【知識労働】とは成果を出すために知識を応用することである【経営者もアルバイトも知識労働者】


知識労働

知識労働とは、文字通り「知識」(knowledge)を使って働くことをいう。では「知識労働者」はどんな人に当てはまるのか。それは現代人である。学校教育を通じて知識を得られるようになった20世紀以降すべての現代人が、等しく知識労働者なのである。

ドラッカーに言わせれば、ブルーカラーであろうとホワイトカラーであろうと、仕事の成果を出すために知識を使う者はみな、立派な知識労働者なのである。頭の良さは関係ない。成果を上げるために必要な意思決定を下す能力をそなえなければならない。

「頭のよい者が、しばしば、あきれるほど成果をあげられない。彼らは、知的な能力がそのまま成果に結びつくわけではないことを知らない。逆にあらゆる組織に、成果をあげる地道な人たちがいる。しばしば創造性と混同される熱気と繁忙の中で、ほかの者が駆け回っている間に、亀のように一歩一歩進み、先に目標に達する」

(『プロフェッショナルの条件』)

みんなが知識労働者だから、みんなマネジメントが必要

どうすれば成果が出るのか?――それに思いをめぐらすとき、私たちはみな、成果に対して責任を持つ存在となる。

成果に対して責任を持つ以上、誰もがみな等しく「マネジャー」である。経営者・上司・部下・アルバイトといった立場はまったく関係ない。「マネジメント」とは、「どんな知識を適用すれば成果に貢献できるのか」というものの見方・考え方だからである。

ドラッカーが何度も繰り返して「経営者から従業員までマネジメントが必要」と主張したのは、実はそうした理由があったからなのだ。

「命令に従って行動すればよいというわけにはいかない。自らの貢献について責任を負わなければならない。自らが責任を負うものについては、他の誰よりも適切に意思決定しなければならない。せっかくの意思決定が無視されるかもしれない。やがて左遷されたり、解雇されたりするかもしれない。だがその仕事をしているかぎり、仕事の目標や基準や貢献は自らの中にある。したがって、ものごとをなすべき者はみなエグゼクティブである。現代社会では、すべての者がエグゼクティブである。」

(『プロフェッショナルの条件』より)

「すべての者がエグゼクティブ」――エグゼクティブとは、「上級管理者」「実行者」という意味である。つまり、“すべての者がマネジャー”という意味なのだ。

参考となる興味深いエピソードとして、ベトナム戦争を指揮する米軍将校の言葉がある。とあるインタビューを受けた米軍将校は、「この混乱した状況でどう指揮しているか」の質問に対してこう答えたという。

「ここでは、責任者は私である。しかし部下がジャングルで敵と遭遇し、どうしてよいかわからなくとも、何もしてやれない。私の仕事は、そうした場合どうしたらよいかをあらかじめ教えておくことだ。実際にどうするかは状況次第だ。その状況は彼らにしか判断できない。責任は私にある。だが、どうするかを決めるのは、その場にいる者だけだ」

ドラッカーはこの将校の言葉に、「すべての者がエグゼクティブ」の本質があると考えた。

▶マネジメントと渋沢栄一の関係について興味のある方はこちらもどうぞ

マネジメント

余計な仕事が知識労働の生産性を下げている

マネジメント革命(※詳しくは後述)以降、世の中は、知識労働者が活躍する世界となった。だが、組織が巨大化・複雑化の道を辿るにつれて、“仕事の分散化”が顕著になっていった。仕事の分散化とは、簡単にいえば雑務が増えたことを意味する。ドラッカーは、経営者・役員・従業員に至るまで、本当にしなければならないこととは無関係の仕事に時間を費やしてしまっているといった。

「ところが今日、知識労働者の仕事はますます分散しつつある。…(中略)…今日、技術者、教師、販売員、看護師、現場の経営管理者など、知識労働を実際に組織で行っている人たちは、仕事や給与にはほとんど関係がなく、かつ、ほとんど意味のない余分の仕事を課されて、忙しさを着実に増大させている。

