ドラッカー教授は、1955年に『オートメーションと新しい社会』を世に出しました。
本書は絶版で、100ページ未満と小規模であることもあり入手困難となっており、筆者も唯一入手していない著書です。ドラッカー全集第5巻『経営哲学編』に収録されていますので、そこで読むことができました。
主題は、オートメーションの本質的理解を深め、加えて新しい社会の描写として11の政治問題を取り上げ、これらが社会に与える影響を考察しています。
この著作の前半をオートメーションにあてた教授は、10年前(1945年頃)、フォード自動車の副社長デル・ハーダーがオートメーションという造語を作ったことを指摘しました。
教授は、『現代の経営』(1954)にも記載のあるオートメーションの三つの原理を説明しました。
すなわち以下3つの原理です。
①経済活動全体を一つの行程とみなす原理
②経済現象の変動は一見きわめて無軌道であり、予測しがたいものではあるが、その背後には一定の基準、一定の秩序、一定の形態が存在するという原理
③自己統制(フィードバック)の原理
オートメーションとは純粋に技術的なものではなく、複数の原理を合わせた一つのコンセプトであることがわかります。ドラッカー教授は、このようにして生まれたコンセプトも道具であると位置づけました。一つのコンセプトが生まれ、道具として世の中に広がり定着していきます。
ドラッカー教授は、コンセプトに注釈をつけ、ときにコンセプトを転換し、コンセプトを生み出しました。
コンセプトに注釈をつけた例として「オートメーション」「大量生産」などがあり、コンセプトを転換した例として「マネジメント」「マーケティング」などがあります。また、自らコンセプトを生みだした例として「知識労働」「社会生態学」などがあります。
新しい現実が目の前に現れれば、それを説明し、名前をつけ、世に広める。それがドラッカー教授の生涯にわたって成した仕事の本質でした。
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