事業のマネジメントの中からイノベーションという大き目のテーマを連続して扱っています。今日の原理です。
イノベーションの機会を知覚する
<マネジメントの原理28>
以前に「変化の中にイノベーションの機会を見出す」<マネジメントの原理26>を挙げました。しかし、変化をとらえることはなかなかむずかしいものです。イノベーションに結びつく変化は、質的な変化です。徴候、兆しのようなものを知る必要があります。
最近では当たり前の光景ですが、3年程度前に時間軸をずらして、たとえば高齢者が電子マネーを使いだすなど身の回りでキャッシュレス化が進行していると感じる出来事に度々出会うなどがこれにあたります。まだまだお金が流通していますが、今後その比率が劇的に変わるかもしれません。このようなときに「おやっ…」と思うことが「知覚」です。それは何かの信号のようなものです。普段からアンテナを高めて、感度を上げておかなければなりません。
ドラッカー教授は、様々な方向から機会を知覚するための方法を7つ示しました(前回の再掲です)。
<イノベーション7つの機会>
①予期せぬことを探す
②ギャップを探す
③ニーズを見つける
④産業構造の変化を知る
⑤人口構造の変化を活用する
⑥認識の変化をとらえる
⑦新しい知識を活用する
個別の機会についての詳しい説明は、ぜひ『イノベーションと企業家精神』を読んで下さい。イノベーションのきっかけを知るために一読の価値があります。これらの道具は一つを使うというよりも、7つを使って多面的に情報を集めるのがポイントです。
知覚のあとに分析を行う
さて「知覚」ともに重要な方法に「分析」があります。しかし過去を分析しても新しい変化に関する情報は集まってきません。量で示される情報は過去の変化に関する情報です。過去と現在が断絶しているような時代においては、古い情報からイノベーションが起こることはありません。このようなときには過去情報をいくら集めても未来への道は見えてきません。
「知覚」は新しい質に関する情報を入手する方法です。知覚という方法の後に、その質に関する分析を行います。分析といっても量的な分析ではありません。価値に関する分析です。たとえば、キャッシュレスについて人々がどのように感じているかについての情報を分析します。たとえば「便利だ」という声を得たらなぜそう感じるのか。どんな場面で特にそう感じるのかなどを分析します。間違った分析の仕方は、「便利だと感じている人が全体の18%」などです。イノベーションにとってはほとんど意味のない分析です。これも原理として挙げておきます。
イノベーションのためには知覚のあとに質に関する分析を行う
<マネジメントの原理29>
原理のマネジメントが必要な理由
第1回目は、原理がマネジメントにいかに必要かについて触れています。<方法ではな<原理を手にすること>の大切さについては何度も確認して欲しいと思います。
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