コスト・パフォーマンスというよく聞き、また使う言葉。
この言葉、経済学の言葉でも経営学の言葉でもありません。しかし価値を考える場合、その実体をよく表しています。
商品価値=パフォーマンス/コスト、V=P/C
パフォーマンスは、顧客が手にする満足、効用、便益などです。これに対してコストは、その満足や効用などを入手するための支出や時間、手間を指します。このことから価格はCの重要な一要素であり、直接的なVの要素ではないことがわかります。
たとえば価値を高めようとすれば低価格化は一つの方向です。同程度の性能の車なら安い方がいいと考えられるためです。しかし価格競争には、限界があります。
付加価値を付けるということは、CではなくPに意識を向けることです。パフォーマンスを構成する要素は様々です。たとえばデザインが優れている車ならば、機能や価格が同じでも価値は高まります。
ドラッカー教授が事業の目的とした「顧客の創造」とは、顧客価値を創造するということです。V=P/Cの式が載っている珍しい著作『価値創造の思考法』が筆者の手元にあります。
著者の小阪裕司氏は「『価値創造』は、今に始まった新たな課題ではなく、長年すでに課題とされてきた」としたうえで、未だにあちこちで論じなければならない理由を「課題は明確なものの、なかなか『実現』できていないことにある」[i]としました。そして実現されていない三つの理由[ii]を挙げました。
①そもそも「新しい消費」を企業が見えていないこと
②そのことに起因するサプライチェーン全体に問題があること
③人における価値創造のメカニズムへの認識不足があること
著作は、この三つの障害を取り除くにはどうすればいいのかを事例を挙げながら解き明かしていきます。一読をお薦めします。
[i] 『価値創造の思考法』p.59
[ii] 同上p.60
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