「利益」とは何か?組織が社会貢献するために必要な存続資金である

利益

利益とは、企業が存続するために必要な“燃料”であり、リスクに対応する“保険”である。では、なぜ企業は存続しなければならないのか? それは企業がビジネスを通じて社会貢献しているからである。人々のニーズを満たし、価値を創出する限り、企業は社会の“富”を創出する組織なのだ。

利益は雇用と価値を生む。それゆえ企業の倒産社会の損失を意味する。そのために企業は、まずは利益をあげなければならない。

ただし、利益は目的であってはならない。あくまでも手段である。この視点こそ、従来の経済学とドラッカーの異なる大きな点である。「企業は利益を追求する存在」という定義に対して、ドラッカーは厳しく批判する。

「利潤動機」という神話

「利潤動機」という神話
(引用画像:wikipedia)

しばしば、利益を得ることを「いやしいこと」のように考える風潮がある。それは「企業が商売をするのは儲けるため」「いろいろ綺麗ごとをいうが、しょせん金儲け目当て」という不純なイメージがつきまとっているせいである。いわゆる「利潤動機」である。企業は利潤を求めて日々活動していて、それ以上でも以下でもない――というわけである。

ドラッカーは、企業が利益を得ることは何ら恥ずべきことではないといった。ではドラッカーは「利潤動機」を肯定したのだろうか。答えはNOである。

「利潤動機なるものは、的はずれであるだけでなく害を与える。このコンセプトゆえに、利益の本質に対する誤解と、利益に対する根深い敵意が生じている。この誤解と敵意こそ、現代社会における危険な病原菌である。」

(『マネジメント』より)

「利潤動機」は利益蔑視の風潮を生み出してしまう。だが、「利潤動機」を当然のように推し進めているのは、他でもない経済学だった。経済学部の一年生が最初に手にするミクロ経済学の教本には、必ず「企業の目的は利益を最大化すること」と書いてある。ドラッカーはそれを「利益そのものの意義を間違って神話化する危険がある」(『マネジメント』)と厳しく批判した。

利潤動機を是として活動する企業は、社会貢献どころか、社会に害をなす。手抜き工事・産地偽装・データ改ざん・粉飾決算などの不正は、まさに「利益こそすべて」という神話の副産物に他ならない。ギリシャの哲人ヒポクラテスは「知りながら害をなすな」といった。しかし利潤動機を隠れ蓑にした企業は、たとえそれが道徳的に逸脱した行いであっても、「知りながら害をなす」。

利益はあくまでも社会貢献するための存続資金である。あくまでも事業の手段でしかない。

では、企業の目的とは何なのか。それは「顧客の創造」である。顧客が喜ぶビジネスを行うことは、すなわち社会の富を創出することと同義なのだ。

「顧客こそが企業の基盤である。顧客こそが企業を存続させる。顧客こそが雇用を生み出す。その顧客の欲求とニーズに応えさせるために、社会は富を生み出す資源を企業に負担する。」

(『マネジメント』より)

人と社会に役立つときはじめて利益が生まれる

人と社会に役立つときはじめて利益が生まれる

利益とはけっきょく、その企業が社会に認められた証である。顧客は企業のためにお金を払わない。顧客は価値を満たしてくれた商品・サービスにお礼を支払う。だから結果として企業は利益を得る。

「組織はすべて、人と社会をよりよいものにするために存在する。すなわち、組織にはミッションがある。目的があり、存在理由がある。」

(『経営者に贈る5つの質問』より)

企業は利益を目的としてはならない。企業の目的は顧客の価値充足である。「何のために事業を行うのか」というミッション(使命)を持ち、それを誠実に実行するとき、はじめて成果として利益が結実する。

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