメントの目的をよく考えることは、人生を豊かに過ごすためには欠かせないポイントなのです。

 

<問い>
あなたはが心を耕すために行っていることは何ですか(より具体的に)。

 

ここまでの記事

第1回 体系的廃棄というタイム・マネジメント
第2回 タイム・マネジメントに成功するための決定的な条件

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<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。 ドラッカー学会理事。 マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。 ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。 Dサポート㈱代表取締役会長。 ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。 公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。 誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。 編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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