…(中略)…

知識労働者の仕事は、充実するどころか不毛化している。当然、生産性は破壊される。動機づけも士気も損なわれる。」

「……組織は成長するほど、特に成功するほど、組織に働く者の関心、努力、能力は、組織の中のことで占領され、外の世界における本来の任務と成果が忘れられていく。」

(『プロフェッショナルの条件』より)

知識労働を妨げ、生産性を低下させる無駄を回避すること。それが現代人の必須課題である。

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社会の中心が「知識」になっていく歴史過程

ところでドラッカーは、産業革命の夜明けの頃から、徐々に「知識の意味」が変化していったことに着目した。段階は大きく分けて【産業革命期➡生産性革命期➡マネジメント革命期】の3つある。

①産業革命の直前(知識の開放)

18世紀後半、フランス人のディドロとダランベールが編纂した『百科全書』が登場した。『百科全書』とは、当時最先端の科学知識や生産技術を結集した大全集のことで、“フランス社会を一変させた”と評された書物である。

これまで知識とは、聖職者・学者・ギルドの親方など、少数の者たちによって独占された“秘伝”だった。そんな知識を開かれたものに変えたのが、『百科全書』だったのである。

「数千年にわたって発展してきたテクネ、すなわち秘伝としての技能が、初めて収集され、体系化され、公開された。技術学校や『百科全書』は、経験を知識に、徒弟制を教科書に、秘伝を方法論に、作業を知識に置き換えた。これこそ、やがてわれわれが産業革命と呼ぶことになったもの、すなわち、技術によって世界的規模で引き起こされた社会と文明の転換の本質だった。」

(『プロフェッショナルの条件』より)

②生産性革命(知識を仕事に応用)

19世紀後半、「科学的管理法」(サイエンティフィック・マネジメント)で知られるフレデリック・W・テイラー(アメリカ)は、労働者がよりたくさんの収入を得られるようにするため、生産性の向上に取り組んだ。

どうすればより多くの成果が出るのか、という問題意識の中で、テイラーは仕事そのものの研究を進めていった。彼は仕事の研究を応用し、労働者の教育訓練という形で体系化を行った。ドラッカーいわく、このテイラーの研究こそが、生産性革命のはじまりだったという。

「テイラーが知識を仕事に適用した数年後、肉体労働の生産性が年率三.五%ないし四%で伸び始めた。この数字は、十八年で倍増することを意味した。その結果、あらゆる先進国において、テイラー以降から今日までに、生産性は約五〇倍に増加した。この前例のない生産性の伸びが、先進国における生活水準と生活の向上をもたらした。それら先進国における生産性の伸びの成果の半分は、購買力の増大、すなわち生活水準の向上をもたらした。三分の一は、自由時間の増大をもたらした。」

(『プロフェッショナルの条件』より)

ちなみにテイラーの教育訓練方法を積極的に採用したのは、彼の母国であるアメリカだった。わずか数ヶ月という短い期間で高技能を持った従業員を育成するために、第一次・第二次世界大戦の頃に導入していった。

③マネジメント革命(知識社会の誕生)

第二次世界大戦後、アメリカを中心に世界中でマネジメントブームが起こった。というのも大戦中、アメリカの製造業の生産性が劇的に向上したからである。先述したように、アメリカはテイラーの教育訓練法を導入し、短期間で仕事能率の高い工員を育成していたのだ。

これを受けて、戦後経営者たちは「マネジメント」に興味を持ち始めた。知識こそが生産性のカギなのだ、と。その後、マネジメントは普及し、受け入れられ、今日では企業から非営利組織まで、あらゆる組織に属する人々に必須の知識体系となっている。これはドラッカーに言わせれば、「知識が単なるいくつかの資源のうちの一つではなく、資源の中核になったという事実」(『プロフェッショナルの条件』より)を意味した。

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